ーー変貌ーー

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あーがり目さーがり目ぐるりと回ってにゃんこの目…


優奈の瞳は茶色くって、真っ黒い瞳の私は本当に見入ってしまった。


ひとりっ子だし…自分が好きキャラなのかなぁ~なんて、なんとなく思ったりしたけど…


ふと、「どんな衣装になるのかなぁ~楽しみだね」


と優奈に話しかけてみた。


すると…


「そやなぁ~気になるなぁ~」


会話はそれだけだったけど…優しい感じがしてホッとした。


もっとガツガツしてるのかなぁ~って失礼ながら思っていたから安心した。(←優奈ごめん)


リーナも喋らない。


麗奈ちゃんはスタッフさんと喋ってる。


ひまわりと私だけが、べちゃくちゃとどうでもいい事を話しているという
この部屋の空気…

(なんとかしなきゃ…でも今日は無理かもっ)


「・・・・・。」


(本当にこの5人、大丈夫かぁ?)


この時は、ただ同じ場所にいて、時間を共有しただけだった。




しばらくして、衣装が出来上がったとの事で…

再びみんなタイガーゲートに集められた。

もう想像に想像が重なり、期待とワクワク度はマックスを超えていた。


生まれて初めて頂いた衣装、麗奈ちゃんが私の為に考えてくれた衣装は…

綺麗な模様の入った薄いピンク色のティンカーベルのような衣装だった。


(わぁ~なんてかわいいの!こんな洋服は初めて…嬉しすぎる!)


両手で持って体に当ててみる、そしてドキドキしながら着てみた。


サイズもぴったり!


鏡の中の私はガラスの靴を履いたシンデレラのように「変貌」を遂げていた。


麗奈ちゃんが衣装の細部の拘りを説明してくれた。

驚くほど、たーくさん思いが詰まっていた。


「麗奈ちゃんありがとう」と、言葉に出した後も…


私は何度も何度も心の中で


(麗奈ちゃんありがとう)を


繰り返していた。


すると海老蔵さん似のマネージャーさんから

「次の予定は衣装を着て撮影です。」

と、告げられ…


ますます気分は高揚した。




秋の月夜はなんだか澄んでいて美しい。

月の中には何が見える?

うさぎの餅つき?本を読むおばさん?蟹?

見え方は人それぞれ…その時の気分で違うとも言われている。

初めて衣装を着用した私は、
少しだけ芽生えたアイドルになるという自覚を胸に…

タイガーゲートを後にした。


(体を絞らなきゃ…マズイっ)


カラダづくりのトレーニングが始まった。

(2016.8.12)



ーー紅潮ーー


はぁ~っ…

吐く息が白くなってきた…


街はクリスマスイルミネーションで着飾り

歩いている人々の心にも躍動感を感じる。



いよいよ撮影の日がやってきた。


集合場所のスタジオを目の前にして…

私はひとつ、深い深呼吸をした。


(今まで漫画とかで、こんなシーンをよく見てたけど、まさか私がそんな漫画チックなことすると思わなかった)


アミューズメントパークのアトラクションに入るように恐る恐る中へと…


階段を降りるとニコニコとボックスのマネージャーさんたちが迎えてくださった。


(少しホッとした)


少し行くとそこには優奈がいた。

「あー お久しぶりでーす!」

その延長で初めて…

マネージャーを挟んで優奈との会話が始まった。

Kマネ:浅野は中国語はなせるんだよね?
あ:はい少しだけですが…
ゆ:凄いですね…………。


優奈は、今みたいに目を見開くビックリアクションじゃなくて、それは小さくぎこちない笑顔だった。

(あ、まだ壁があるな…)


呼ばれてメイク室に入った…


ヘアメイクさんは驚くほど美しい方だった。


優しく「ここに座ってね…」と。


目の前に広げられたおびただしい数の化粧品に、私の好奇心がくすぐられた。


そのひとつひとつを慣れた手つきで1つ1つ選び、私の顔というキャンバスに手早くかいていくゆきさん…


失礼ながら流石プロはすごいなーと思った。


今となっては何をしていたかわかるけれど…


その当時は顔面を差し出して、完全にお任せ。


されるがままに、身を任せていたのだった。

「髪の毛は~?」とゆきさん…

「あ~編み込みで~」と麗奈ちゃん。


(マジパンのアンナとしてのアー写がこれになるんだ!)


私の頬は紅潮していた。


そして感慨深く…


鏡の中の自分を見つめた。


(2016.8.17)



ーー閃光ーー


「はい、杏奈ちゃんヘアメイク出来上がり~!」


「ありがとうございました~!」


変身した私はドキドキおどおどしていた…


大好きな「トンイ」という韓国ドラマに出てくる妃に似たヘアスタイルに…

ちょっびり戸惑い、恥ずかしいような気持ちもしていた。



…初めての経験はいつもドキドキ!



(キシーコン キシーコン キシーコン…)


カメラマンさんがシャッターを切る音が聞こえている。


キョロキョロとスタジオを見回すと…


色々な装置や機械があって興味を掻き立てられる。


(あれって 何に使うのかなぁ~)


優奈と2人、目があった…そして


先にスタジオ入りしていた


麗奈ちゃんの撮影を一緒に見学することになった。


麗奈ちゃんは


白磁で出来た西洋の人形みたいに白くて可愛くて…


撮影中も踊ってるみたいに軽やかで…


生身の可愛さは承知済みだが…


なななんと、PCの画面に映し出される
麗奈ちゃんも可愛く…


1枚たりとも駄目な写真がないっ!


とにかくすべてが完璧っ!


(さ、さすがすぎて逆にびびるわー。マズイよマズイ!あーもう写真無理ー)


一瞬で嫌な汗をかいた…


ひとり必死な心の叫びをしたところで無駄な抵抗…


私の初撮影が始まった。


カメラマンさんも素敵な方で優しく話しかけてくださる…


優奈も見てくれてる…



(ホントごめんなさぃっ)


当然の事ながら、それはスムーズに進むわけはなかった…


硬ばった表情筋は、さらに加速して…


カチンコチンと凝固し続けたのだった。



フラッシュが眩しく目がかすむ…


雷鳴と同時に夜空に閃光が走ったような感じだった。


でも、何故か私は…


その光にどんどん吸い込まれて…


魔法にかかったようになったのだった。



(2016.8.23)



ーー硬直ーー



吐く息が白い季節って

部屋の中の暖かさがありがたくて

優しい気持ちになる。


14歳最後の月に…

フラッシュのシャワーを浴びているなんて …

想像だにしていなかった私。


華麗な麗奈ちゃんの撮影風景を見てかなりヤル気になったものの…

現実は厳しかった。


ポーズをとるのは簡単じゃない…

表情だけじゃなく、体の向き、顔の向き…


事前にセブンティーンとかViVi、JJとか雑誌の向こうにいる可愛いキラキラした人たちを研究?

お風呂場の鏡で真似をしてみたけど…


(あーもうわからなぁーい)


たぶん、難しいと考える時点で向いてないんだとイジケたりして…

余計にゲンナリしていた。


ある意味、無の境地になって何かになりきらないと、その世界には入れないのかなぁ~って…


でも刻一刻と時は流れて行く…


カメラのレンズを見つめることすら上手くいかない。


人生初のフリフリレースの衣装と編み込み三つ編みも手伝って…

なかなか足が地に着かない

全てがふわふわした感じだった。


呼吸をどうやってしていたのかも覚えてない…お魚ちゃんみたくエラ呼吸だったかも笑

マントに隠された体は力が入って…

カチンコチン

(気持ちを解放したらいいんじゃない?楽しい事を思い出してみようかなぁ?)


「力を抜いて~リラックスだよ~」

カメラマンさんから何度も言われた。


撮り終えてPCを覗くと

そこには私の写真がたくさん列をなしていた…


(あぁ、引きつってる~マントの下に見える手はグーパンチだぁ~)


硬直した顔は自信の無さが現れていた…


カメラマンさんも海老蔵さん似のマネージャーも大丈夫!慣れだからと、励ましてくださった。

優奈と「これからしっかり勉強しなきゃだね~!」って一緒に椅子に座って話したりして…

優奈の番になって、優奈を覗いたら

ガラリと変わって緊張した表情(笑)

笑ってしまった。

さっきまでの意気込みはどこへ?っていうくらいの顔の強張り

(優奈ちゃんって絶対面白いでしょ)

なんて思って見守った私。

鏡に映った自分の姿を見て…

今、そこに在る自分に涙が溢れていた。


(2016.8.29)

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