ーー襲来ーー
いくつもの回廊を歩いてやっと辿り着いた…ここはタイガーゲートの本堂。
ドッキン・ドッキン・ドッキン・・・
私は目を見開き前を向いて座っている。
何処か遠くで法螺貝の音が聞こえたようだった…
いよいよ…2回目の質疑応答が始まる。
憧れてる人は誰ですか?→
篠原涼子さん、仲間由紀恵さん…
それはどうしてですか?→
動物に例えたら、将来の自分、など…
質問は矢継ぎ早にかなりたくさんやって来て、全て理由も尋ねられた。
(みんな答えるのうまいな…)
私は正直すぎてバカをみちゃう、真面目なことだけが取り柄だから、話が上手くない…むしろ下手だと自覚してきた。
(ここで焦っても、誰かを羨んでも、何の得にもならないんだから…)
…受け止める覚悟が出来た気がした。
スタンディングで周りにいらした大勢の方からも質問が…
見るからにラガーマンだったであろう方から…ラグビーはいつから?
スラリと長身の方からは…習字を習っていたか?
他にも…バスケは?ピアノは?
ある方からは…気質は〇〇なんでしょ?など。
(麗奈ちゃんからも質問あったけど…これは内緒)
多種多様な質問が…
まさに「襲来」だった。
私は甲冑こそ纏ってはいないが…武士の心境。
気を抜いたら即終了。
浮かれた気持ちは微塵もなかった。
ただただ必死。
全ての質問に精一杯こたえた…ありのままの私を知って欲しかったから。
…「では最後の質問です」
(あと一つか…本当の最後だ…)
再びゴクリと飲み込んだ私…。
もう外はすっかり暗くなっているはず…
闇夜の中の一筋の光を掴むために…
ここまできたんだ。
このまま駆け抜けていけるか…それとも。
(2016.7.12)
ーー灯火ーー
いつだって何かを選択しなきゃいけなくて…ここまでやってきた。
せっかくのチャンスが目の前にあっても掴めない事だってあったし、
譲ってと言われたら譲っちゃって、
私ってなんてバカ!って思った事だって何度もあった…
まだ14歳(当時)、されど14歳。
器用じゃないし、立ち回りも上手くない。
勝ち負けで決まるのは好きじゃない…
だってみんな勝ちたいから頑張るんだもん。
"どう頑張ったか"が大事なんだと…私は思う。
両親はいつだって「一度しかない人生なのだから、いつも全力投球で、悔いのないように…」と、
私の考えを尊重してくれた。
"当たって砕けろ精神" はすっかり身についている…
でも、今回は…砕けたくないっ!
瞳の綺麗なマネージャーさんも
「いつも通りでいいよ…」って…
私が緊張しないように、かけてくれた優しい言葉…
一言だけれど思いやりが詰まってる。
(いつも通りじゃぁ、あんちゃんたぶん落ちます…泣)
…いろいろな事が走馬灯のように頭をよぎる。
(あーもー最後だ!最後の質問って何?早く聞いちゃって!お願いっ!)
祈るような思いで待つ。
「では…おひとりずつ伺います。アイドル以外にやってみたいことを教えてください。」
(うわぁ~きたか!この質問。アイドルになることしか考えないでこの場にきたのに…。)
私なりに失礼にならないよう、一生懸命に今の私と将来の私の夢をお伝えした。
皆様、笑顔で頷きながら私の話を聞いてくださった。
答えは十人十色…正解なんてない、夢を語ったって罪じゃない…本当に様々だった。
「はい、お疲れ様でした。以上で終了です!」
あっさりとした…
あっさりしすぎた終わり方だった。
最終は数人を何グループかに分けていたから、共に戦った同士と急いでエレベーターに乗り込む…
(早く~早く出たいっ!)
タイガーゲートの夜はすっかり深まっていた…
回廊を抜け出した私は妙な解放感に満ちていた。
振り返ると…高くそびえ立つ城を月が照らし白く輝いて見える。
再びここへ戻って来られるのかはわからない…
でも、私は笑顔だった!
やりきった!
頑張った…悔いは無い!
(ぎゅるるる~っ)
あぁ、お腹空いたぁ~!
(ひまわりどうしたかなぁ~すぐにレッスンで会うからいっか…先に帰っちゃお~っと)
外の空気を吸い込むと…秋風のなんとも言えない美味しい感じの匂いがした。
(てか、結果っていつわかるんだろう?)
…虎なんか怖くない。
潜んでいてもすぐにわかっちゃうんだから。
心に小さなあかりを灯した私は、いつもより颯爽と歩き…
タイガーゲートを後にした。
(2016.7.17)
ーー涕泣ーー
(あぁ~助かったぁ)
タイガーゲートの虎たちも今日ばかりは微笑んでいるように感じた。
私は心に灯った明かりが消えないようにと…
大事に抱えて家にたどり着いた。
「ただいま~」
その光を分け与えるように…
家族に今日の出来事を話した。
話せば話すほど…不安から解消された。
時折、姉がえっ?大丈夫なの?っていう顔をする…
でも私は大丈夫。
(もう悔いはないんだから…)
次の日から、また普通に学校に行って…
普通に事務所のレッスンに行って…
そんな日がしばらく続いた。
頭の中はオーディションの事ばかり。
街中を某アイドルグループの大っきなトラックが大音量で走っている。
幹線道路沿いやビルの上には別のアイドルグループの大っきな看板が目に飛び込んでくる。
大好きで癒しでもある音楽関連ショップに行けば…
たくさんのアイドルグループのCDの陳列が目につく。
(私はどうなっていくんだろう)
その時、スマートフォンが私を呼んだ。
そう、それは…
タイガーゲートへの入学の報せだった。
「よっしゃ~!」
咄嗟に私は叫んだ!
と、同時に…
涕泣した。
今まで抑えていた感情が突如、泉のよう
に溢れ出てきた。
10月は「神無月」と呼ばれている。
でも、私にとっては「神在月」となった。
私が持ち帰った心の灯りが自然界にも波動したかのように…
庭木の紅葉が薄っすらと赤く染まっていた。
(2016.7.22)
コメント一覧
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あんちゃんがアイドルになってなかったら、自分があんちゃんを知ることはなかったから、感謝しかないよ。
アイドルやってよかった、これからもそう思っていてくれるのが自分の最大の願いです。
自分も就職の面接の時の事今でも良く覚えてますが、どんなに事前に練習しても結果その通りに出来た事なんてわずかでしたw
ただ、用意してきた言葉よりその場で出てきた言葉や仕草がその人をより濃く表してくれると後になってからは思うので、あんちゃんも無我夢中の中で浮かび上がった人間性が面接した方々の心に残ったんだろうなぁって思います。
逆に今のしっかりしたあんちゃんだったら結果はまた違っていたのかも??
こういう事って本当にそのタイミングというものが大きく運命左右するから面白いものですよね(*´ω`*)
ほんと読み応えあるブログだね✋
改めて読むとやっぱりいいブログだね😆麗奈ちゃんの質問が何だったか今でも気になる(^_^;)
ピアノだね😃
俺はピアノは、10年以上やっているよ😃
また、総集編は⑤で最後にして、その後は🏫やライブなどの事を書いて欲しいぜ😄