訃報は突然入る。

ある時は青空が気持ちいい週末、ある時は飲み会前のうるさい繁華街、緩やかに流れる日常にトポンと落ちてくる。

その都度、モノクロの景色の中、BGMかのように「今を生きることが残された私たちが出来ること」が繰り返された。でも、一年二年、さらに経てば、タダの出来事と化す。冷たくなったその顔を触った筈なのに。


夜中、ふと目覚める。横にはいつもと同じ顔。

顔を触れば滑らかで、綺麗な凹凸に嫉妬すら芽生えかけるのにも慣れてしまった。

「…」

たぶん、ずーっと未来の話だろうけど、いつかこの顔を、暖かくなくなったこの顔を触る日が来るのかもしれない。トポンと、そんな気持ちが落ちてきた。

女性の寿命のほうが長いし、私が見送る側になる可能性は高いな…なんて、理屈めいた思考を巡らせたところで何も意味がない。頬を伝う涙がそれを証明している。

死は、怖いものではない。
死は、常に隣にいる。
死は、夕方みたいなものだ。

だから、怖くない。分かってる、理解してる。
けど、この瞬間は、寂しさが怖ささえも飲み込んでしまう。

打算的な人生だったのに、今の私はそのカケラもない。

暖かさを確認するように頬や唇に触れ、また私も瞼をゆっくりと閉じた。

どうか、明日も開いた瞼から瞳が見れますように。
約束してた場所に行けますように。
晴れますように、天気予報は小雨だから。

明日の天気は誰にもわからない、から。


マドカ・ジャスミン