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先行発売会が終わり
通販スタート前ですが
ヒロちゃんからOKでたので
俺的なセルフライナーノーツを記す。

専門的過ぎてわからない…という場合でもなるべくネットで用語を調べたりしてついてきてくれるとアルバムもさらに楽しめ、歌詞の世界観も増幅されることになる…と信じる。

https://suzukibedmusic.wixsite.com/yamadahirofumi

01 自分のありか
収録曲を決める際にこの曲は弾き語りをそのままにという話になった。
ヒロちゃんが言い出したのだっけ?俺からだっけ?多分ヒロちゃん。
クラクションなどの都会の喧騒が似合うなと思ったので外録も提案した。
都会のど真ん中でヒロちゃんがストリートライブをしていて、それをこっそり録音している…というシチュエーションが全体のイメージ。
当初は自宅前で収録した(自宅のマンション前には大きな環状線が走ってるので)ものだけで完結していたつもりだったのだけど(某大物政治家がご近所のため常に警護のおまわりさんがウチの周りを「守っている」のでその目も気にしながら)
締切当日になって「足りない」と感じてしまった。
感じてしまったら即行動。
ZEPPET STORE 7/17ライブの翌日の午前中、ハンドレコーダーを持ち俺は1人渋谷のど真ん中に。
炎天下の中1人…怪しまれないように1人…ひっそりと1人…街の騒めきを収録。
繁華街なのでいろんな音が録れご満悦…なのだが、繁華街の音、ご存知か?
「ズッタン、ズッタン、ズッタン、ズッタン…」と周囲のどこかにあるスピーカーから休むことなく流れるあれらの音は、すべて権利が発生する…つもり誰かしらの「曲」「著作権物」なのである。
持ち帰った俺は注意深く、それら「権利が発生する音」が入らないように編集し直し
元から録れていた「歌」「アコギ」「自宅前の車の音」と「渋谷の音」を絶妙なさじ加減でまとめあげ『山田浩文、街頭でストリートライブ』を演出した。

02 まぼろしのうた
「アコギでのヒロちゃんの弾き語り+ピアノ」
これはヒロちゃんのリクエストに対して俺もまったくの同意だったと記憶する。
鍵盤を置かれ「はい、弾いてみな」と言われたら人前で演奏するほどの腕前はもちろんないのだが
基本的にピアノを「打ち込む」際は、人が10本の指で弾けるようにという意味もあり、弾いてはいる…そのあとちゃんと流暢に「演奏している」様にエディットはしまくるのだが。
だから、この曲を「ヒロさんの弾き語り+五味さんのピアノで生で聴きたいです!」というのは無理である。
が、ピアノの旋律を考え音を積み重ねていったり、カルテット規模のストリングスアレンジを考えたりは大好きである。
そしてやはりこの鍵盤の積み重ねで和音を構成することが自分のギターのテンション感に結びついてる。

03 仄かな光
打ち込みのリズムトラックやエレピ、ピアノ、シンセ、俺のアコギのストロークなんかをベースに
何十人ものリトル山田のコーラスが全体を包み込む。
10ccという70年代中心に活躍したバンドの『I'm Not In Love』という曲の手法。
作業行程は、まず鍵盤で例えば「ド」を弾き、ヒロちゃんが「アーーーー(ド)」を歌い
「ド♯」を弾き、ヒロちゃんが「アーーーー(ド♯)」…
ということを繰り返し2オクターブ分くらい(24音)を収録。
ヒロちゃんはされるがままに素材としての「アーーーー」をひたすら歌わさせる。
それを三和音+オクターブ上、の合計六声に小節ごとに編集して
鍵盤でコードを弾いているように「アーーーー(ヒロちゃん6人でコーラス歌ってるぅーーー)」と聴こえるようにしている。
ヒロちゃんの優しさに包まれてください。
ちなみにアコギも普通にストロークしているトラックと
逆回転しているトラックとの2本が鳴っている。
逆回転しているほうは途中で編集してしまうと雰囲気がでないので
楽譜をお尻から弾きはじめ…楽譜の最初に目指す…とまったく逆にプレイし、そのあとで逆回転させている。

04 憂いの彼方
SUZUKIバンド時代のリハ音源を聴かせてもらって、それをベースに作業を進めた。
バンド感を出すために当時のドラマー(エカちゃん?)のタイム感をそのまま採用したかった。
現代の音楽では生バンドを録音する場合もドラマーがクリック(メトロノームみたいなもの)をヘッドフォンで聴きながらプレイしレコーディングするのだけど、預かったリハ音源は当然そのようなことはしていないので、一聴するとわからないがかなりテンポがバラついていて、でもそれが味になっている。
俺が最初にやったのはその箇所箇所でバラついたテンポをそのまま1小節ずつ算出し、そのバラつきをクリック(メトロノーム)に置き換え、さらにドラマーのプレイのワンショット、ワンショットを耳コピし、打ち込んだ。
ベースもベーシスト(八田くん?)のプレイを耳コピしプレイ。
バンドのリハ音源ではギター中心のアレンジだったのだが、ここはギタリストとして他人のプレイを再現したくはないので、ピアノとストリングスでリアレンジ。
で、ヒロちゃんも先行発売会で話していた問題の後半部分。
リハ音源の盛り上がりを違う解釈でできないか?ヒロちゃんらしいぶっ壊し方ができないか?
昔、よくヒロちゃんがクラブや野外パーティーで踊っていたことをリンクさせ、ゴアトランス(その名前すら俺は聞いたことなかったけど)で「踊り狂うヒロちゃん」をイメージした。
ヒロちゃんが「テクノとか普段聞かないのにできちゃうゴミマが不思議、プログレ聴いてたからだと思う」と解説してましたが、違います。シンプルに言えば、天才だからです。

05 無月
ヒロちゃんのアコギのアルペジオは上手いので(そしてフレーズも綺麗なので)そこはギタリストとして認めてもいいと思っていて、このアルペジオを活かすアレンジを考えた。
ループする打ち込みのドラムはブラシ(スティックで叩くのではなくブラシっていうのがあるのね)でちょっとジャジーに演奏するドラマーをイメージし
肝となってるベースのループフレーズを思いついた。
あとはピアノ。
ピアノのジャズトリオがジャズらしいことをするのではなくこういったミニマムなループフレーズで遊んでるイメージ。
後半を盛り上げるためのストリングスアレンジ。やはりストリングスアレンジ考えてる時が一番幸せを感じるな。
どの曲のアレンジも気に入ってるけどこれはとてもお気に入り。

06 黒い雨
候補曲を1曲没にさせてもらい「では、この曲は?」と出してくれたので、これは激しめのバンドアレンジになるな…アルバムの奥行きが出るな…と思った。
ただ、どメジャーの曲だったのでタイトルと歌詞がいう「黒い」にするために前半はマイナーな世界観にし「黒い鳥、はばたけ」が引き金となりメジャーな世界観に一転し、まさに「はばたけ」となるようにした。
バンドでイメージしたのは実は近いところだけど智子やイロンがいた時代のalcanaだったりする。
ギターはあえて俺的なアプローチにならないようにした。
理由は単純にwipeとの差別化。つまんないもんね、ベース智子をイメージしてて、ギター俺で、歌ヒロちゃんだと、ヤスヒロ不在とはいえほぼwipeじゃん。

07 今
この曲もオリジナルはどメジャーな曲調で、同じコード進行を繰り返すだけでは飽きるよな…がスタートラインでの問題点で。
マイナーな曲調からスタートしてトリガー(引き金)のワンワードで一転する…という『黒い雨』と同じような手法を選んだ。
「疑問がわく、自由になりたい」がそのトリガー。
アダルトでAOR(70年代後半から80年代に西海岸で流行った)的なアプローチのヒロちゃんて面白そうだな…と。
後半のコーラスアレンジはヒロちゃんが考えてきてくれたものを俺がさらにディレイとかを駆使して派手にしてみた。なんせ「革命を起こすのは今」でしょ。

08 奇跡の夜明け
これもヒロちゃんの見事なアルペジオをベースにした弾き語り調なんだけど
「奇跡」なのでとにかく大袈裟なストリングスアレンジにはしたかったのだけど。
ただ美しい旋律だけではなく「奇跡」がさらに「夜を明ける」二つ重なった大ごとで皆既日蝕と大地震が同時にきたくらいの、海が裂けた上に大洪水が来たけどつがいの動物たちを救った、みたいなインパクトをあの短いイントロのストリングスだけで表現できないかな…と、摩訶不思議なエフェクティブでもあり、尚且つ旋律もドラマティックにしたくて…。
で、ストリングスアレンジしてるとやはり幸せに満ちた時間でした。

09 路地裏にて
またもや見事なヒロちゃんのアルペジオから全体のアレンジをイメージしてて
路地裏の例えば、錆びついた蛇口から落ちるしずく、1ブロック先のメインストリートで誰かが歩いて石畳に響く足音、ガサガサと剥がれかけた広告ポスターが風でなびく音、あんまり想像したくない小動物がゴミ箱をあさる音…
そんな路地裏で聞ける音がリズムを奏ではじめたら…なんて想像してみたら面白いかも。
左右で鳴る細かい様々な音はすべてその1つ1つを貼り付けていて。
今これを書いてる夏の夜だってちょっと意識をそちらに持っていけば、スズムシの音だろうが、部屋の時計の音だろうが、環状線を走る車の音だろうが、何であれ音楽として捉えられる。
むしろ音楽を作っている時よりこんな時間のほうが自由にそのサウンドを楽しめて気持ちがよかったりする。

10 螺旋
これも『憂いの彼方』と基本同じで、ドラムとベースはリハ音源をテンポとノリを同じ手法で再現。
俺の中ではコード感や曲調からPink Floydを感じ取って…。
オルガンなどを入れた。
『憂いの彼方』はギターを敢えて控えめにしたが、こちらはギターを原曲より派手に。一番(というか唯一?)ギターをたくさん重ねたかな。
フェイザー(しゅわしゅわしてるエフェクターね)やディレイ、コーラス(ギターのエフェクターね)を駆使し
使ったギターも全面ストラトキャスターでPink Floydのギタリスト、デイヴ・ギルモアを意識して作った。
盛り上がり部分のスライドギターもデイヴ・ギルモア。
ヒロちゃんに聴いてもらった時にクレイジー!と評価してもらったけど
「ゆらゆらと」「大地と空」「ただ広がり、ただただそびえる」「僕らは宇宙のチリ、太陽の子、地球に抱かれ…」と
Pink Floyd以外考えられないでしょ?これ。
ヒロちゃんはプログレほとんど通ってないんだけど
ジャンルってさ、作った側が「僕らなになにです」「メタルです」「テクノです」「プログレです」って本来カテゴリーするものじゃないよね。
リスナー側が選びやすいようにジャンル分けって考え方が当たり前になって
今となっては例えばiTunesで作品をリリースする…ジャンルの登録、サウンドクラウドにアップする…ジャンルの登録…という具合にこちら側がジャンルを申請するのね。おかしいよね。
ヒロちゃんはヒロちゃんでしかないし。

ヒロちゃんの声、苦手なんで…って人たぶん世の中見ればいると思うよ。
声質の好き嫌いってはっきり白黒ついちゃうものだし、これだけ個性ある歌い方だから。
だけどこのアルバムを手にする人はヒロさんの声じゃないとダメなんです、大好きなんです、っていう人ばかりだよね?
俺もそのヒロちゃんの声に病みつきになった1人。
昔、よくね、wipeの曲のアレンジを考えながらヤスヒロと話してたんだけど
「俺らがさ、どんなにアレンジ考えてもさ、ヒロちゃんが歌っちゃうと、ぜーんぶ、一緒、ヒロちゃん色になっちゃうんだよ」ってね。
でもね、たぶん世界にそう何人もいないんだよ、そんなボーカリスト。
歌詞に寄り添ったり、あえて歌詞と相反したり…背景の彩りをあんな手、こんな手を使って、俺は執拗に、ホント執拗に「いろんな色の山田浩文」をみんなに感じてほしかったんだよね。