私が住み働く北九州市の小倉では先週からセミが鳴き始めました。ワシャワシャとクマゼミの声が優勢です。セミは毎年梅雨が明けるころに生まれてきますが、その命は全てが新しい命で、私たち人間はまたセミが鳴き始めたなあと感じますが、彼らセミにとっては人間を見るのは初めてですね。つまりセミたちは毎年必ず命を終えて、翌年は新しいセミが生まれる、それを繰り返しています。ただ、人間が目にする数週間で死んでしまうセミはあくまでも成虫で、幼虫という形態で数年以上生きるので、セミたちにとっての生命のメインは土中での幼虫期間かもしれません。長いセミ生の最期は盛んに鳴いて交尾、なんとも清々しい生き方です。
さて小倉の町も夏にはセミだけではなくお祭りもありまして、7月はあちこちで祇園太鼓を練習する音が聞こえました。この祇園太鼓が無形文化財に指定されているらしく、太鼓を叩く人たちはどこか誇らしげで…今年初めて夏を小倉で過ごす私ですが、その太鼓の音をあまりにもあちこちで聞かされるので、正直なところちょっと聞き飽きました。また、その太鼓のリズムがドンドン、ドンドンという単調なものなので、余計にそう感じてしまいました。今年の梅雨は雨が少なく涼しかったので、部屋でクーラーはあまり使わず窓を開けることが多かったのですが、太鼓の音がウルサ……小倉の皆さんゴメンナサイ。でも、先日19日から21日の本番のお祭りはちゃんと見てはないですが盛り上がっている雰囲気は伝わってきましたよ。
…私は事務所に歩いて通勤していますが、朝、通りの彼方に日本製鉄の工場の煙突が見えていました。いました、というのは、いま取り壊し中でして、もうすっかり短くなってしまいました。この日本製鉄という会社は北九州市の発展に大きく貢献したというか、北九州市そのものと言ってもいい企業です。それが時代の移り変わりでどんどん規模の縮小を余儀なくされ、工場の命を終えようとしています。セミとは違って、終わりが本当に終わりです。この町で鉄が造られることは終わりつつあります。
製鉄が終わるということは大げさに言えば北九州市が終わりに近づくということかもしれません。実際、日本の2019年1月1日時点の人口統計が先日発表されましたが、日本で一番人口が減っている自治体は5年連続(!)で北九州市です。小倉の皆さんが一心不乱に太鼓を叩くさま、その太鼓の音やリズムが私には小倉が変わらずこれからも町として続きたいという訴え、叫び、鳴き声のようにも聞こえます。…しかしながらその長い太鼓の練習期間は、あたかもセミの幼虫期間と同じもの、小倉の人にとっての祭りは練習を含めて祭りなのかもしれません。
弊社のようなちっぽけな会社が東京から移転してきたからといって北九州市に大した影響は与えられませんが、少しでも北九州市の人たちと一緒に働き続けることができたらと思っています。小倉祇園太鼓を見ていると何はともあれまだまだ寂れていない、人間もセミに負けてはいられないと感じましたよ。