私が大学卒業後に入社した出版取次会社にいた頃、大阪駅近くの地下街にある某書店の営業担当をしていました。ひとことで言えば書店さんに書籍雑誌を納品(=卸す)する仕事であり、要望をあれこれ聞く立場でした。ちなみに納品に際して取次会社の倉庫から書籍雑誌実物を運ぶのは運送会社で、地下街の荷受場から台車で書店員さんと一緒に朝の通勤ラッシュのなか店まで運んでいたのが私でした。台車の車輪が一つ歪んでいて真っ直ぐ進まないので、右手だけ力を入れて運んでいたりしました。
この話は1996年頃のことなのですが、当時書店の重要な仕事の一つに、店頭にない本をお客さんのために取り寄せるという、客注と呼ばれる注文の処理がありました。今から考えればのん気な時代ですよね。しかもその客注品が入荷する日をお客さんの家の固定電話に伝えるという、場合によってはなかなかお客さんと連絡がつかなかったですし。それで、私たち取次会社の営業担当は、書店が受けた客注品の伝票を会社に持ち帰ってまず会社の倉庫に行き、そこでめでたく在庫があれば翌日の納品便に乗せ、無かったら…私が出版社に電話して注文するのです。で、書店にはいつ頃納品できるかをまた電話していたという、まあ人手と手間暇かけていました、客注に。
その客注処理の仕事は言うまでもなく現在の書店ではかなり減ったたことでしょう。パソコンやスマホを使わない高齢者などからたまに客注を受けたとしても、その処理方法はだいぶ早くなっているはずです。…客注の仕事を書店から無くしたのはご存知アマゾンですが、そのアマゾンが第二本社を新たに作る(本社は西海岸シアトルですね)との話がようやく決着したというニュースがありました。さて、どこに決まったかというと…なんと全米がズッコケた、まさかのニューヨークと首都ワシントン近郊アーリントンですよ。巨額の税収と雇用、裕福な社員の居住などの経済効果を見込んで全米各地で誘致合戦が繰り広げられ、ある州知事はアマゾン市を作ってベゾス会長を市長にします!とまで言ったのに、そりゃないよ、つまんねー!ってのが全米国民の声だそうで。アマゾン曰く、優秀な人材の確保のためには何かと魅力的な街、ニューヨークや首都が必要だとのことです。
書店から客注品だけでなく売上も吸い取ったアマゾン、良くも悪くも世界を変え続けています。多分アマゾンの社員は普段イノベーションだのクリエイティブだの心がけてるんでしょうし、ならばニューヨークに匹敵する魅力的な新しい街を作って斬新なライフスタイルをみせてほしかった、結局はブランドもので身を包み手垢の付いた遊びに耽る成金と一緒なのかとつまらなく思うのと、結局アマゾンの皆さん自身がネットショッピングつまんねー!街へ繰り出すぜ!と思っているんですね。