↑の続きです。実験をもうひとつ。
②もしも1次から4次まで、全て異なる人が行い、そこに解釈の摺合せが生じなかったら?

1次から4次まで全て異なる人が行い……って、当たり前のことです。作曲家、演奏家、振付家、実演家が異なる舞踊作品は、この世の舞踊作品の大半です。今回実験したいのは、その間に、解釈の共有が一切なかったら?ということです。
解釈の共有とは?たとえば作曲家が、演奏家と連絡を取って、
「これは失恋をテーマにした。最初の10小節は優しく、途中の27小節は辛く、最後の20小節は希望を持って弾いてほしい」と、創作の意図を指示することです。演奏家が、言われたとおりに弾いたら、演奏家の解釈は、入る余地がありません。
今回の実験は、このイベントを出来るだけ排してみようという試みです。

ここで、先程名前を出したのにお休みさせてしまったエリックラドフォードさんに、少し活躍してもらいましょう。
「フィギュアスケートのプログラム」ということを告げずに、3分ほどのピアノ独奏曲を作曲し、何らかの方法で記譜してもらいます。エリックは、かの有名なJourneyのような、素敵な曲を書き上げます。楽譜には、ドレミファの他に、強弱記号や速度等のアーティキュレーションを、常識の範囲内で記してもらいます。
さて、この楽譜を……エリックとあまり深い親交のなさそうな方に弾いてもらいます。プライベートで親交があると、その人の考え方の癖や好みがわかってしまうから、今回の実験においては、完全なフラット状態でいきます。
フィギュアスケートの演奏と聞いて浮かんだ、福間洸太朗さん、お願いします。
福間さんには、楽譜「のみ」を手渡します。エリックが作った、ということも告げず、いわんや本人との連絡も禁じます。
楽譜に記された情報だけを頼りに、福間さんが「解釈」して、演奏します。これが二次創作です。
どこを優しく、どこを悲しく弾くのか……アーティキュレーション以外の手立てはないので、福間さん自身の感性で、自由に弾いてもらいます。
出来上がったらレコーディング。

続いて、このCDを、エリックとも福間さんとも共演がなさそうな……樋口美穂子先生の元へ持っていきます。
美穂子先生にも、これが誰の作曲で、誰の演奏なのか、伝えません。本人との連絡も以下略。この時点で美穂子先生には、エリックのメロディと、福間さんの演奏という、2つの資料が(重なって)あります。メロディ自体と、演奏の機微を感じ取り、美穂子先生が解釈をしていきます。3次創作です。
ここで、リンクに生徒がやってきました。アリーナザギトワ選手です。私の記憶の限りでは、美穂子先生がザギちゃんに振り付けしたことはなく、今後もなかなか関わらないかもしれません。極力フラット状態にするための人選です、ご理解を。
ここで、振り付けが始まるのですが、この時間はどうしても、解釈の摺合せが起こってしまいます。手を取り足を取り振り付けする中で、解釈を一切排することは不可能であり、どうしたって、ザギちゃんは美穂子先生の解釈を聞きながら振り付けすることになります。ただ、ここは先生に頑張ってもらって、極力機械的な表現で振り付けをしてもらうようにお願いします。
「右手を90度曲げて」「3秒後に左手をゆっくり挙げて」「右足を伸ばすと同時に左を向いて」等々……美穂子先生が曲に対してどういう解釈をしたのかが、伝わりにくいように教えてもらいます。
この時点で、ザギちゃんには、エリックのメロディ、福間さんの演奏、美穂子先生の振り付けという、3つの資料があります。振り付けを覚えた後、自分で何度も確認し、練習します。
そして、いざアイスショー本番。
ザギちゃんは、自分の感情……つまり、自分の解釈を含めた振り付けで、実演を行います。これが4次創作。(さっきペアスケーターを使わなかったのはこの点で、デュハラドならメーガンの解釈が入ってきてしまうからです)
さぁ、この演技をエリックに見てもらいましょう。ひっくり返るかもしれません。悲しい気持ちで書いたところが、笑顔キラッキラになっているかもしれない。でもそれに文句はつけられません ……芸術品において、解釈は自由ですから……まぁそんな極端ではなくとも、自分の創作意図とは異なる解釈で表現されるということを、きっと目の当たりにするはずです。仮に、完全に解釈が一致していたら、ある意味、エリックも福間さんも美穂子先生もザギちゃんも神的天才です(笑)

さて、お客さんに感想を聞いてみましょう。
「ザギトワさんの演技を見て、どんな感情を抱きましたか?」
1000人いれば、1000通りの解釈。
この中で、5次創作が生まれるかもしれませんね。

※親交がなさそう、ということで選ばれた四人ですが、「この人とこの人は親交めっちゃあるよ!」とかなってたらめちゃくちゃ謝ります、ごめんなさい(_ _;)
あくまで素人の他愛ない実験として見ていただけると幸いです。。

このように、○次創作と解釈は、切っても切れない縁がありますね。伝言ゲームよりも、もっと多様な変化が、ゴール地点で起こっているかもしれません。
それだけ言いたいがために、こんな長いダブルビルになりました(;´∀`)
お付き合いありがとうございましたm(_ _)m