魚の刺身がよく売れるのは夏とされますが、それは冷たい食感と暑くて料理するのが面倒だからだと思われます。美味しい刺身を食べたいと思ったら、一番良いのは新鮮な状態の良い一尾丸ごとの魚をさばいて刺身にすることです。ただ、釣り上げたばかりの魚は身がコリコリしていますが旨味には欠けるよね、というのも魚についてちょっと知ってる人の間ではよく言われる話です。まあ、そのへんは好みでしょうか。魚種によったりもします。また一尾丸ごとの魚から刺身を作ると、残ったアラ(頭やカマなど)で吸い物や煮付けも出来るのでお得だと言えます。たとえば私の住む小倉にある旦過市場で先日、丸ごとの30センチくらいのアジが刺身にされた状態のものと同額でした。魚をさばくという手間賃が価格に反映しているということですね。
新鮮な一尾丸ごとの魚の次に美味しいのは、短冊と呼ばれたりする、身が切られていない状態のもの、そして残念ながら美味しさが一番少ないのが、いわゆるパックの刺身、プラスチックトレイにキレイに盛り付けられた、作り物の菊の花が添えられたりしているものです。さらに二種類以上の魚介類が盛り合わせられている場合は天然か養殖か、そして産地の表記をしなくて良いということになっています(←なので質の落ちるものが多い)。ちなみに私はあまりそのパック刺身は買いません。もちろん美味しくないからです。そのまま食卓に並べられるという手軽さはありますが…。ついでに書けばパック刺身によくあしらわれている大根のツマや紫蘇の葉ですが、刺身から出る魚の血や汁をどうしても多少吸ってしまい、食べ物でありながら食べられないことが多く、もったいないですよね。私はレジ袋よりパック刺身の方が環境に悪い、無駄が多いと思いますよ。
このパックの刺身というもの、非常に現代的な食べ物ですよね。お金さえ出せば誰でも手に入れられるけれど、人間から魚をさばくという技術(←という程のものでもない)を失わせ、人間の食卓から多様性を無くし、見た目は良くとも実質的な味は良くない、ゴミが出る、しかし、だけれども買ってきてすぐ食べられるし皿も汚さないので現代人が大事にする時間は得られるという、ここです。でもその美味しくないものを手軽に食べて作った時間で皆何をするのでしょうか。何か満たされない、つまらない、それはもしかしたらパック刺身を食べるという生活様式、習慣のせいかもしれません。
これは刺身だけの話ではなく、私たち現代人の生活、仕事、さらには趣味などについてもそうかもなあと思います。潮干狩りの人で賑わっています、というニュースを見てアサリなんか買って食べりゃイイじゃん、とか言う人には私はなりたくないかな…。手間暇を惜しまない、結果を急がない、過程から学び、寄り道を楽しんだりというスタンスで暮らして働き遊ぶ人が充足感を得て、特に仕事においてはいっときの結果に一喜一憂したり右往左往したりするのではなく、じっくり事業に取り組み試行錯誤することが一番の好結果を生むのではないでしょうか。働き方改革で時間に余裕ができたら、刺身を食べたいときは魚の短冊を買ってきて自分で切ってお気に入りの皿に盛り付けてみないか現代人!と思います。