「私達は女の子同士だけど、この間から付き合い始めました。」
こんなナレーションから始まる60分弱の映画作品なんて、未だかつてあっただろうか?

この記事はソじゃないアニメ Advent Calendar 2019という企画の中の1つである。他にも素晴らしい作品達を色んな方々が紹介されてるので是非見て頂きたい。

・「あさがおと加瀬さん。」とは何か。
百合アンソロジーコミック(書き下ろしのオリジナル百合漫画作品のみを集めた短編集)の「ひらり、Vol.2」(新書館)に収録された同タイトルの読み切り作品が初出。
その後、シリーズ化し現在は隔月誌「ウイングス」(同上)にて連載中。単行本6巻(2019年末現在)は全て「〇〇と加瀬さん。」というタイトルになっており、「加瀬さん。シリーズ」と呼ばれている。
「あさがおと加瀬さん。」というタイトルは3作品存在し、
①読み切り作品の第1作
②単行本第1巻
③劇場OVA
とそれぞれ異なる。今回は3つ目の劇場OVAについて紹介させていただく。

物語と加瀬さん。
この作品は、内気な女子高生の山田が学校で人気者の加瀬と出会い紆余曲折を経て恋人に…とはならない。
冒頭に書いた通り、映画が始まった時点で2人はもう恋人同士なのだ。だが両思いの筈なのに山田と加瀬の関係には溝がある。
全国レベルの陸上部エースであり、学校中の注目を集める加瀬。それに対して山田は趣味の園芸の延長線で、緑化委員としてガーデニングを陰日向に続ける帰宅部。学内は疎か、放課後すら満足に2人の時間が作れない状態が続いているのだ。
そんな状況を打破するべく、お互い手探りでの凸凹な青春物語が紡がれていく。流星の如く流れ去っていく時間。やがて2人に訪れる「卒業」と「進学」という人生の分岐点をどう迎えるのか。
単なるラブストーリーだけではなく、子供から大人へとステップアップして行く「高校生」が抱える様々なヒューマンドラマを鮮やかに描く。そんな濃密な物語が僅か60分弱の学生生活と共に進んでいくのだ。

音楽と加瀬さん。
この作品に欠かせないのがrionos手掛ける様々なBGMと主題歌「明日への扉」だ。
劇場作品ともなれば基本は外注アーティストによる書き下ろし曲が当たり前だが、
敢えて10年以上前にリリースされている既存の楽曲カバーを主題歌に据えている。
予算の問題など様々な事情が考えられるが、聴けば聴くほどこの作品と面白いくらいピッタリ合う曲なのだ。ぜひ視聴後にフルで歌詞を観ながら聴いていただきたい。
BGMもピアノ主体の滑らかな曲が多く、主張し過ぎない自然なメロディが非常に心地良いまさに音楽のマッサージ。
登場人物も少なく、派手なアクションもほぼ無いに等しい。かなり短い上映時間の限られた時間の中でその場その場を静かに、それでいてしっかりと縁の下の力持ちとして作品を盛り上げてくれる素晴らしい出来となっているのだ。

終わりと加瀬さん。
あさがおと加瀬さん。から始まる1連の物語達はまだまだ続いている。もちろん劇場OVAでは描けなかったシーンもかなり多い。だがこの作品はこの劇場版無しには語れない作品だと筆者は思う。原作の劣化版だと卑下される映像作品は数あれど、これ程まで斬新なカットとシーンの割り振りをした上でしっかり話を盛り上げて纏めた作品はそうそう無い。急ぎ足感はどうしても否めないが、1つ1つにしっかり引きこまれるポイントもある。間違いなく素晴らしい作品だと胸を張って言える。
劇場OVA「あさがおと加瀬さん。」はレンタル販売やストリーミング配信など様々な手段で視聴する事が可能だ。令和最初のクリスマスや年末年始を、ぜひこの作品と共に過ごしてみては如何だろうか?
メリークリスマス。