前回は「ミックスボイスは"声帯より声道形状"が重要」という記事でした。
ミックスボイスとは?②: ミックスボイスは「声帯より声道形状」が重要 : 小久保よしあき
前回は「ミックスボイスは"体感、印象"から来た名称にすぎない」という記事でした。今回は、実際にどんな現象がミックスボイスと関係あるのか?という内容です。▼ミックスボイスはTA vs CTではないまず、発声に直接関わる重要な筋肉に、甲状披裂筋(TA)、輪状甲状筋(CT)
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この記事の中で、

> 声道の状態をどう調整するかが、"ミックスボイス"の鍵となる。

> この調整の感覚は、平均台を落ちないように渡るような感じです。

と書きました。

これは裏返すと、平地も平均台も、「歩く」という運動に変わりはないということ。

空を飛んだり、泳いだり、自転車漕いだりするわけではない。

つまりミックスボイスは、特別な発声法ではなく、

平均台のような音域、つまり

「出しにくくなる音域」が正体

なのです。

というわけで、この暴論ツイート(笑)
▼声帯の振動パターンは2つだけ

実は、一般的な歌唱で使うような声帯の振動パターンは2つだけです。

モーダルレジスタ(上)とファルセットレジスタ(下)です。

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「チェストボイスで簡単に作り出せるモーダルレジスタな声帯振動パターンを、崩さずに中高音域まで発声」すると振動的に繋がった状態となります。

「崩さずに中高音域まで発声」するとは、モーダルレジスタを保ちながらファルセットレジスタの状態に近づいていくことを指します。

ファルセットレジスタに近づくけど、モーダルでなくなるわけではないのです。

尚、この声帯の振動パターンを保つために重要なのは、TAとCTよりも、声道の形状、ということになります。(前回記事を参照ください↓)

声道の形状が変わることで、声帯の振動が崩れ、いわゆるプルチェストになったり、フリップしたり、、が起こると考えられます。

▼"難しい中音域"がミックスボイスの正体

というわけで前々回からまとめます。

"声道の形状が声帯に影響を及ぼしやすい音域(=平均台)"があって、

その音域で声道をコントロールしてモーダルな声帯振動のままうまく発声できると、

低音から高音まで崩れないため、

体感的に中間の発声ができた!と感じて

ミックスボイスできた!となるわけです。



はい、、ここまでで、最後のツイートを残しすべて説明ができました。

長かった、、、けどきちんと説明できたわけじゃないんだよなあ。結局ブログも、、誤解を恐れず書いた、と言わなければならないかも汗

さて、残っている最後のツイートは、こんな内容です。


実は、まだまだ分かっていないことがたくさんあるのがミックスボイス、という内容をお伝えしたいと思います。もっとトレーナー目線も盛り込んで書きたいと思います。

関連リンクなど:

※ご注意※
当ブログの情報は、記事作成時点で得ている科学的情報とレッスン実務経験などを踏まえて作成しておりますが、真実が保障された物ではないことをご了承ください。

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Vocology in Practiceの認定インストラクター 小久保よしあきがお送りする、ボイストレーニングチャンネルです。Vocologyとは、発声を歌唱等まで広義に捉える科学的な学問です。Vocology in Practiceには、世界中から70人ほどの認定トレーナーが在籍し、このVocologyという言...
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前回は「ミックスボイスは"体感、印象"から来た名称にすぎない」という記事でした。

今回は、実際にどんな現象がミックスボイスと関係あるのか?という内容です。

▼ミックスボイスはTA vs CTではない

まず、発声に直接関わる重要な筋肉に、甲状披裂筋(TA)、輪状甲状筋(CT)という2つの筋肉があります。

一昔前までは、「TAは低音で優勢、CTは高音で優勢に働き、両者の力加減が入替って音程を作り、その中間の入替りが難しい→これが筋運動的なミックスボイスの正体」と考えられてきました。

しかし、最近の科学論文では、

TAとCTは、"ミックスボイス"への影響は小さいことが指摘されています。
TA vs CTはでたらめ? : 小久保よしあき
音声科学論文を読んでいると、被験者は数人しかおらず、「本当に十分な人数といえるの?」というものが多い。また検証に使う装置も、それを使いながらの発声が適切にできるのかどうかも怪しい。特にEMG(筋電図)とか、実際に刺すので、「刺した状態でのその人の発声」でしかな
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これらの記事を踏まえてざっくりまとめると、

ミックスボイスはTA vs CTではない

ということになります。


▼ミックスボイスの要因は声道形状にあり!

音程を実際に作るのは声帯振動なのに、声帯振動に直接関わる筋肉(TA, CT)はあまり重要ではない。

ということは、声帯振動に影響を及ぼす何かがあるということになります。

それは、、

声帯の上下にある空間です。

声門上:声道側(咽頭腔、口腔、鼻腔側)
声門下:気管支側(肺側)

近年、その中でも特に声門上、つまり「声道」が重要であることがわかってきました。


たとえば、

・(ある研究において)上手なシンガーは、"ミックスボイス"であるべき難しい音域でH1〜H4のハーモニクスのエネルギーを落とさないように発声している

・"ミックスボイス"であるべき難しい音域では、声門上をinertive reactanceにすべきである

というようなことが言われています。

これらはざっくり、声道の状態が重要!ということです。

つまり、声道の状態をどう調整するかが、"ミックスボイス"の鍵となる。

この調整の感覚は、平均台を落ちないように渡るような感じです。



今回はその内容を深く掘り下げませんので、こんなところになります。


しかし余談として、どうしても言っておきたいことが。

▼ミックスボイスの超重要情報は近年にあり

声道の影響を踏まえた研究は、2000年代に入ってから加速しているのですが、それまでは声帯と声道は切り離されて考えられてきた、ということ。

日本で売られている歌唱に関わる科学的な論文は、原本が20世紀だったりすること。

音声学という一見歌唱に詳しい学問の分野では、今も声帯と声道は切り離されているということ。

※音声学の基本↓
ソースフィルタ理論の基本 : 小久保よしあき
発声の超シンプルなモデルは、声帯原音と声道形状の組み合わせである。声帯原音のビーって音を、声道形状がグネグネ動くことで「こんにちは」という音を作ることができる。これを「ソースフィルタ理論」という。この記事は、その後の話したいことに繋げるために、ソースフィ
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ミックスボイスを知る上で重要な事実が、割と近年に集中しているにも関わらず、それに気づきづらい状況にあるのです。

もちろんあなたが科学を専攻している人なら、古い論文を遡って読まねばならないと思いますが、

科学"的"で良い僕のような立場の人や、最新の正しい情報を仕入れたいタイプの歌い手は、とりあえず現時点で間違っていない情報を知れれば良いと思います。(科学の範疇に留まることが命題ではないため)

だから、新しい情報をなるべく仕入れて発信していきたいと思います。

ちなみに、多少音声学をかじったような人は、特に注意が必要。なせなら

音声学をきちんと学ぼうと思う
→音声学の基礎、ソースフィルタ理論を学ぶ
→声帯原音と声道は関係ないと知る
→ミックスボイスに母音や子音は関係ないと連想

なんとか止めたい流れ。

まじめに歌を知ろうと思っている人ほど、陥りやすい流れかと思います。モチベーションが勿体ないよ。。

ちなみに現在、歌唱の科学で主流なのは、
非線形ソースフィルタ理論です。

次回は、ここまでを踏まえた極論でまとめていきます(笑)

関連リンクなど:

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ゴールデンウィーク中、6日に渡って
「ミックスボイスとは?」
というお題で呟いておりました!


その背景をひとつの記事に、、、
と思っていたのですが、


超長くなってしまったので(^_^;)
いくつかに分割してお届けします。


注意:今回の記事たちを全部読んでも、ミックスボイスの概要にすぎません。しかし、ほとんどの人が知らない、目から鱗の情報です。


今回はこのツイートについて。




▼ミックスボイスの語源に気をつけろ!


ミックスボイスとは、
チェストボイスとヘッドボイスが混ざった声
という意味をもつ名前です。


チェストボイスは、
胸に響きを感じる声


ヘッドボイスは、
頭に響きを感じる声


なのでミックスボイスは、
その間や両方に響きを感じる声


言われたりします。
ですよね?


実はその認識、間違っています


今回は、まず
チェストボイスとヘッドボイスの正体
を明らかにし、

チェストボイス、ヘッドボイス、ミックスボイス
という言葉たちが、一人歩きした現状を
お伝えしたいと思います。


▼チェストボイスとヘッドボイスの正体とは?


 
実は、音程や倍音特性によって、
身体の響きが変わるのは事実です。
※個人差あり


胸や頭の共振周波数と音程の関係から、
•低音では胸
•高音では頭
の共振が起こりやすく、それを体感するからです。


「あれ、じゃあそれって間違っていないじゃん!
低音はチェストボイスで
高音はヘッドボイスなんでしょ?
振動確認するのの何が悪いの?」
と思うかもしれませんが、


重要なのは身体が響いているかではなく、
•外にどう聞こえているか
•健康的な発声ができているか
なわけですよね?


そう考えると重要なのは
響きではなく声帯の振動が上手にできているか
ということになります。


しかし音程や倍音特性で
胸や頭は振動しちゃうので、
低音で声帯の運動がスカスカだったり
高音でポリープ作りそうな発声でも


低音なら胸が響きやすいし、
高音だと頭が響きやすいのです。


なので、響きを確認するような方法で、
適切な声帯振動ができているのか
確認するのは、あまり意味がない。


これは多くの人が知らないことだと思います。
まわりの歌好きのお友達に
教えてあげてください。


▼科学の未発達な昔は、明確な体感だけが頼り


しかし、ここでひとつ疑問が。


そもそもなぜ
低音ではチェストボイスを出せ!
高音ではヘッドボイスを出せ!
と言われてきたんでしょうか?


実は、


低音では、
声帯は分厚くダイナミックに動くことで、
•ゆっくりした振幅(低音)
•低音でも耳に届く豊かな倍音
を作りやすくなります。


高音では、
声帯は薄く小さい範囲で動くことで、
•速い振幅(高音)
を作りやすくなります。


何歳になっても楽に広い音域を歌える人は、
この2つを上手に発声できます。


歌うまの人の必須条件みたいなものなんですね。


これは僕の妄想ですが、
大昔、こんなやりとりがあったんじゃないでしょうか?


歌へたAさん
「ねえどうやって高い声出すの?」

歌うまBさん
「え、どうやってんだろう(歌ってみる)
(あ、頭が響く体感あるな)頭に響かせるんだよ」

歌へたAさん
「そうなんだ!!!ヘッドボイスだね!」


(笑)


声帯振動で声が出るともわかっていない
科学の未発達な時代なら、
唯一知覚できるのは身体の響き。
こうなる流れは自然と思います。


というか、
今の時代もあるよねこのやりとり(笑) 


発声は目で見えない上に超複雑なので、
時代に関係なく、
知識を持たない歌上手い人は
必ず体感に頼って説明しますね。


まとめると、胸の響きや頭の響きは、
歌うまの人が発声状態を説明するための
ただの後付けだった可能性が高いです。


しつこいですがこれだと、
歌うまBさんは、上手な声帯振幅でも、
歌へたAさんは、薄い声帯振幅のまま、
という状態になり得ます。


本当に求めているのは胸や頭の響きじゃなくて、
•低音では分厚い声帯振動
•高音では薄い声帯振動
という、いい感じの声帯運動ですよね?
※特殊発声や未知の発声を探求している人は除く


チェストボイスとヘッドボイスという言葉は、
ある声帯運動を示すための言葉
として、今後使っていきましょう。


▼ミックスボイスもおんなじ、というかそれ以下


そんなチェストボイスとヘッドボイスが
混ざった声と言われるミックスボイスも、
響きではなく声帯運動が重要です。

 
そして歌うまBさんの
「混ざってる感じ」という妄想から、
ミックスボイスという言葉は
生まれたんでしょうね(笑)


ここまで読んだ方なら、


胸と頭の中間を響かせて
ミックスボイスを探そうとするのは、
的を得ていない


ことが分かると思います。


さらにミックスボイスは、
すでに誤解のあるチェストボイスと
ヘッドボイスを考慮した、
体感に妄想を重ねて作られた言葉です。


実際に特定の響きがあるのかすら、
分かりません。


注意1: 良い感じの発声ができた時の体感を覚えておくのは、とても大事なことですよ!^_^ 複雑な発声運動の全てをひっくるめた、理想の体感だからです。こういうのが出来たとき生徒は「はじめての体感だ」と言います。

注意2: チェストボイス、ヘッドボイス、ミックスボイスを、響きではなく声帯振動パターンを指す言葉として使うなら、意味があります。

注意3: 非線形ソースフィルタ理論などふまえると、体感も応用できるかもしれません。その辺はよくわかりません。


というわけでこのツイートでした。


では、


実際にどのような現象が
"ミックスボイス"を引き起こすのでしょうか??


次回、科学的にミックスボイスが起こる要因に触れようと思います。


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