先週末、山口県長門市へ妻(社長)と一泊旅行へ行きました。長門市という地はお隣の萩に比べて観光地としては地味な扱いですが、なかなか良い所だと改めて思いました(昔仕事で何回か来たことはありました)。山口県の北側にある町は青く綺麗な日本海に面し、なだらかな山々が清々しい、風光明媚な地で美味しい魚あり温泉あり、おススメです。妻(社長)が金子みすゞが好きなこともありその出身地である長門市を旅先に選んだのですが、ところで金子みすゞってご存知でしょうか。童謡詩人と呼ばれますが、最近ではあの東日本大震災の後、CMが姿を消したテレビでAC(公共広告機構)が繰り返し流した、「こだまでしょうか」が有名ですね。遊ぼうって言うと遊ぼうって言う。馬鹿って言うと馬鹿って言う、(中略)…こだまでしょうか、いいえ、誰でも。とか、他にも「みんな違ってみんないい」、とか。ちょっと不思議な言葉を繰り出す人です。
みんな違ってみんないい、そう、あのスマップの名曲、世界でたった一つだけの花を思い出しますね。作詞作曲を手掛けた槇原敬之氏はおそらく金子みすゞのことを知っているはずです。ナンバーワンにならなくていい、元々特別なオンリーワン…ただし、金子みすゞは元々、とは言ってないように思います。人間については努力して頑張ったならば、美しく花を咲かせたならば皆尊いものであり、素晴らしい人間に順位をつけることには意味がないと言っているのであって、ただ無為に怠惰に生きる人間までもそれで良いとは言ってない、と私は金子みすゞ記念館を訪れて思いました。頑張らなくていい、というのは頑張る人に失礼ですよね。頑張らない人にはそれなりの人生しかない、そんなもんです。
私たちが宿泊した温泉ホテルは、長門市の三隅町というところにあり、そのすぐそばに「香月(かづき)泰男美術館」がありました。全く知らない画家でしたが、その作品は1960年代頃のものとはとても思えない、洗練された素晴らしいものばかりでした。なので、作品をまとめた書籍、香月泰男の人生のマンガ、作品をあしらった一筆箋も買いました。
さて、同じ長門市が故郷の金子みすゞと香月泰男ですがその人生は対照的で、夫との生活に絶望し自ら26年で命を絶った金子みすゞ、創作のモチーフを得るために各国を旅行する際は必ず妻を伴ったという香月泰男です。生きとし生けるものに目をやり愛しく感じ、みんな違ってみんないいとは言いながら、夫だけはどうしても「いい」とは思えなかった金子みすゞと、その自由で伸びやかな作風を生み出す前には、戦争に召集され戦争が終わった後もシベリアに抑留され厳しい労役を経験した香月泰男、そんな二人の現代における評価は有名無名で言えば金子みすゞが断然ですしナンバーワン、この地を紹介するガイドブックなどでは必ず目に付きます。でもそれはいわば他人の評価であり推薦であり、私たちが自分の目で見つけた香月泰男美術館に入らなかったら、大げさですが人生の経験を一つ損していました。…人生、ナンバーワンだけを楽しんでいてはもったいない、よく知らないけれど地元の人に大切にされているような物事を見つけたら、触れてみない手はないもんだなあと感じました。来年以降もそんな風に生きていこうと思う年の瀬、それではみなさん良いお年を。