月別アーカイブ / 2014年09月

2014年6月5日、タイ・バンコクコミックコンベンションで行われた小池一夫の講演を収録いたします。

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 タイ・バンコク・コミックコンベンション公式講演
「知的財産の鍵を握る『キャラクター原論』 小池一夫
 Principle of Character are the key to understanding intellectual property rights
Kazuo Koike」

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●自己紹介

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 それでは、自己紹介をさせていただきます。私は小池一夫といいまして、日本からやってきた漫画家の一人であります。
 
 私は、サンディエゴのコミコンで漫画の世界のアカデミー賞といわれる「ウィル・アイズナー賞」をいただきまして、漫画の殿堂に入れていただきました。みなさんよくご存知のウォルト・ディズニーや、「スパイダーマン」や「ハルク」を創ったマーベル・コミックのスタン・リーの他、100人以上の人が、漫画の殿堂に入っています。

 日本からは4人、殿堂入りしていますが、そのうち二人(手塚治虫氏、小島剛夕氏)がお亡くなりになりましたので、残るは『AKIRA』の大友克洋氏と、私の二人になりました。
私は今年79歳になります。もうすぐ80歳ですが、それでも世界中を回って、みなさんにこのような情報をお届けしているわけです。
 私には、300人を越える弟子たちがいます。彼らは世界中で活躍しています。
 ここに弟子の名前を記した巻物がありますから、広げてみましょう。
 マイチルドレン!(長い巻物を広げる)。
 高橋留美子、原哲夫……巻物にはキャラクターが載っていないので、彼らの創りだしたキャラクターを画面に見せましょう。
 私は彼らの先生で、彼らにキャラクター創りを教えています。
 これが、高橋留美子。知っていますか?

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 北斗の拳の原哲夫、

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 バキの板垣恵介、

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 シグルイで有名な山口貴由も私の弟子です。


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 タイランドではさくまあきらの「桃太郎電鉄」は売られていないかもしれませんが、日本では非常に売れた作品です。

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 「ドラゴンクエスト」の堀井雄二。
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 「ぬらりひょんの孫」の椎橋寛……。

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 彼らが創ったキャラクターが、世界中で活躍しています。これからみなさんに、世界で大ヒットするキャラクターを教えてあげようと思いましたが、会場がうるさすぎるので、教えられませんね(笑)。


●キャラクターこそが、知的財産(コンテンツ)の成功のカギ!

 この図を見てください。

 

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 「漫画」、「アニメ」、「ゲーム」。これらをメディアといいます。
 この三つのメディアを真ん中でつなぎとめているものが、「キャラクター」です。

 
 《キャラクター》がいなければ、漫画は出来ません。
 《キャラクター》がいなければ、ゲームもできません。
 《キャラクター》がいなければ、アニメもできません。

 だから、一番最初に創るのは《キャラクター》なのです。
 一番初めに《キャラクター》を創らないと、漫画もアニメもゲームもできません。
漫画を描くことは、キャラクターを創ることではありません。
 
(ホワイトボードに、

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

 と数字を書く)。

 これは数字ですね。
 この数字を使ってキャラクターを創ることができれば、あなたたちは一人前のキャラクタークリエイターかもしれない。
 ただ漫画を描くだけでは、それは数字を書いているのと変わりません。
 この数字を、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10と、組み合わせることで、キャラクターが出来上がる。
 (ホワイトボードに、1~10の数字を組み合わせてキャラクターを描く)。
 

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 ジス・イズ、キャラクター!
 数字だけだとただの漫画です。ただ漫画を描けばよいのではなく、それを組み合わせてキャラクターが出来上がってくるんです。
 出来上がったキャラクターにフキダシをつけて、「ユア・ベリー・ビューティフル!」と喋らせることでキャラクターになる。
だから、一番最初にただ漫画の絵だけを描いてはダメです。キャラクターを動かさなければなりません。

 ここに「○」と「△」があります。

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 毎朝、この前を行き来する人がいても、誰も見ませんね。ただの○と△ですから。
 ですが、この○に耳がついたり、鼻がついたりして、こうなってくると、違ってきますね。

 ただの○と△だったものが、「おっ!?」と人の目を引きつけるようになる。キャラクターになってくるんです。

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 さらにフキダシをつけて「グッドモーニング」とか、「今日もお元気で」といったセリフを入れると、彼らは生命を得て、生き始めます。
 これが、キャラクターです。
 ただの○と△が、少し手を加えただけで、キャラクター化して、生きかえります。
 このように、キャラクターを創って、キャラクターに生命を与えるための方法はたくさんあります。

●キャラクターは、メディアを越え、国境を越え、時代を越える

 こうやって生まれたキャラクターは、世界に羽ばたきます。
 キャラクターが世界に飛び上がる例をご紹介しましょう。
 マスメディアの中で、一つのキャラクターがヒットすると、そのキャラクターは次から次へと、世界中に飛んでいきます。
 私のそのキャラクターは、スーパーマン、バットマンやスパイダーマンとともに、アメリカでヒットして、「ローンウルフ・アンド・カブ」いう名で、アメリカではヒーローの一人として愛されています。
 
 こういうキャラクターを創ると、これがどういう形で、発展していくかを皆様にご紹介します。

 
 「子連れ狼」は1970年に、漫画雑誌に連載されたあと、単行本として発売されました。

 

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 漫画から映画になるのですが、それより先に、まず1971年に音楽になっています。 

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 映画になって大ヒットしました。映画とほぼ同時にテレビドラマが放映されました。

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 これが、アメリカで出版された『子連れ狼』ですね。表紙を描いたのはフランク・ミラーという有名なアメリカのコミック・アーティストです。

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 この作品がアメリカで大ヒットしたのは、今から20年以上も前のことです。このヒットのおかげで、私はウィル・アイズナー賞を頂き、漫画の殿堂に入ることができました。

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  これはゲームですね。1987年に発売されました。
 次は1989年のTVドラマですね。

 

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 1993年には、再び映画化されます。

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 これは、2002年のTVドラマとして、日本でヒットしたものです。

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 30年以上前に誕生した作品が、2002年、あるいは2014年の現在でも、日本だけでなく、世界各地で活躍しているんです。

 だから、一つのキャラクターは時空を超えて、いろんなメディアに入れるんです。
  
 これが一番新しい子連れ狼です。25

 漫画を描いていた小島剛夕氏がお亡くなりになったので、森秀樹氏という方に描き継がれております。
 だから、作家が死んだあとも、創り手が代わって、そのキャラクターを描いていくということになります。
 スーパーマンも、スパイダーマンも、バットマンも、最初の作者は亡くなっても、次々と描き手が交替して、何十年も語り継がれているのです。スーパーマンは90年近くなりますが、まだ続いていますが、これは大変なことですね。
 だから、みなさんに「漫画を描くのではなく、キャラクターを創れ」言いたいと思います。
 キャラクターを創れば、そのキャラクターが国境を越え、世界中に行きます。

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 私の弟子たちも、キャラクターを創ることで、世界に飛び立ちました。漫画だけを創っていたのでは、その業界の中で、ほんのわずかな人々が目にする雑誌に載るだけです。
 キャラクター、それも世界に飛んで行くようなキャラクターを創るんです。


●魅力的なキャラクターの創り方

 では、そういうキャラクターを創るためにはどうすればよいのか。
 みなさんが日本にやって来てくだされば、私のいる学校でキャラクターの創り方を教えますが、せっかく今日来てくれたので、キャラクターの創り方をお教えしたいと思います。

 一つのキャラクターを創ると、そのキャラクターが音楽になり、アニメになり、ゲームになり、映画になり、テレビになり、色んな意味で、世界中を飛んで回ります。
 私の最近の弟子は、デビュー二年ぐらいで、キャラクターがヒットして、4億円ぐらいの売上を記録したそうです。
 そのキャラクターですが、みなさんの創るキャラクターがどんなキャラクターかは僕にはわかりませんが、一つだけ、そのキャラクターには「弱点」、ウイークポイントを付けてください。
 すばらしく強い、無敵のキャラクターがいたとしたら、出てくる敵が絶対に勝てないわけですよね。無敵のキャラクターですから。
 そういうキャラクターを創ってしまうと、面白くないから、読者が離れてしまう。世界に羽ばたくキャラクターにはならない。
 ウイークポイントというのは、どういうことかというと、ドイツのゲルマン神話の英雄に「ジークフリート」というキャラクターがいます。
 悪魔の竜を殺して、その血を頭から大量に浴びます。そうすると、鋼鉄の鎧を着たような皮膚になって、槍も刀も鉄砲の弾も通さない、無敵の男が出来上がります。
 しかし、血を浴びた時に、ひらひらと一枚の葉っぱが、ジークフリートの背中に張り付いて、竜の血がそこだけつかず、白く残ったんです。
 そこだけは人間の皮膚なので、突かれると死んでしまいます。
 これが「弱点」です。
 敵が背後に回ると、そこだけ白くなっていて、そこだけは槍を刺せば刺さるわけですから、見ている人はハラハラする。
 このハラハラするというのがいいんです。そこが読者に受ける要素なわけです。

●キャラクターはひとりでは起たない

 それから、キャラクターは一人ではダメです。
 一人だけのキャラクターは使い物にならない。ヒットしません。
 キャラクターは必ず二つ創る。
 一人が「主人公」で、一人が「ライバル」です。ライバルは「悪い奴」と考えてもいい。
 この二つのキャラクターを創ることが、キャラクター創りの原点です。
 非常に畏れ多いことですが、「神」というキャラクターがあれば、神の相手をするライバルは「悪魔」です。
 悪魔がいなければ、神様のありがたみがわからない。
 また、神様がいなければ、悪魔の怖さもわからない。
 神がいて、悪魔がいるから、人間たちは喜んだり怖がったりする。
 人は神の恵みを感謝し、崇め奉るために、祭壇をつくり、お供え物をして、拝み、祀ります。お祭りでは、人々は神様のためにダンスをしたり、歌をうたったりして、神様を敬います。だから、いろんな芸術というのは、神様というキャラクターを祭ることから始まっているんです。
 逆に悪魔を祀り、津波や山火事、地震などの恐ろしいことは悪魔の仕業だと考え、悪魔払いの儀式を行います。そこからも、いろいろな恐い芸術が生まれてきました。
 そういうことで、神と悪魔という二つのキャラクターを創り、そのキャラクターを戦わせる、向かい合わせることで、お互いでお互いのキャラクターを高めあうわけです。
 これが、男性と女性の恋愛であっても、高校生同士の争いであっても、どんな人たちの物語でも使える「原点」なのです。必ずキャラクターを二つ創れば、それらのキャラクターはひとりでに歩き出します。
 さらに、難しいことをいうようすが、キャラクターには「オーラ」をつける。
 それから、悪い奴らには、「カリスマ性」をつけます。
 皆さん方の中にも、オーラが出ている人はたくさんいます。「この人はいいオーラを出しているなあ」と、私の目から見ると感じる人もいます。
 カリスマ性を出している人もいますよ。誰かは言いませんが、「この人は怖いからケンカするのはやめよう、殴られそうだな」と、感じる人ですね(笑)。
 ですから、そういうふうにキャラクターを創って、キャラクター同士をぶつかり合わせることで、いろんなドラマというものが自然に創られて、面白いことが起こりはじめます。
 難しいかな? 大丈夫?
 最初の人類は、「神」というキャラクターを創ることで、大自然の被害に対抗したんです。そうしなければ、人類は生きていけなかったかもしれない。神様のお陰で、私たちがある。
 逆に、その力で悪魔と戦う。神と悪魔というキャラクターを創ったことによって、今日まで人間は生きてこれたんだと思います。
 だから、キャラクターに寄せる愛情というのは、信仰に近いものがありますね。神と悪魔、悪魔を畏れ、神に感謝する。この二つのキャラクターからいろんなキャラクターが生まれて、今日に至っているわけです。
 神様のキャラクターで、キリスト教の聖書から生まれたキャラクターはどれくらいあると思いますか? あるいは、仏陀を元にしたキャラクターは? ものすごい数の作品が創られ、世界中の人で、仏陀やキリストを知らない人はいない。
 そういう意味でも、一番ヒットしたキャラクターというのは、漫画のキャラクターではなく、神様なのだと思います。
 それから、悪魔の映画もたくさん創られています。怖いですね。『エクソシスト』とか。
 悪魔が神がともに登場して、お互いに戦っていく映画は世界中でヒットしていきます。神がいて、悪魔がいることで、キャラクターが非常に面白いものになっていき、世界に飛び出していくことが出来るのです。
 みなさんのお国では、キャラクターを創って、世界に飛ばすことができるチャンスは少ないと思います。創ったキャラクターを世界に飛ばすには、やはり日本に来て、日本で勉強することが、非常に役立ってくるのではないでしょうか。
 幸い、タイと日本は非常に親しい関係がありますので、本当にキャラクター創りをされるなら、日本から世界に飛ばすのがよいと思います。

●マスメディアとソーシャルメディア

 日本はマスメディアの国です。まだまだマスコミ、テレビ・新聞・雑誌・単行本・映画・音楽といったマスメディアが強い。
 ですから、キャラクターを創る時は、たとえば雑誌社に頼まれてキャラクターを創り、そして次から次へとヒットさせていって、私のように歳をとるわけですね。
 ですが、ここに来て、マスメディアの世界に異変が起こりました。
 マスメディアというのは、送り手だけなんです。みなさんがキャラクターを創れば、みなさんが送り手になってしまいます。
 ところが、今、その送り手に変化が起こったんです。ソーシャルメディアというのが誕生しました。フェイスブックやツイッター、ユーチューブ、ユーストリームなど、いろいろなソーシャルメディアが誕生しました。
 みなさんはインターネットを、スマートフォンやタブレットを使われるでしょう。
 今までのマスメディアが崩れようとしています。今、日本のマスメディアの出版社は、ソーシャルメディアと一緒になって、何かをやろうとしていますね。

 たとえば、先ほど数字で描いたキャラクターがありますね。僕が描くのは簡単です。
 これを、ソーシャルの世界で「1から10までの数字で人の顔を作りたいんだけど、どうしたらいい?」とみなさんから意見を募集してみると、「1をどう使えばいい」「2はやっぱり鼻だろう」とか、「3は口にしよう」とか、いろんな人からアイデアが集まって、顔が出来ていくわけですね。
 それで「ナンバーフェイス」という名前をつければ、それが立派なキャラクターになっていくわけです。
 初音ミクというキャラクターは、そういう形で出来上がったキャラクターですね。だって、皆さん、初音ミクという人はキャラクターだけしか知らないでしょう? 歌を歌うキャラクターだということしか。
 お父さんはどんな人? お母さんはどんな人? きょうだいはどんな人? ツインテールの髪を考えたのは誰? 美容師さん? 初音ミクの友だちは何人いるんでしょう? どこの学校を出たんですか? 
 初音ミクに関することは、なんにもわかりません。
 なぜ、ネギを回しているんですか? 
 何にも物語がない。ストーリーがないんです。生活感もないんです。
 クリプトン・フューチャー・メディアという会社が創った。初音ミクがよくネギを持っているのは、ネギを振り回す動画が大ヒットしたからです。ただそれだけにすぎない。
 だから、僕は何も初音ミクのことを知らないんですよ。皆さんも知らない。
 それが、世界中で大ヒットしているわけです。
 漫画も、アニメも、ゲームも、キャラクターというものでしっかり結ばれている。これがキャラクターの世界なんです。
 みなさん、この絵を覚えておいてください

 漫画=キャラクター、ゲーム=キャラクター、アニメ=キャラクター。
 キャラクターができれば、何でもできる。
一つのキャラクターを創れば、三つのメディアの中に入っていける。もっと別のメディア、たとえば音楽の中にも入ることができる。
時代が変わろうとも、どんなメディアが発達しようとも、キャラクターだけは死なないんです。
 まるでウイルスか何かのように、どんなメディアの中にも入っていけるんです。
ですから、みなさん、キャラクターを創りましょう。面白いですよ。
 この国から、どんなキャラクターが生まれてくるか。
 この国から生まれた、世界中に大きくヒットしたキャラクターというのをまだ知りません。
 日本のキャラクターは世界中で羽ばたいています。
ものすごく、日本は稼いだ時期があります。でも、それもだんだん下がってきました。キャラクターを創る人が、少なくなってきたんですね。
 このタイランドには、絵を描くのが上手い人が大勢いるということは聞いています。絵を描くのが上手ければ、当然漫画を描くのも上手いはずですね。
 でも、漫画だけを描いてもダメなんですよ。
 漫画を描くんじゃなくて、キャラクターを創るんです。
 キャラクターというものは、描いた漫画に生命を与える。その生命の与え方というのを、僕は教えるわけです。

●本能とキャラクター

 それから、もう一ついいことを教えましょう。
 本能です。
 本能というのは、「ホルモン」です。涙を流すのも、セニトロンなどのホルモンの作用ですし、恐いものを見て「おっかないなー」というのはアドレナリン、かわいい赤ちゃんや子犬を見ると、抱きしめたくなりますが、これはオキシトシンというホルモンが関係します。快楽のホルモンドーパミンは、いい気持ちになるホルモンです。
 要するに、人間というのは、ホルモンに左右される生きものなのです。
 では、どうすれば、そのホルモンを使うことができるのか。
 みなさんが描いた絵をパッと見た瞬間に、何かのホルモンをドッと出させるような絵であれば、これは大成功というわけです。だから、見る人にいっぱいホルモンを出させるような漫画を描かなければならない。
 それが、キャラクターです。

● キャラクターには謎が必要

 それから、もう一つ教えましょうね。
 キャラクターを動かしていくには、謎が必要だということ。
 「なぞなぞ」ですね。
 日本人もアメリカ人も「なぞなぞ」が好きです。夜のテレビ番組はみんなこれ、謎です。「不思議発見」とかいって、タレントたちがクイズの謎を解いて、視聴者も「謎」、「クイズ」を楽しんでいる。
 殺人事件があって、死体がここにあります。
 「一体誰が殺したんだろう?」と謎を追い求めて、刑事たちが活躍します。
 みなさんがどこかの国に遊びに行きたいと思う。その国には一体どんなものがあるだろう? どんな人たちがいるだろう? 
 みんな謎ですから、その謎を見に行きたい、謎を解きに行きたいわけです。
 世界中が謎に満ち溢れています。ですから、その謎を、見るお客さんに出してやる。
 謎、謎、謎、キャラクター、謎、謎、謎、キャラクター、戦い、謎、戦い、謎……。
 そういうふうに見せてやると、キャラクター同士が生きてきます。

●世界のコミックコンベンション

 今日は隣のブースが騒がしいので、大きな声でしゃべっていたら、喉が枯れてしまいました。だって、来年80歳なんですよ。
 この後、サンディエゴでも、ニューヨークでもコミコンがありますね。
フランスのジャパン・エキスポは二日前にありました。フランスは15周年。まだそれだけしか経っていないんですね。招待状は来ましたが、このバンコク・コミコンに来ましたので、フランスには行きませんでした。フランスのジャパン・エキスポも結構たのしいですよ。
 アメリカ最大のサンディエゴ・コミコンは45年になるんですね。
 僕が一番楽しみにしているのは、アメリカに行くと、サンディエゴのコミコンに必ずスタン・リーと会えることです。スパイダーマンやハルクを創った男です。マーベル・コミックの創始者で、92歳です。会えば「ヘイ!カズ!元気かい?」と必ず聞かれるんです。
 でも、92歳のあなたに、79歳の「僕が元気かい?」とは言われたくない。それはこっちが言うことだろう(笑)。
 身長は僕よりも小さいですが、ちょび髭を生やして、とても元気なおじいちゃんです。
 去年行ったときに「来年も来いよ、死ぬなよ」と笑いました。

●バンコクコミコンの課題

 このバンコクコミコンが、何十年も続く、世界でも有名なバンコクのコミコンになるにはどうしたらいいんでしょうか?
 昨日のようなオープニングをやってはダメだと思います。
 違うオープニングをやるべきですね。マスメディアではなく、ソーシャルメディアを中心にしたコミコンにしていかければ、これからのコミコンは生き残っていけないでしょう。
 インターネット、フェイスブック、ツイッター。そういうものを見ている人たちを会場に集めて、宣伝はインターネット、フェイスブック、ツイッターでやって、動員をかける。そうすると、何十万人という人が集まりますね。サンディエゴもニューヨークも20万人。これだけの人出でものすごいことになります。
 そういうものに期待しているならば、ソーシャルメディアの方に打って出るべきでしょう。
 僕は世界中のコミコンを回って、それを経験してきました。
 でも、コミックコンベンションが誕生したということは、とてもすばらしいことです。大勢の人が来ましたので、嬉しく思います。
 私もできるだけ毎年ここに顔を出していきたいと思いますが、あと何年来られますか、今年で終わりかもしれません。でも、第一回に来られたのは素晴らしいことだと思います。15年前、フランスのジャパン・エキスポにも1回めに来ました。無名の8人のオタクが始めたイベントですが、15年経って、すごい規模になりました。

 大体時間になりましたが、質問がありましたら遠慮なくしてください。

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《質問コーナー》

Q1 小池先生が一番好きなキャラクターは?

 この会場の玄関にいた「ハルク」です。一緒に写真を撮りました。

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 緑色のすごい筋肉のキャラクターです。あれを創ったのはスタン・リーなんですが、実は僕は30代の時、日本の雑誌に「ハルク」を連載していたんです。
 そういう経験があるので、ハルクは大好きなんです。

Q2 ショートストーリーの場合、どうやって読者にキャラクターの魅力を伝えたらいいのでしょうか?

 ショートストーリーの場合は、キャラクターを創って、そのキャラクターで短い物語で終わらせるために、謎を一つ付けてやれば、その謎を解けば、短い話でキャラクターが起つと思います。
 たとえば、短いストーリーで「あなたは誰を殺したいと思っているの? 殺したい人を僕に言いなさいよ。代わりに殺してあげるから」「じゃあ、殺してください」「嫌だよ」っていえば、それで面白いショートストーリーができます。

Q3 小池先生が漫画の世界に入ったきっかけは?

 僕が漫画の世界に入ったのは全くの偶然で、僕は大学を卒業して、お役人になって、偉くなるつもりだったんですが、漫画(当時は劇画といいましたが)が好きで、劇画のプロダクションに入ったんです。それがきっかけです。
 キャリアというのは、難しい試験をパスしたお役人のことですが、そのキャリアの座をぽっと捨てて、漫画の世界に入りました。
 もし、そっちの道に行っていたら、今頃どうなっていたでしょうかねえ。外務省の事務次官か何かをやって、それを卒業して、偉い人になっていたかもしれません。

Q4 昔ながらのキャラクターを使う時は、なにか問題がありますか?

 昔ながらのキャラクターを使う時は、そのキャラクターを創った人の許可が必要です。
許可をもらったとしても、自分のものにならないから、つまらないです。
やはり、自分で新しいキャラクターを創った方がいいですね。

Q5 キャラクターを創るのに、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

 まあ、半年はかかるでしょうか。
 ひとりで悩んでいるより、誰か一緒になって悩んでくれる人がいるほうがいいと思います。
 あなたが創ったキャラクターを僕が見て「こうしたほうがいいんじゃないか」「ああした方がいいんじゃないか」と言って、あなたが「嫌だ」「じゃあ、こうしたほうがいい」といって、出来上がってくるキャラクターがいいキャラクターになるんじゃないかと思います。

Q6 ソーシャルメディアやアプリなどのキャラクターを創る場合は、物語は要らないと思うのですが、物語を付けたほうがよいのですか?

 ソーシャルのキャラクターを創っても、漫画の本にはならないわけです。
 キャラクターだけです。だからこそ、日本のKADOKAWAという出版社が、ドワンゴというソーシャルの会社と合併したんです。だから、これから今までと違ったことが起こっていくと思います。
 あなたが言ったように、ソーシャルでキャラクターを出していく。そのキャラクターをみんなで創りあげ、愛されて、初音ミクみたいに人気が出たら、今度はそれを本にしたり、アニメにしたり、いろんなメディアで使っていく。今までと逆のやり方をして、すでにヒットしたものを使うわけです。
 マスメディアの世界では、ヒットしないものはダメになる。
でも、この場合は、ソーシャルでヒットしたキャラクターをマスメディアで使いますから、全部ヒットすることになります。
 そういうことで、日本の大きな出版社と、大きなソーシャルのメディアが一緒になりました。
 これからも、どんどんそういう傾向が進んでいくと思いますね。
ビッグチャンスです。僕は来年が無いから違うけど、あなたたちにとってはビッグチャンスなんです。

Q7 キャラクターを創る時、どこからインスピレーションを得るのでしょうか?

 それは、オリジナリティ、自分の中のイメージでしょうね。
 例えば、『ハリー・ポッター』とか、『パーシー・ジャクソン』とか、そういうものを見たとき、その中でどんな怪物や怪物が出てきたか、そういうイメージに自分のイメージをプラスして、それを越えるようなものを創っていけばいいんです。

Q8 これからの漫画の世界はどうなっていくと思いますか?

 これからの漫画はタブレットになっていくと思いますね。英語のように横書きになっていく。そういう意味では、縦書・右開きの日本よりも、英語と同じ横書・左開のタイランドの方が、ビッグチャンスだと思います。

Q9 きらいなキャラクターの例と、悪い例を教えていただけますか。

 きらいなキャラクターはあんまりないんです。どんなキャラクターでも、どこかいいところがあります。僕は人が嫌いなキャラクターも好きなので。

Q10 『子連れ狼』という作品は日本的なキャラクターですが、翻訳された時に何か気をつけられたことはありますか?

 僕も翻訳されて外国に出て行く時に、『子連れ狼』のような日本の時代劇はダメかなと思ったのですが、全然逆でした。
 アメリカは銃の国で、日本の刀に対して、憧れと畏れを持っていたので、刀を使うドラマ、キャラクターに、異常なほどの関心を示したんです。それで、『子連れ狼』は大ヒットし、その次に『首斬り朝』も大ヒットしました。一千万部を越える大ヒットになりました。
 恐ろしい刀の世界と、かわいい子供、この二つの要素で、成功したような気がします。

●おわりに

 これは「菩提樹の実」の数珠です。僕は仏教の僧侶ですから、いつも持ち歩いています。信仰するというのはいいことだと思います。自分の弱さを知らせてくれますから。
 僕は自分のアイデアが浮かばないときは、全部仏様のせいにします。アイデアください、お願いします、と、お経を上げて拝むんです。
 (般若心経を読み始める)。
 ハラソウギャーテーというのは、宇宙に向かって自分の心から訴えることです。
 「早くアイデアちょうだい! 仏陀は何をしているだ、早くアイデアちょうだい!」と。
 そうすると浮かんでくるんです。だから、仏様のせいにするのが一番いいんです。

 こういう機会を与えてくださいました、バンコクコミコンの主催者と皆様方に感謝の意を表します。

 ありがとうございます。さようなら。

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小池一夫のキャラクター創造論に興味がある方、

 プロのクリエイターを目指す方は、

 《大阪エンタテインメントデザイン専門学校

  キャラクターコンテンツコースへ。

 

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9月3日 小池一夫がNHK「探検バクモン」に出演!

 小池一夫が9月3日放送のNHK「探検バクモン」に出演します!

 

  http://www.nhk.or.jp/bakumon/

 

 放送日時

 9月3日(水)午後10:55~11:20 「襲来!マンガ界の巨人」

 襲来!日本マンガ界の巨人・小池一夫。

 ヒットの極意を大公開!

 育てた弟子は高橋留美子・堀井雄二など超一流クリエーター!

 マンガの歴史を変えたキャラクター創作術に迫る!

<放送スケジュール>

●9月3日(水)午後10:55~11:20

(再放送)
●9月6日(土)午前2:00~2:25 ※通常より15分遅いです。ご注意ください。
●9月9日(火)午後4:30~4:55

〈内容〉

襲来!日本マンガ界の巨人・小池一夫。ヒットの極意を大公開!育てた弟子は高橋留美子・堀井雄二など超一流クリエーター!マンガの歴史を変えたキャラクター創作術に迫る!
日本マンガ界の巨人の脳内探検!マンガ原作者・小池一夫が教壇に立つクリエーター養成学校に、爆笑問題が体験入学!
まずは作品展示室で知られざる原作の秘伝が大公開!小池の脳内設計図には驚きの秘術が隠されていた!その極意は“キャラクターを起(た)てろ!”。実は小池流キャラ創作術は数多くの弟子たちに継承されている。超一流マンガ家の「うる星やつら」高橋留美子・「北斗の拳」原哲夫・「バキ」板垣恵介、さらには伝説のゲームクリエーターの「ドラクエ」堀井雄二まで!当時、無名の若者だった“巨匠たちの青の時代”に、どんな創作術が教えられたのか?原稿を破られ涙した弟子たちの習作ウラ話や、30年以上前の貴重な秘蔵映像やお宝雑誌など満載。日本マンガ界の歴史を変えた秘密がついに明かされる!
そんな伝説の巨人・小池による特別講義が開講!未来のマンガ界を担う若者たちと一緒に爆笑問題もガチ参戦。太田・田中のつくるキャラクターに小池の厳しき審判が下される。太田もビックリのキャラ創作テクニックとは?
名作映画や日本を代表する時代劇マンガなどキャラ作りの神髄を徹底的に語り合う!

 

9月1日 庵野秀明氏との対談が掲載された漫画誌「ストレンジャーソレント2014年10月号」が発売!

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「明日9月1日、『ストレンジャーソレント』7号が発売になる。

 いま僕が、全力を傾けて作っている雑誌です。

 表紙・巻頭は、天野喜孝氏が絵、僕がセリフ、で組んだ『帰れソレントへ』。

 今回の絵も、実にイイ! 諸君よ、買って読んでくれッ! 」

 (小池一夫)

小池一夫が「エヴァンゲリオン」の庵野秀明氏と対談、

 エポックメイキングなキャラクターについて、語り合う!

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「アニメ!アニメ!」様、「コミックナタリー」様でも取り上げていただきました。ありがとうがざいます!

お求めは

amazon 7net エルパカ e-hon 

小池書院ホームページ

 

 

 

 

COMIC ストレンジャーソレント 10月号

●特別講義 庵野秀明・小池一夫

「エポックメイキングなキャラクターを創るためには」

●『高橋留美子のキャラクターBOX!』第7回 響良牙

『帰れソレントへ ―「ZAN」より―』 絵師:天野喜孝 語り部:小池一夫

『TAKE-5-FIVE ゴウ』 原作:竹内清訓 作画:叶 精作

『爆誕ツバメ』 原作:鳴二一巴 作画:神江里見

『オレを二つ名(そのな)で呼ばないで』
原作:逢上央士 作画:鈴木ネコ (作画原案:COMTA)

『迦陵頻伽』果南ビレン

『また夜見上君が倒れてる』水喜結太加

『平安狩人 翼鬼丸』小坂伊吹

『無景映し 清十郎』原作:流 圭 絵師:稜之大介

『女子中学生《エクソシスト》祓』
原作:小津友喜 作画:木村知夫

『霊媒分析官レアード』河合ヨシアキ

『ツメクイ』作 ねめしす 挿絵 伊吹タイガ

【発売日】 平成26年9月1日
【発行】 大阪芸術大学 
【発売】 小池書院 
【編集人】 小池一夫
【体裁】 B5 280ページ(中綴じ) 
【価格】 定価310円(本体287円)
【雑誌コード】13879-10

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