立春を過ぎましてもなお風は冷たく、東京は2月が一番寒いという声を痛感させられる日々でございます。

ここ最近の部屋の様子です。
2月3日
お昼、「ちゃんこができました」と親方に報告に上がってくるちゃんこ番さん。
「では今日はこちらも一緒に」と、恵方巻も大部屋に運んでもらいます。
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皆が食べ終わりました頃、
親方出陣です。
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大きな緑鬼さんのいる大部屋に、升いっぱいの福豆をまきました。
皆は、わぁ、、、掃除が大変だ、どうしようという顔をしています。
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古来、「鬼」は邪気の象徴とされ、形の見えない災害や病などは、鬼の仕業と考えられてきたそうです。
立春の前日に豆をまいて邪気を払い、清められた上で春を迎える。
『節分』には、そういった意味があるのだそうです。




2月6日
朝稽古にて。
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朝の寒い空気の中で汗を掻き、お相撲さんたちの体からは白い湯気が上がります。
稽古が終わり、お風呂に入り、しばらくは体もぽかぽかしているようですが、外は低い雲が空を覆い、体の芯まで冷える寒さです。

風邪などのウィルスも跳ね除けなければいけません。
『ちゃんこをしっかり食べてたっぷり寝る』
これが一番の予防策ですが、親方と考え、加えて熱い緑茶を飲む回数を、これまで以上に増やす試みを行うことにいたしました。
お茶は、八女の里の故郷、福岡県八女郡でとれました「八女茶」です。

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冬の間は、続けていこうと思います。
皆、大きな怪我なく、風邪をひくこともなく、今日も元気に過ごしております。



当部屋は、「新型コロナウィルス」感染の予防対策と致しまして、お客様並びに力士たちの健康と安全確保を考慮し、当面、稽古見学の実施を一時停止させていただきます。
尚、事態が終息いたしましたら、再開いたします。
ご理解の程、お願い申し上げます。
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【退職のお知らせ】
行司 木村公輝(本名 津川公輝 18歳)が、令和2年1月31日付で退職いたしました。ご支援ご声援有難うございました。


1月26日
千秋楽打上げパーティーにご列席いただきました皆様には、親方からの最初のご挨拶で、公輝が初場所後に退職する旨をご報告させていただきました。
故郷青森への帰る日を、部屋の打上げパーティー後にいたしましたのは、これまで応援してくださいました皆様にお礼の気持ちを直接伝えたいという公輝の思いからでした。



花束贈呈、
力士たちからは、今場所の星取表贈呈、
親方からは餞の言葉が送られました。
時折、涙ぐみ言葉を詰まらせる親方。公輝の存在が西岩部屋にとりまして、とても大きかったことを、皆が実感いたしました。
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1月30日
場所後の休暇を利用し、部屋の皆んなで公輝のお別れ会をしました。
選んだ場所は、一年前の公輝の歓迎会と同じ、浅草ビューホテル26階スカイグリルビュッフェ『武蔵』です。一年前、ここから見える東京の景色を見て、「青森の妹に写真を送りたいです」と目を輝かせていたことを懐かしく思います。
皆んなで和やかに食事を楽しみました。

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話に夢中になり過ぎて、あっという間に制限時間が来てしまいました。
デザートは雰囲気を変えて、贅沢ではございますが、1階のラウンジでケーキセットをいただきました。東京の雰囲気を思う存分堪能してほしいという気持ちで、親方も「今日は特別」と笑顔を見せていました。
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これで、公輝のお別れ会は終わる予定でした。





純粋すぎるほど純粋で、不器用な面もたくさんあったはずなのに、最後、公輝はここから、次から次へと皆を感動させてくれました。

1月30日 夜
自宅階のチャイムが鳴りました。扉を開けますと公輝が一人で立っています。
「先程はごっちゃんでした。お世話になったしるしとして、全員にプレゼントを渡したいのですがよろしいでしょうか」
大きな紙袋の中には包みや箱がたくさん入っています。その全てに金色のプレゼント用のシールが貼られています。

力士たちを呼びました。
和室に皆んなが集まりました。
「皆さんに渡したいものがあります」
公輝が正座をして挨拶をします。

まずは一番長い箱を取り出します。
これは親方に。チェック柄の落ち着いた色のネクタイでした。師匠への感謝の気持ちを述べ、力士たちから拍手が沸き起こりました。
続いてハンドクリームとホットアイマスク。これは私に。
娘の花には12色のクーピーとぬりえをプレゼントしてくれました。
そして力士たち一人一人へ、これからも頑張ってくださいと、柔らかな綺麗な色の今治タオルが手渡されました。


去り際の礼儀を教えてくれたのはお母様だそうです。
「何がいいかは母が相談に乗ってくれて、最後は自分で決めました」とのことでした。
公輝のお母様は、慈愛に満ちたかたで、私もこれまでメールのやりとりをさせていただく中で、"母親とは"という芯の部分をたくさん学ばせていただきました。感謝しています。
人として一番大切な事は何か。
最後の日が近づくほどに、公輝に伝えてくれていました。



力士たちが顔を見合わせ、何やら小声で相談をしています。
訊くと、「自分たちからも公輝にプレゼントがあります。今持ってきてもいいですか」とのこと。
とてもかっこいい長財布でした。
三階の和室で、その夜はプレゼント交換の会になりました。



気持ちが一番大切だけど、その気持ちを形に表す事もとても大切です。
子どもたちは、何も教えなくても、お互いのためにプレゼントを考え、用意していました。
これには親方も私も大変驚きました。











皆んなとの日々の動画です。
先日の最後の千秋楽パーティーから始まり、一年を振り返ります。
本人へは長い一本のビデオクリップにして送りました。
こちらのブログでも、場面ごと、少しですが皆様にご覧いただけましたら幸いです。

令和元年2月1日付で日本相撲協会に採用されました公輝は、3月の大阪場所で初土俵を踏みました。
宿舎の前の公園で、日が暮れるまで練習しました。
奈良も良い思い出だったと申しておりました。
力皇さんに会いに行き、相撲神社へも詣りました。奈良公園では鹿に追いかけられ、無邪気な笑顔を見せる公輝。
この頃からすでに西岩部屋のムードメーカーでした。



旅立ちの日、
「師匠へ」
「おかみさんへ」
「力士たちへ」
と、それぞれに宛てた手紙を手渡してくれました。

そこには、どれ一つ同じ文章は無く、師匠の部屋に来れて良かったという想い、私との何気ない日々の想い出、力士への謙虚な感謝の気持ちが綴られていました。







去り際は大事です。
一年間いろんなことがありました。大変だったことも、たくさん失敗したことも、最後の去り際の行動一つで、例えるならばオセロで最後に角を置くように、全て真っ白にひっくり返せるのです。
なんだかんだいっても人懐っこく笑顔の可愛い楽しい子だったなと、皆んな笑顔でお別れできます。



今回そうできたのは、公輝の礼儀正しさです。
正面玄関から出て、師匠をはじめ部屋全員に見送られて、青森に帰ります。
部屋の規則は厳しいですが、一度も逃げなかった。逃げようともしなかった。
公輝は、西岩部屋に来て、「逃げない」という事を貫きました。
強い人間にしかできません。

「逃げない」ことこそが前進であり、成長です。
次の進路でも、胸を張って生きていけます。
そして、またいつでも遊びに帰ってこられます。



角を曲がるまで力士たちは公輝を見送りました。
角を曲がる時に公輝は振り返って深々と一礼しました。
また会いましょう。
それまで、お元気で。





『立つ鳥跡を濁さず』
公輝が旅立った後、大部屋を見に行きました。
公輝が使っていたロッカーは綺麗に片付けられていて、隅々まで埃ひとつありませんでした。
置いて帰っていいですよと伝えていた衣装ケースの中も、洗濯カゴの中も、丁寧に拭き掃除されていました。
文句一つ言わせてくれないほどの去りかたに、寂しさが込み上げてまいります。



津川公輝くん、
あなたに出逢えてよかったです。
西岩部屋に来てくれて本当にありがとう。

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