月別アーカイブ / 2019年07月

↑の続きです。実験をもうひとつ。
②もしも1次から4次まで、全て異なる人が行い、そこに解釈の摺合せが生じなかったら?

1次から4次まで全て異なる人が行い……って、当たり前のことです。作曲家、演奏家、振付家、実演家が異なる舞踊作品は、この世の舞踊作品の大半です。今回実験したいのは、その間に、解釈の共有が一切なかったら?ということです。
解釈の共有とは?たとえば作曲家が、演奏家と連絡を取って、
「これは失恋をテーマにした。最初の10小節は優しく、途中の27小節は辛く、最後の20小節は希望を持って弾いてほしい」と、創作の意図を指示することです。演奏家が、言われたとおりに弾いたら、演奏家の解釈は、入る余地がありません。
今回の実験は、このイベントを出来るだけ排してみようという試みです。

ここで、先程名前を出したのにお休みさせてしまったエリックラドフォードさんに、少し活躍してもらいましょう。
「フィギュアスケートのプログラム」ということを告げずに、3分ほどのピアノ独奏曲を作曲し、何らかの方法で記譜してもらいます。エリックは、かの有名なJourneyのような、素敵な曲を書き上げます。楽譜には、ドレミファの他に、強弱記号や速度等のアーティキュレーションを、常識の範囲内で記してもらいます。
さて、この楽譜を……エリックとあまり深い親交のなさそうな方に弾いてもらいます。プライベートで親交があると、その人の考え方の癖や好みがわかってしまうから、今回の実験においては、完全なフラット状態でいきます。
フィギュアスケートの演奏と聞いて浮かんだ、福間洸太朗さん、お願いします。
福間さんには、楽譜「のみ」を手渡します。エリックが作った、ということも告げず、いわんや本人との連絡も禁じます。
楽譜に記された情報だけを頼りに、福間さんが「解釈」して、演奏します。これが二次創作です。
どこを優しく、どこを悲しく弾くのか……アーティキュレーション以外の手立てはないので、福間さん自身の感性で、自由に弾いてもらいます。
出来上がったらレコーディング。

続いて、このCDを、エリックとも福間さんとも共演がなさそうな……樋口美穂子先生の元へ持っていきます。
美穂子先生にも、これが誰の作曲で、誰の演奏なのか、伝えません。本人との連絡も以下略。この時点で美穂子先生には、エリックのメロディと、福間さんの演奏という、2つの資料が(重なって)あります。メロディ自体と、演奏の機微を感じ取り、美穂子先生が解釈をしていきます。3次創作です。
ここで、リンクに生徒がやってきました。アリーナザギトワ選手です。私の記憶の限りでは、美穂子先生がザギちゃんに振り付けしたことはなく、今後もなかなか関わらないかもしれません。極力フラット状態にするための人選です、ご理解を。
ここで、振り付けが始まるのですが、この時間はどうしても、解釈の摺合せが起こってしまいます。手を取り足を取り振り付けする中で、解釈を一切排することは不可能であり、どうしたって、ザギちゃんは美穂子先生の解釈を聞きながら振り付けすることになります。ただ、ここは先生に頑張ってもらって、極力機械的な表現で振り付けをしてもらうようにお願いします。
「右手を90度曲げて」「3秒後に左手をゆっくり挙げて」「右足を伸ばすと同時に左を向いて」等々……美穂子先生が曲に対してどういう解釈をしたのかが、伝わりにくいように教えてもらいます。
この時点で、ザギちゃんには、エリックのメロディ、福間さんの演奏、美穂子先生の振り付けという、3つの資料があります。振り付けを覚えた後、自分で何度も確認し、練習します。
そして、いざアイスショー本番。
ザギちゃんは、自分の感情……つまり、自分の解釈を含めた振り付けで、実演を行います。これが4次創作。(さっきペアスケーターを使わなかったのはこの点で、デュハラドならメーガンの解釈が入ってきてしまうからです)
さぁ、この演技をエリックに見てもらいましょう。ひっくり返るかもしれません。悲しい気持ちで書いたところが、笑顔キラッキラになっているかもしれない。でもそれに文句はつけられません ……芸術品において、解釈は自由ですから……まぁそんな極端ではなくとも、自分の創作意図とは異なる解釈で表現されるということを、きっと目の当たりにするはずです。仮に、完全に解釈が一致していたら、ある意味、エリックも福間さんも美穂子先生もザギちゃんも神的天才です(笑)

さて、お客さんに感想を聞いてみましょう。
「ザギトワさんの演技を見て、どんな感情を抱きましたか?」
1000人いれば、1000通りの解釈。
この中で、5次創作が生まれるかもしれませんね。

※親交がなさそう、ということで選ばれた四人ですが、「この人とこの人は親交めっちゃあるよ!」とかなってたらめちゃくちゃ謝ります、ごめんなさい(_ _;)
あくまで素人の他愛ない実験として見ていただけると幸いです。。

このように、○次創作と解釈は、切っても切れない縁がありますね。伝言ゲームよりも、もっと多様な変化が、ゴール地点で起こっているかもしれません。
それだけ言いたいがために、こんな長いダブルビルになりました(;´∀`)
お付き合いありがとうございましたm(_ _)m

久しぶりの投稿で、急にどうした??ってなりますが、この前町田さんの論文(webで読めるもの)をいくつか読んで、なんとなく思ったことを、オチもなく書きますw

曲を作る(記譜含む):1次創作
とするとき、
曲を演奏する:2次創作
とします。作曲家のテーマや解釈が楽譜という形で現れ、演奏者は、楽譜の情報からそれを読み取って解釈し、演奏します。
存命の作曲家であればコンタクトを取ってテーマや解釈を直接聞けますが、ベートーヴェンだとそういうわけにはいきません。どう弾いたらいいか……文献や今までの数ある名演をヒントにするほかありません。ところが、ある日突然部屋の中から発掘された楽譜だったら??それを初めて弾く人は、楽譜に書いてある情報から自分なりの曲の解釈をしないといけません。

ここからはフィギュアスケートを始めとした舞踊のお話。
曲を聞き、振り付けをする:3次創作
とします。町田さんの論文では振り付けが2次創作と捉えられている部分が多かった気がしますが(曖昧記憶でごめんなさい💦是非本文を……町田さんの公式ページからも行けます←宣伝)このブログでは作曲を1次創作としているので、敢えて3次創作という言葉を使わせていただきます。
曲を聞いて、振付家はイメージをふくらませる=解釈します。次に自分の舞踊技術をもって、舞踊による表現を完成させます。

振り付けを実際に演じる:4次創作
え?創作?と思う人がほとんどだと思いますが、敢えて。振付家から教えられた振り付けを、ロボットのように完璧に、そして自分の感情を排して実演できる人はそういません。人間だもの。
つまり、実演家は振り付けを「解釈」して、舞台の上にたち、実演を行うわけです。自分の解釈を許す、という点で、一種の創作ともいえるのです。

これを踏まえて、次の実験をば……

①もしも一人の人が1次から4次まで全部やってしまったら?&創作の順序がバラバラだったら?
まず、フィギュアスケーターの皆さんは、実演が出来ることが前提です。どんなスケーターでも、リンクに立って演技する以上、それは実演です。つまり、4次創作はほぼ誰でも出来ます。
次に3次創作、振付家ですが、これもできる人は多い。程度の差はあれど、自分ないし他人に振り付けしたことがあるスケーターも少なくはないですね。
続いて2次創作:音楽の演奏、ですが、ここから話が変わってくる。演奏は、フィギュアスケートのスキルにほぼ関係ないので、完全に個人的な趣味の範囲に任せるしかないからです。でも、ピアノやギターが弾けたり、歌えたりするスケーターさんは割といますよね。
最後に1次創作:作曲……これは、相当限られる。演奏は出来ても、作曲までは……出来るスケーターさんは本当に少ないと思います。ただ、いないわけではないですよ。
1次ができれば、まぁ大抵は4次まで出来ます。
今回①の例を実践するにあたって、思い浮かぶスケーターが、二人います。
エリック・ラドフォード選手と
デニス・テン選手。(あえて選手と呼びます)
二人とも、作曲でき、演奏(歌orピアノ?)が出来、振り付け(エリックはどうかな、でもやろうと思えば出来るはず)を、一人でこなすことが出来ます。
しかし、相違点として、デニスはシングルスケーターですが、エリックは基本的にメーガンとのペアスケーターです。まぁソロで滑れないこともないですが、便宜上、エリックはペアスケーターとします。
今回は、「全部ひとりで行う」というのを前提条件にしたいので、デニスを例にとります。

もちろん、あえて、です。

ここで、実験のために、創作の順序を変えてもらいます。
振り付けを1次、作曲を2次、演奏を3次、実演を4次に。
つまり。
まず、デニスがリンクないしスタジオに向かい、自分で設定したテーマやストーリーを元に、音楽のない状態で身体表現をつくります。簡単に言えば、振り付けを先に作っちゃいます。
それをメモして、今度は音楽スタジオに行きます。機材を立ち上げ、先程作った振り付けと、テーマに合わせた音楽を作曲します。歌詞もつけよう。それから、レコーディングスタジオに移り、自分で歌います。バックバンドは考慮しないことにします。
そうして出来たプログラムを、どこかのショーで披露する。
お客さんは、きっとこう思うでしょう。
「へぇ、すごい。デニスは、自分で曲を作って、それに振りを付けて、プログラムにしたんだ!」
そんな声が飛び交うSNSを見て、デニスは優しく首を振る。インスタにはこんな一文が。
「いやいや、違うよ。振り付けから音楽を作ったんだ」

単に「振り付けから曲を作る」という作業だけなら、他のスケーターやダンサーさんでも出来そうですね(既にあるかも)。実現したらぜひ町田さんに見てもらいたいです。
それを、フィギュアスケートで、しかも、一人でやったら、どれだけすごいだろう。

出来たはず。
見たかった。

あと500年すれば、見られるかな。なんて。

気を取り直して、ここでのポイントを。一人でやるということは、テーマや解釈も一貫しています(はずです)。つまり、○次創作とは、言えないかもしれません。表現技法が異なるだけで、解釈は画一だからです。この部分は悲しい、この部分は笑顔、このメロディとこの手は希望……デニスの思うがままに作れるので、他者の解釈が入る余地はありません。すでにある作品を、他者が解釈した結果、次元数が進むのなら、このデニスの創作品は、言わば1次創作ですね。

長過ぎるので、次の実験は投稿を改めます。



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