こんにちは、Kindleまとめサイトkindou.info)の与太話。きんどうりさいくるのお時間がやってきました。


さて、昨日ですね京都で開催された鈴木みそさんのイベント『電子コミック時代の漫画家生存戦略』の打ち上げにてプロ漫画家・緒方ていさんから『どうやったら電子書籍って売れるの?』とご質問されたので、そのアンサーをまとめます。名前をだしてもいいので具体的にと許諾をいただきましたので真面目に考えました。


先に結論から言うと、電子書籍を売るためには『Webプロモーションを頑張る』のが一番確実です。ネットで買うものですからね。そして『読者が作品を読む理由』をあらゆる機会をもって提供することを徹底的にやりきることです


それを実現するためのキーワードは『新規(潜在)顧客を獲得と既存顧客を深堀りする』っていたって普通の営業戦略を実行するだけ。具体的にはソーシャルメディアとブログですわな。


この2つの役割をしっかり考えてグルグル回して、新作をリリース直後に買ってもらう可能性を徹底的にあげつつ、既刊作品も手を伸ばしてもらうしかないかなと。


そんなわけで今回の記事は完結作品が何作かあってすでに電子化している+連載作品を持っていてTwitterしかやってないマンガ家さんが、今後電子書籍を売るために考えたいメディア作りの一例を述べます。ただ、バカみたいに本気でやってもらえれば成果に必ず繋がります。


→ 実際にこの記事をもとに緒方ていさんと打ち合わせをしました。


プロ漫画家さんが電子書籍を売るためのメディアの作り方


まずは定義から。「電子書籍が売れた」とひと口に言っても出版社や電子書籍ストアの努力の結果やファンの活動/口コミによって自然に部数が伸びることは『売れた』。マンガ家個人のプロモーション施策を通じて成果を出したものは『売った』と違うものです。今回は後者をどう意図的にやってくかを考えます。


そのためには、ファンを集めてリピーターを獲得する『メディアづくり』と、自分・出版社・電書ストアによる『商品施策』の2つが必要です。


新規/既存の読者を集める「メディアの作り方」


結論から言うと『うざいくらいにTwitterで話題を作って』『ブログにユーザーを誘導して』『最新刊や既存作品を知ってもらおうぜ』です。


メディアはストックとフローと2種類の性質があるので、たとえばじっくり読ませるようなモノはTwitterに書いても流れるだけなんですよね。そもそも、Twitterは瞬間的なゆるいつながりが特性なので、新刊情報を案内しようがその後に書いた映画の感想なんかで自分で情報を下に流していってしまうことになります。


だから、ちゃんと使い分けを考えて読者に適切な情報提供を心がけましょう。


1)具体的なTwitterの使い方例

新規(潜在)ファンを獲得する - RTされやすい話題やネタを意識的につぶやいて自身の認知度をあげる。流行りものに乗るというのが手っ取り早かったりしますね。今ならスプラトゥーンをやりつつマッドマックスを見る的な。


既存ファンを自ブログに誘導する - ブログを更新したとしてもその更新通知を必ず受け取るほどのファンは稀です。ブログを更新したらそのことをちゃんとみんなに知らせましょう。


新規/既存問わずコミュニケーションをする - Twitterの最大の役割はコレ。やりすぎると作家の神性やブランド毀損につながる可能性もありますが、作品を知っているだけという方をコアなファンに昇格させる可能性もあります。


リプライやRTされたものへの受動的な行動と、作品名や著者名をサーチして能動的な活動を組み合わせましょう


ただし、大事なポイントですが『買って』『読んで』『感想をくれ』等の読者に行動を頼むのは読者のやる気を削ぎます。感謝を基本とした、行動が望ましいです。


また、悪口や悪評に関しては反論はやめましょう。その時間は作品作りや自分を好いてくれているファンに使ってください。『たしかに問題は自分にある』という場合は特定の誰かに向けて説明するのではなくただ一言『ごめん』とツイートしてしばらく黙るくらいが良いかと。議論は作家がやる仕事じゃないですから。


2)具体的なブログの使い方例

更新内容について - 作家としての仕事に関わることや、業界に関わることなど8割はマンガ・創作をテーマにしましょう。イラストを載せるやプロ漫画家として意見や、作品そのものに関わることを読者は読みたがっています。それらが蓄積されていくほど、資産として活用していけます


一方でついやりがちな今日食べたご飯の話や、まったく無関係な政治の話題などはファンサービスやネタ切れの時くらいにしておきましょう。メディアが持つテーマがブレてしまうと、ファンは離れていきます。


更新頻度について - サイト更新直後はとにかく更新をし続けてください。リピーターを獲得して、かつ更新が習慣になる……そうですね3ヶ月程度は毎日2〜3記事が望ましいでしょう。200記事もあれば、ブログとしての体裁も整いますし、効果を実感し始められますよ。普通の人が1年更新をちょっと頑張った程度になりますから。それを短期間につくり上げれば時間をかけるよりも効果的なメディアに育ちます。


デザインについて - Twitterとの違いは情報を蓄積できることと、ある程度伝えたい情報をこちらで意図できることです。サイドバーには新作/既刊の案内を目立つように配置し、かつカテゴリーをしっかり作りこむことで訪れた読者にしっかりと情報提供をしましょう。


3)FacebookやLINE、メルマガ等他メディアの利用について

メディア特性の違いがそれぞれあるので今回は割愛。ただ、メディアを増やせば読者と接する機会は増えますし、また違う層と触れることになるのですが今度はメディアの維持にパワーと時間をとられますので2,3のメディア運用だけに抑えて重点的な運用がベターです。


週に1度更新するかしないかわからないブログにTwitterと同じ内容を垂れ流すFacebook。最終更新が3ヶ月前のメルマガとかは負の資産でしかありません


2.価格施策や宣伝など電子書籍の「商品施策」


これはマンガ家さんが自身でコントロールできることと、出版社・電書ストアによる突発的な出来事混ざっているので上手くやるにはタイミングが重要です。


1)マンガ家が自分からできること

新刊がでる時 - 発売数日前/発売直前/発売直後/発売3日後頃という、4つのタイミングを活かしてください。


電子書籍は読者に発見されて自然に売れていく、ということはあまり無いので狙ってスタートダッシュをかけるだけでライバルに差をつけられます。とにかく、発売された直後にどこまでランキングを伸ばせるか、そのために出来ることを集中的に実施しましょう


具体的には告知イラスト・執筆中の苦労話・発売しましたやお買い上げありがとうございます記事が自分でできることですね。また、可能なら事前に根回して書評記事などを誰かに書いてもらって自ブログやどこかのメディアに載せてもらう等々もできるでしょうか。ほかにもインタビューに答えたり対談なり、とにかく新刊発売をお祭りと捉えて盛り上げるのがベストかと。


そして一番肝心なことですが『未読の読者が最新刊だけを買う』ということはレアケースです。ちゃんと1・2巻も紹介して、新規読者の獲得も意識しましょう。可能であれば価格施策含めて出版社に相談するのも戦略ではと思います


普段から既刊を売る - Twitter、ブログを頑張るのです。とにかく頑張って普段から自分の作品に触れてもらう機会をつくるのです。イラストや創作秘話なんかを公開するのです。とにかく作品に興味を持ってもらうようしたたかに、ただし読者に媚びず、なおかつ『売りたい』『買え!!』なんて思ってはいけません。大事なことは読者が作品を読む理由をどう提供するかです


2)出版社・電書ストアによる突発的な出来事を利用する

出版社のキャンペーンに乗っかる - 緒方ていさんの場合、集英社の作品が多いわけですが集英社は基本的にセールは滅多にしません。ただし無料キャンペーンは機会を見つけては精力的に実施しています。


たとえば、今ですとウルトラジャンプ20周年記念とにこいちマーガレット配信記念による大規模なお試しキャンペーンを実施しています。また、新刊の配信タイミングでは第1話だけをまとめたニュース本も配信しています → Kindleストア 集英社の無料作品


忍空』がお試しキャンペーンなっているわけですから、ええ、機会があれば連載中の『ラフダイヤモンド』はもちろん『キメラ』シリーズをキャンペーンにしてくれる可能性があります。むしろ編集部に相談してみる、くらいは可能じゃないでしょうか。ラフダイヤモンドは新刊記念でもいいでしょうし、キメラはなんかほらあるでしょう?画業何周年記念とか。


電書ストアのキャンペーンに乗っかる - こちらはいわゆるセールですね。これは出版社も知らないのでほんとゲリラ的に行われるのですが、いきなり全品50%OFFやポイント還元なんかが実施されます。


このタイミングでたとえば既刊の紹介イラストを載せて自分からストアに誘導するようなツイートやブログ記事を新たに書いたり、過去の案内や書評などを紹介するなどの『積極的な営業』を実施できます。


やり過ぎると読者に引かれますので、ほどほどにイヤらしくなく、しかし熱心にやりましょう。自分が仕掛けた結果に反応したユーザーさんのコメントをまとめたり、お礼を述べるなどがいい塩梅になるかと思います


最後にまとめ。やりすぎは肝心。あと何をするにも出版社とまずご相談を


ネットのプロモーションを頑張って実際に数字がでてくると結構夢中になります。もっと売れる!売りたい!なんて思うかもしれませんが、マンガ家・作家さんは売るのが仕事ではないのであまりやりすぎるのは読者離れにも繋がります。繰り返しますが「読者に作品を読む理由・機会を提供する」ことに集中して、その結果が売った/売れたに繋がればいいんじゃないかなぁと思います。


また、こういう取り組みは出版社/編集者の機嫌を損ねる場合が多々あるので。出版社が電子書籍の販売に熱心じゃない、方針として嫌がっているという場合はいい落とし所を相談しましょう。この辺りはホント、出版社との関係がもうとてもセンシティブなもんですからねぇ……。この記事を他のクリエイターさんが真に受けて無断で実施されてもわたし責任持てませんよ? ちゃんとやれば電子書籍を売るだけであれば成果につながるはずですけどね。


あと、今回は自作品だけの取り扱いを述べましたがこの発展として他のマンガ家・作家の作品の営業マンになるというのがあるんじゃと思うのですよ。出版市場が縮小し続けているなかで苦しいのはどのクリエイターも一緒です。


だから、自分の作品だけじゃなく、自分の読者にもっと他の作品を手に取る機会を提供して創作の世界を豊かにしていく、その結果として自分の作品にも読者が新たについていくというプラスの循環ができるんじゃないかなと。


打算的な話をすると、ええ、緒方ていさんがモノスゴイ勢いで他の作家さん作品を売りまくれば、紹介された作家さんが緒方てい作品を売ってくれる場合もありますからね。持ちつ持たれつで良い環境ができればまぁ、面白いんじゃないかと思うんですよね。


→【続き】 実際にこの記事を緒方ていさんに読んでもらって打ち合せました。



>> 現在連載中の『ラフダイヤモンド』ほか緒方てい作品をKindleでチェック