小説 
金星の守護神 
アフロディーテ、またの名を
ヴィーナス。〜美と愛と性の女神〜

Part4


主な登場人物

アフロディーテ またの名をヴィーナス
金星
星の神話では、恋愛や金運、女性をあらわす星
守護神   愛と美の女神アフロディーテ   
ローマ読みで、ヴィーナス
オリュンポス12神のひとり

アレス
火星
星の神話では、行動、男性をあらわす星
守護神  軍神   アレース  アレス
オリュンポス12神のひとり

ヘーパイストス
鍛冶の神
アフロディーテと結婚した神
オリュンポス12神のひとり

ゼウスまたの名をジュピター
木星
全宇宙の神 雷を持ち神の中でも絶大の力
オリュンポス12神のひとり

ヘラ
女神ヘーラー
最高位の女神   ゼウスの妻


アポロン
牧畜と芸術の神 竪琴の名手
ヘーリオスとセットで、太陽の象徴
オリュンポス12神のひとり

ヘリオス
ヘーリオス 太陽の神
ヘーパイストスにヴィーナスの浮気を密告した









おや?あれは確か…。
ヘリオスは、高層ビルの窓拭き会社『太陽グループ』のベテラン社員である。彼は晴れの日は毎日、ゴンドラに乗って、パリの超高層ビルの窓拭き清掃をしていた。 ここ3日間はあいにくの雨だったので、ヘリオスは久しぶりの仕事に上機嫌だった。今日の仕事は、パリ市街地にある超高級マンションである。このビルの所有者が社長の兄弟であり、ビルのペントハウスに住んでいるため、月に1度は窓拭きをしているのだった。部屋の中では、裸の男女が楽しそうにざれ合っていたが、こういうことに出くわすのは、職務上良くあることであったので、ヘリオスは、知らぬ存ぜぬを通して、黙々と仕事をこなしていた。しかしヘリオスは、昼から仲睦まじい男女の顔よりも、ペントハウスの所有者の奥方であろう美しい女性よりも、窓の近くに無造作に置いてある大きなスーツケースがどうも気になっていた。そのスーツケースは、いかにも高級そうながっしりした革張りの、モノグラムの物で、金細工の留め金も特注品のようであり、刻印のようなものがあった。モノグラムのマークがヴィトンのVとLではなく、見たことのない珍しい形だった。がしかしそれは、どこかで見たような…。見たことがないような…。はて…。
ヘリオスは、窓越しのスーツケースを眺めていたが、
「あ!」
ヘリオスは、突然、スーツケースのモノグラムのマークを思い出した。あれは、ヘリオスが『ホテル リッツ』の窓拭きをしていた時だった。リッツにリムジンが10台ぐらい次々と並んで停車し、中から均整のとれた体格の良いイタリアの将校風の青年が次々と降りて来た。その中で旗を掲げた青年の隣りで、出で立ち、隊長のように青年たちを従えて、快活に笑っていた青年…。スーツケースの紋章は、あの時の旗にあった紋章であったのだ。真っ赤な旗に金色の刺繍の紋章…。太陽に照らされて、金色に赤々と輝いていたのが印象的であったのだ。ヘリオスは、あの日は仕事を終えて、リッツでの出来事を社長に話すと、リッツに宿泊のイタリアの将校青年なら、なんでも、社長の遠い親戚だとかで、その旗ならきっと『火星』の紋章であると言っていた。快活に笑っていた青年は、イタリアの一流名家の将軍の後継者で、
「確か…。マルス…。そうだ!マルス様だ!」
ヘリオスは、すべてを思い出して、奥歯に挟まったものがとれたように上機嫌だった。しかし、
「待てよ。と、言うことは…。」
するとヘリオスは、太陽が落ちるまでに大急ぎで仕事を済ませ、急いで会社に戻った。そして、早速社長に、今日の仕事の出来事を話することにした。



ヘリオスが勤める、株式会社『太陽グループ』の社長は、アポロンと言った。彼は芸術を愛するタイプの男であった。彼のオフィスは、ご自慢のモネの麦わらやシャガールといった絵画で壁を彩り、その端のスペースには、ベースギターとドラムセット、そしてお得意のグランドピアノが置いてあった。アポロンは、数年前までは、ミュージシャンだった。彼は17歳でアメリカの医学部に合格。医学生の在学中に、ショパン国際ピアノコンクールのファイナリストに選ばれ、世界中の話題になったが、突然ワルシャワのコンクールの直前に、ハードロックバンド『ガンズ アンド サンライズ』を結成。彼はヴォーカリストとして活動し、彼の完全に整った美貌、そして、彼の歌声の美しい響きで、女性たちは黄色い歓声をあげ、彼のバンドに熱狂した。ちなみに、ヘリオスもこの時の『ガンズ アンド サンライズ』のドラム担当でだった。彼らは超売れっ子になったが、超過密ハードスケジュールに、連日のパーティ三昧で、体調を崩し、3年前にバンド活動を休止した。そして、アポロンは、父が所有していた太陽光発電関連会社『エコグループ』と、清掃会社『太陽グループ』の株を買い取り、父から会社を譲り受けるような形で、株式会社『エコグループ』株式会社『太陽グループ』の社長の座に落ち着いていた。
「社長。ちょっと失礼します。」
「やあ。ヘリオス。お疲れ。」
アポロンは、パソコンでロシアのオークションサイトを眺めていた。
「掘り出し物は、やっぱり現地に行かなきゃねぇ。とか思うけど。ついつい、ね。で、何?何かあったの?」
アポロンは、パソコンを眺めていたが、ヘリオスはアポロンの耳元に近づき
「今日は、社長のご兄弟のお住まいになる、パリ市街地のペントハウスで窓拭きの仕事をしておりました。」
「ああ。あれは、僕の弟のヘーパイストのペントハウスかい?」
「そうです。そのことで、ちょっと…。」
「なんだい?また、アフロディーテのことかい?あの娘なら…。」
アポロンは、ヴィーナスの浮気と、その浮気相手の名前を聞いて眉をひそめた。そして小声で
「それは、確かなのかい?」
と、ヘリオスに聞いた。
「ええ、確かにマルス様の『火星』の紋章でした。間違いありません。」
アポロンは、才能溢れる、美しい美貌の持ち主であったが、少々茶目っ気が多かった。
「これは、ちょっと、面白そうだな。あはは。」
そう言って笑うと、ヘリオスの腕に、バンド当時のハグをしてみせた。
「どうだい?今日は、一杯やるかい?」
「はい社長。喜んでお伴します。」
アポロンとヘリオスは、夜のバーに繰り出して行った。


つづく。



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