その日は私が夏休みを返上して勉強に明け暮れた病理学の追々試験の合格発表だった。一年前の本試験とその数ヶ月にあった追試を合格点にかすりもしなかった私は、一学年下の学生に混じってこの試験を受けたのだった。一年前の今頃は新しいギターを買った時期で、ほとんど鉛筆を握らずに過ごしたため、私にとってはこれが実質の本試験のようなものだった。しかし、そんなことは勝手なこちら側の事情である。昼休みになって食事もままならぬまま、重たい足を引きずって掲示板へと向かった。そして、そこに打ち出されていたのは「不」の一文字だった。"不"合格、"不"真面目、"不"十分。

肩を落とす私の元に寄ってきたのは、数少ない友人で同級生のタイラくんだった。タイラはとっくにこの試験をパスしている。彼は両手に持った缶コーヒーの一方を私に向けて言った。「自動販売機がもう"あったか〜い"になってるのに気づかなくてさ、間違って二本買っちゃったからあげるよ、おれ冷たいやつ飲みたいから」。私はあったか〜い方の缶コーヒーを空けて飲んだ。10月初旬の秋口には、まだホットの缶コーヒーは時期尚早ではあったが、束の間の現実逃避ができた。「ありがとう」と私が言うと、タイラは「なんくるないさ」と言って去っていった。なんくるないさ、なんとかなるさ…それは沖縄出身のタイラが時々口にする言葉だった。半袖ジーパン姿のタイラはまるで、10月はまだ夏だと自分に言い聞かせているようだった。

 

その後、私は留年に大手のかかったラストチャンスの試験をどうにかパスし、その数年後には無事に大学を卒業した。その勉強がいまの人生に役立っているかと訊かれるとつい顔を伏せてしまうが、誰かに「不」の印鑑を押されるような人生は決して送っていない自負はある。(もちろん同時に「合」の印もまだ頂けていないのだが。)あの時、タイラが本当に間違って缶コーヒーを二本買ったのか、それともただの照れ隠しのウソだったかは分からない。それでも今も自動販売の"あったか〜い"の文字を見ると思いだす。東京の冬はさらに早い。時期尚早のホットコーヒーを握って私もまた呟いた。なんくるないさ。

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12.06 高松toonice

今年四度目の高松にして、自分たちのツアー。
セットリストに若干の変更を加えての演奏。
とにかくステージ上が暑くて(温度的に)汗びっしょりかいて歌った。魂が燃えてる音がしたね。ギリギリ灰にならずに済んだ。
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高松に着いてから会場入り前にサウナ行ったけど、汗は無限にでるのね。お久しぶりのPELICAN FANCLUBと楽屋でしゃべり、出番後にしゃべり、打ち上げでしゃべり。しかし、出番前はお互いピリッとした、触るな危険という雰囲気を張って、ステージではじける。

12.07 広島cave be
会場入りして自分の機材をだすと、フットスイッチのボタンが壊れていることにきづく。
リハはエフェクターを直列に繋ぎ直しどうにか終わり、楽器屋へ。新しいフットスイッチを購入。
東京から来ていてツアー中の旨をお店の店主に言うと、頼んでもいないのに、5千円のプライスダウン。義理人情、さすが広島。人との出会いがその街を好きにさせる。自分もちゃんとしよう。
新しい機材の導入と、人の温かみに触れ、完全にととのった状態、意気揚々とオンステージ。
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ツアーは2020年へつづく。
まだ実は折り返しにもきていない。
奈良東大寺でメンバーで行ったツアー成功祈願って、年またいだらリセットされんのかな。やだな。

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