運動前の『ストレッチする派 VS ストレッチしない派』
これらは15年間討論され続けてきました
現在の日本のスポーツ現場では、運動前のストレッチが「常識」です。
今回は、本当にストレッチがパフォーマンスを低下させるのか?というテーマについて、6つのシステマティックレビューならびにメタアナリシス、2つのステートメントを紹介しながら、考察してみましょう。
※システマティックレビューならびにメタアナリシスは、エビデンス(科学的根拠)としてもっとも信頼性の高い研究報告とされています。
【ストレッチの科学】
まずストレッチは2種類に分けられ、静的ストレッチと動的ストレッチがあります。
静的ストレッチ(スタティックストレッチング)は、じわーっと伸ばす方法。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチング)は、体を動かしながらほぐしていく方法。
今回は、日常的に行われている「静的ストレッチ」について見ていきます。
『最初はShrierの報告』
柔軟とパフォーマンスについて最初にシステマティックレビューが発表されたのが2004年のShrierらによるものです。
従来は、運動前のストレッチングが「怪我の予防・パフォーマンス向上」に良い影響を与えると信じられていましたが、その常識に疑問をなげかけたのがShrierらです。
この報告では、ストレッチングとパフォーマンスに関する23の論文をもとに分析しました。
その結果、「筋力、ジャンプやランニングのパフォーマンスに改善しないこと、習慣的に行うストレッチングでは、運動のパフォーマンスの改善が認められる」ことを明らかにしました。
『欧州スポーツ医学会』
それらを基に欧州スポーツ医学会がストレッチングについての公式な声明を発表しました。
�運動前のストレッチングには、筋力やジャンプなどのパフォーマンスを改善するエビデンスはなく、パフォーマンスを低下させる可能性がある。
�習慣的なストレッチングは、最大筋力やジャンプなどのパフォーマンスを改善させる可能性はあるが、ランニングエコノミー(エネルギー効率)は改善しない。
なんと、パフォーマンスの改善に寄与しないどころか、パフォーマンスを低下させるということが示されたのです(Magnusson & Renstrom, 2006)。
『ブラジルEstacio大』
その翌年、ブラジルEstacio大のRubiniらもシステマティックテビューを発表しています。
彼らは「ストレッチングの影響を「運動前のストレッチングは筋力を低下させる」と結論付けています(Rubini EC, 2007)。
しかし、彼らの報告で注目すべき点は「ストレッチング研究の多くが、一般的なスポーツの場で行われるストレッチ時間よりも長い時間で検証されていることがパフォーマンスを低下させる理由ではないか」と指摘していることです。
議論が生まれてから、約10年が経過した2010年
アメリカから1つのシステマティックレビューと1つのステートメントが発表されました。
『To stretch or not to stretch』
この題目でMcHughらがパフォーマンスへの影響を分析しています。
その結果、「運動前のストレッチングは、筋力を低下させるが、パフォーマンスへの影響は少ないこと、筋の長さが長い筋はストレッチングの影響が少ないこと、運動前のウォーミングアップではストレッチングのみでなく、他のウォーミングアップメニューと組み合わせることで、ストレッチングのネガティブな効果を抑制できる」ことなどを示しています
この報告では、運動前のストレッチングが筋力、パフォーマンスを低下させることを前提として、ストレッチングのネガティブな効果を抑制できるかという視点で論じられています。
『米国スポーツ医学会』
しかし米国スポーツ医学会は、ACSM’s Resource Manual for Guidelines for Exercise Testing and Prescriptionというガイドラインにおいて「運動前のスタティックストレッチングは行うべきではない」ということを提言しました。
【まとめ】
これらによって運動前のストレッチはパフォーマンスを低下させる、というエビデンスが世界的に認知されました。
今回は「ストレッチはパフォーマンスを低下させる!」ということでまとめておきますが
「パフォーマンスが下がらないストレッチング時間」「ストレッチによるネガティブ効果の抑制」についても調べられていて
柔軟のメリットを残しつつ、パフォーマンスむしろ向上させる方法が分かっています。
そちらに関してはまた、紹介していきますのでお待ちください(笑)
今日もご覧いただきありがとうございます