本日放送予定のNHKラジオ第1「香山リカのココロの美容液」

テーマは発達障害について教えてください




精神科医・香山リカが同世代の女性たちに贈るトークと音楽の25分。
仕事や家庭にちょっと疲れた週末の夜。癒しと活力をリラックスしたムードの中でお聞かせします。


3月2日(金) NHKラジオ第1
21:30~21:55 放送予定

※緊急ニュース等のため、放送時間が変更になる場合もあります。
 
是非お聴きください


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 名護市長選挙が行われ、新人の渡具知武豊氏が新しい市長に選出された。
 結果そのものに対しての論評からは大きくずれるが、私のきわめて個人的な思いを少し書いてみたい。
 
 「名護」と聞くと、条件反射のようにあるものが目に浮かぶ。それは2016年夏、ヘリパッド建設反対運動が続く高江を訪れたあと、那覇に向かうバスに乗るために立ち寄った名護バスセンターで買ったお弁当だ。
 その日の午前中、私が乗っていた知人の車は高江の路上でいきなり機動隊に止められ、理由も伝えられないままその場に留まらされた。携帯電話の電波もない場所で、那覇から東京に戻る飛行機の時刻も迫ってくる。「仕事の連絡をしたい」「今日中に帰らなければならない」などと事情を話しても、路上に一列に並んだ機動隊員たちは表情ひとつ変えない。
 3時間後、またもや理由を告げられることもなく車の車輪止めをはずされ、走行を許された私は、急ぎ知人に名護バスセンターまで送ってもらった。
 なんとか那覇行きのバスには間に合いそう、となったときにはじめて、「そういえば朝から何も食べてない」と気づいた。それまではいきなりの拘束と誰にも連絡がつかないことの緊張と不安で、空腹感さえ感じることがなかったのだ。

 バスの時間は近づいていたが、売店をのぞくとおいしそうなお弁当がたくさん売られていた。しかも、どれも300円代、400円代という安さ。迷っている余裕はなかったので、ふりかけをまぶしたおにぎりや魚のフライ、ソーセージなどぎっしりとつめ込まれたものを買った。たしか380円だった。
 冷房のきいたバスの中で食べたお弁当はボリュームたっぷり、味つけもほどよくて本当においしく、私は夢中になって食べつくした。「生き返る心地」とはまさにあのことだろう。
――高江のヘリパッド建設予定地周辺では非日常的な事態が続いているけれど、名護にはこうしてあたりまえの時間が流れてるんだな。食べることって、生活って大事だな。
 そんなことをぼんやり考えていた記憶がある。

 名護市長選が告示され、投票日までの1週間、日本中の目が名護市に注がれた。永田町の大物議員も次々に名護市入り。ネットでは毎日、現職だった稲嶺進氏を推す人たちと渡具知氏を推す人たちが、舌戦ならぬ“文字戦”を繰り広げた。その多くは名護市民でも沖縄県民でもなかったと思う。
 もちろん、米軍普天間飛行場の移設予定地とされている辺野古を擁する名護市のことを、「もし自分が名護市民だったら」と想像するのはむずかしい。
 ただ、町の規模や県内の場所などから、北海道・小樽市出身の私は、どうしても「もし私が名護市民だったら」と考えずにはいられないのだ。
 私は生まれは札幌市だが、ものごころついてからはずっと小樽市で暮らしてきた。いまでも実家はそこにある。
 小樽市は昔は北海道一の商都だったが、いまや人口は減少の一途、ついに12万人台を割り込みそうになっている。経済の面でも札幌に大きく引き離され、景気低迷が長く続いている。観光地としては全国的に知られているが、市民の高齢化率はとても高く、デパートや商店街の店は次々閉店。実家にひとり暮らしの私の母親は、「小樽はこれからどうなるのかしら」と心細そうだ。
 そういう意味で、人口6万強、那覇市からやや離れたところにあり、景気低迷が課題ともいわれる名護市と、重なる面がないわけではないのだ。

 ここからは、さらなる空想の話だ。
 もし、小樽市に原発があり、いまは稼働していないが次の市長選ではその再稼働が争点となったと想定してみよう。選挙のときは「原発をゼロに」の声が全国で大きくなっているのに、候補者のひとりは「この原発再稼働なくして小樽の経済復興はない」とさまざまななプランを打ち立て、現政権と経済界が支援を表明。一方、「再稼働反対」の候補者は野党や反原発運動の市民団体、学者や作家らが支援することになり、一気に小樽に全国の注目が集まる。
 駅前や広場では毎日のように集会が開かれ、全国から大勢の支援者、報道陣などがやって来て、異様な熱気だ。演説では応援弁士が「小樽市民の民意が試されている」「小樽の有権者の選択に日本の未来がかかっている、みなさんの責任は重い」などと言われ、全国紙には「小樽を舞台にしても永田町代理戦争」「小樽原発戦争」といった穏やかならぬ見出しが躍る…。

 もしそんなことが起きたら、たとえば小樽市民である私の母親は、どう思うだろう。「私の一票に国の行方が!」などと奮い立つには年老いすぎている。もしかすると、「なんだか小樽がたいへんなことになっている」とおびえ、「早くこの騒ぎが終わって静かな生活に戻りたい」と思うのではないだろうか。地元で飲食店などを営む同級生たちは、「小樽で代理戦争だなんて言われると、観光客の足が遠のくのでは」と不安を感じるかもしれない。いまや小樽市民ではない私ですら、「小樽の選択が日本の未来を左右する」などという言葉を目にしたら、「勝手に重い責任を押しつけないでくれよ」と思うのではないだろうか。
 小樽市民の生活は、誰が市長になろうとも、もっと言えば原発が廃炉になろうと再稼働しようとも、一秒も途切れることなく続いていく。いや、続けていかなければいかない。それが「生きている」ということだからだ。それを全国の方々はお忘れではないですか…。私だったら、そんな屈折した気持ちにさえなってしまうかもしれない。

 もちろん、これは私の勝手すぎる空想でしかない。今回の選挙での名護市民は、私のようなおかしなことは思わず、自分たちの市長を決めるこの選挙に積極的にかかわり、一票を投じたのだろう。76.92%という凄まじい高さの投票率がそれを物語っているともいえる(これだけでも名護市の方々に心からの敬意を表したい)。
 ここで私は、「名護市や今回の市長選のことをいっさい語るな」などと言うつもりは毛頭ない。米軍基地が沖縄県にのみ集中しているのは日本全体の問題であり、その根底に横たわる構造的差別についてはこれからもどんどん指摘し、解消の道を探らなければならないのは言うまでもない。
 ただ、名護市民でも沖縄県民でもない私のような人間が、「もっと本土からガンガン応援演説に行けばよかったのに」とか「この選挙で安倍政権にもさらなる追い風が」などと、この選挙を“高みの見物”しながら大騒ぎしすぎることを地元で生活する人たちはどう思うのだろうかと、日本の北の端の小規模都市・小樽市出身者としてやや気になるのだ。
 
 市長選は終わり、名護市での市民生活は、昨日までと変わらずに続いているだろう。名護市のバスセンターではおいしいお弁当が売られ、バスに乗る人たちのおなかを満たし心をくつろがせているのだろう。高江で拘束されたあとの私が、おにぎりやソーセージで「生き返った」と思うことができたように。
 名護市民の方々のあいだにどちらの候補を推したかで亀裂が入ることなどなく、あのおだやかで落ち着いた風景の中、これからも仲良くなごやかな生活が続いていくことを心から祈っている。
 私は沖縄にゆかりがある者としてではなくて、日本人のひとりとして、特定の県にのみ米軍基地が押しつけられているという異様な事態はおかしい、と感じている。それはこれからも機会があれば声に出していきたいし、沖縄の方たちとも沖縄以外の方たちとも議論を続けていきたい。
 基地移設への反対活動をする中で逮捕され、裁判を受けて3月14日の一審判決を待つ山城博治さん、稲葉博さん、添田充啓さんの支援も引き続き行っていきたい。それは少しも変わらない。
 そしてまた名護市を訪れ、何人かの知人とおしゃべりをし、市内の飲食店で家庭的な沖縄料理に舌鼓を打ち、屋我地島の国立ハンセン病療養所の企画展を見て、ビーチで夕陽を眺め、バスセンターでお弁当を買いたい。
 そのときは名護市のみなさん、よろしくお願いします。
 
 
 


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