月別アーカイブ / 2019年10月




















いつもの暖かい寝床にいたはずなのに、今は寒い。






ただ単に布団を剥いでいるだけなのに。外が寒いのが悪いと思ってしまう。暖かい温もりは消え、自分の体温で保つしかない。寄り添わなければ意味を成さない布団を持ってきて、もう一度被る。
もうすぐ自分を刺してくる季節がやってくる。求めていない凍えを全身で受け止めることになる。嫌だと思っていても、自己満足を押し付けられるのだ。それが自分には重すぎる。生憎それを抱えられるほどの器を持っていない。まだその準備もできていない。それが辛い。


それを跳ね返せる位の暖かさがあればどんなに楽だろう。そうすればすぐに春がやってくるのに。自分にそんなふうにはできない。難しいのだ。自分は冬を待つ人ではない。どちらかと言えば冬眠に入りたいくらい。なのに冷たい風に吹かされ、その風に指図される。行きたい道くらい自分で決めさせてくれ。風は轟々とうるさく、干渉が激しい。今までは遠くにいたのに、ありがたい存在のはずなのに。今は行く手を阻んでくる。
もし自分が冬を待つ人だとしたら、その全てを受け入れよう。そして自分の全てを差し出そう。なんでも言うことを叶えてあげよう。でも自分は従事者ではない。それくらいのことは分かってほしい。だから自分が皿である限り、載せるものは他にある。それが輝くまで割れないのが役目。自分はそれがいい。それが好きだから。


寒い風が吹き始め、外は凍え出す。雪とともに夜はしんしんと深まっていく。それを横目に自分は暖房の温もりを感じていたい。









冬はもうすぐそこへと迫っている。








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今日、電車に乗ったら寝ている人がいました。


サンダルを投げ出して、椅子を全て使って寝そべっていました。とても気持ちが良さそうです。あんまりに気持ちよさそうだから、誰も起こしません。その人はすやすやと、まるで冬眠しているみたいでした。電車に乗る人々は最初に驚くだけです。あとは普通に、何も無かったように過ごします。木目田もその一人。親切な人は起こしてあげますが、木目田は親切ではありません。ただその人の隣に座って、本を読んでいました。


駅が何個も何個も過ぎていき、木目田が降りる駅になりました。


ふと、木目田は不安になりました。この人はどこでこの電車を降りるのだろうと。でもその人がどの駅で降りるか知りません。終点まで行くから寝ているのか、はたまたもう乗り過ごしているのか。本人以外の誰も知りえないのです。だから起こそうと思っても、起こせませんでした。やっぱり気持ちよさそうにすやすやと寝ているのを邪魔したくないから。
だけど本当は怖かっただけなのかもしれません。自分が臆病だから、勇気が出せないから、声をかけられなかっただけなのでしょう。他の人と同じように何事も無かったように振る舞う。それが、自分にとって一番良い方法だったから。悪いと思いながら、自分が正しかったと思い込む他ありません。木目田はそういう風にずる賢くなってしまったのです。


その人は家に帰ってもぐっすり眠れてるといいなと願う、急行電車の待ち時間。そうして木目田も揺られながら眠りについたのでした。









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