目の前にあるのは大きなハンバーガー。顔よりも大きいのではないかと思うほど大きい。私が思い描いていたアメリカの中の場面のひとつ。
肉厚でチーズがとろけている丸い憧れ。口を大きく開けて頬張れば、ステーキを食べているような感覚になる。私が今まで食べていたハンバーガーは別物なのだと感じる。
私が普段触れているものは本物でも、それ以外の本物が存在する世界。そんなことがどうでもいいと思えるほど、大きく広がる大地。そんな大地は私を1人にはしない。薄汚れた空気よりも埃っぽい空気を肌に感じながら少し空を仰いでいた。








満腹感でいっぱいの私は、夜の街を少しドライブする。ネオンでいっぱいの道を背に営みを感じていた。私がいなくても広がる生活の輪。隣に乗せていた温もりを降ろして、新しい寒さを後ろに乗せていた。遮るものがない草むらで腰を下ろせば強い匂いに包まれる。人が詰まった嫌な匂いではなく、作られた匂いでもない。それは私を落ち着かせて、静かに染み込んでいく。頭上に広がる輝たちは、私に届いている。いつもは遮られているのに、ここでは見えているのだ。囲まれた灯火に意識を預けようとするが、ゆっくり眠る時間があるならと、また車を走らせた。






バスタブに張った水に手を伸ばす。すくってみると、湯気は出ていた。沸かした湯が冷たく感じるほど、身体は冷えたみたいだ。シャワーを頭からかけてゆっくりと温め始める。下に落ちる雫を見ながら、消えていく諦めたち。頭上から足元まで、水でいっぱいになっていく。息を止めなくても溺れそうだ。一緒にいても苦しくなるのは私だけなんだね。忘れようとしても私は息がつまっていく。流れていくものは私から離れていくのに、残っては消えない。







柔らかいタオルで体から水滴を拭いとって、ベットの上に倒れ込んでいく。もう何も考えずに眠りの世界に入っていけそう。人のことなんか考えなくとも、迷惑をかけずに済む。明日は満員電車には乗らずともいい。そう考えると、思いを告げずとも離れられる気がする。期待する必要も無い。
さて明日は何をしよう。
列車にも乗ってみたい。違う景色を流し見してみたい。最初の予定とは全く違って、計画性の無さに呆れるが、流れには逆らえないだろう。
一回でいいからティファニーで朝食を食べてみたかった。オシャレなカフェに入って、大きなサイズのコーヒーをテイクアウトしてみたかった。もちろんミルクと砂糖がたっぷりで。ビターな味は私の性に合わない。そして夜は、日が沈む水平線を見ながら、熱々のクラムチャウダーを飲んで、ロブスターを食べるんだ。
そんな妄想を頭の中で繰り広げれば、私の目的を明確にさせる。そして明確な意識は闇に馴染み始める。目を閉じて私は君に逢いに行くよ。私だけが知っている君に。逢えるといいな、私の知らないキミに。
私からゆっくりと微睡みの中に溶け込んでいく。









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