月別アーカイブ / 2022年11月

オレんちから 40分ほど歩くんだけど、
こじんまりした入江があるんだ。
たまに散策している人たちがいるけれど、
いつもは人っ気がなく静かなんだよ。
オレ高校3年で学校があるから日課というわけにはいかないけれど、
土日はよくこの入江の砂浜で、
1、2時間、ダンスをする。
ダンスがキレキレッで知られる某アイドルグループの真似をして、自己流の振り付けのものも交えて、砂を蹴散らして自由自在に、
あるいはメチャクチャに踊りまくる。
今は5月で、
よく晴れているときは大汗をかく。
それでも終わると爽快なのよ。
遠浅なのでヘソの上まで海水がくるところまで行って、
少し泳いで汗を流すこともある。
無論、そのときはフンドシ1丁の姿になるけどな。オレ、一応漁師の子なの。
親父からフンドシの締め方も、
小学校に入って教わっている。
砂をいっぱい弾き飛ばして踊りまくったから、
これから泳ぐかと思ったのよ。
体についた砂を洗い流してわが家へ戻ろう、
ムロアジの一夜干しでドンブリ飯の昼飯を食おうと思ってさ。
だいぶ遅めの昼食だな。
一夜干しってメッチャうまいのよ。
口の中にほんの少し砂が入っていたので、
パッとつばを飛ばした。
オレの影の胸のあたりに飛んだ。
変だな、となんとなく思ったんだ。
でも、オレの影のどこが変なのか、
それがわかるのに2秒ぐらいかかったかな。
オレの影さぁ、
オレの足と影の足はくっついてなきゃおかしいだろ。
離れてんだよ。
ただ砂浜に立っているときの影って、
この時間、そんなに遠くまで伸びていないよな。
ところが、伸びてる。
そして、その影はオレの足から離れてんだよ。
「なんだこの影は?」
なんかオレ、
頭にきたのよ。
思いっきり飛び上がった。
ところが影の野郎、
砂浜にずっとくっついて1ミリだって動いてねーのよ。
オレは怒ったね。
今度は影にジャンプして、
それのお腹あたりに着地して、
その後、ヤタラメッタラ踏みつけてやった。
影の野郎はそれでも動かねーのよ。
凸凹になったけれどまるで動いていない。
なんだかこのとき、
初めて恐怖に襲われたんだ。
オレは影から数メートル離れた。
そして、影をにらみつけた。
凄え不可解なことが起きたのよ。
影が砂をサラサラ落としながら立ち上がった。「エッ、なんだよこれって、マジかよ?」
オレは影に目を凝らした。
間違いなく後ろ姿のオレの影だった
でも、オレから独立して立っていやがる。
オレは雄叫びをあげてオレの影に突進した。
影はオレと同じように突進した。
オレが止まると止まる。
テンポの速いダンスを踊ると、
まったく同じように踊る。
オレは恐怖と好奇心が混じって悲鳴のように叫んだ。
「もう、ふざけるのはやめろ。ちゃんとオレの影に戻れ!」
オレは影に駆け寄って抱きすくめた。
そのとき、黒い影はまぶしい白い輝きを放ってオレを包んだ。
目がクラクラしてオレは倒れた。 
 とっさに、起き上がった。
そのつもりだった。
でもオレは砂浜に張り付いたように起き上がれなかった。
すぐ目の前に影が、いやオレが立っていた。
後ろ姿だった。
「こら、影のくせしてナメた真似すんな! 」
オレは叫んだが、
声は出なかった。
オレに変貌したオレの影は、
砂浜をスタスタ歩き出した。
オレは砂浜の表面をするする移動した。
いや移動させられた。
「オレは影に乗っとられてしまったんだあぁ。助けてくれ!助けてくれー!助けて… . 」
オレの声は途中でかすれた。
そして、何が起きたのかを把握できる認識力が、
すーっと消えていった。
影になってオレは全てを失った。
その一瞬後、
オレは砂浜をスタスタ歩いている自分を認識した。後ろを振り返ると、
影がしっかりと落ちてオレと行動を共にしていた。
オレは影と入れ替わって元のオレに戻れたのか、それとも、今のオレはオレを乗っ取ったオレの影なのか。
何とも言えない不可思議な、少し薄気味の悪い気持ちになった、
もうどうでもいいやと開き直った。
これでいいんだ。
本来のオレに戻ったにしろ、影の野郎に乗っ取られたオレにしろ、オレは間違いなくオレなのだ。
それで何ごとも収まるじゃないか。

「ああ、腹が減った」



どんなグループでも、
真価を発揮するには10年かかる。
デビューしたてほど、
同じ衣装で登場されるとみんな同じに見える。
なんだよ、6人兄弟かよ、7人兄弟かよ、ってツッコミを入れたくなるもんな。
一時的にぱ〜っと人気が出ても、
同じ衣装のときに瞬時に個々の違いがわからないと、
長い人気は保てない。
つまり、これは個性の強烈さの度合いの問題なんだろうね。
その度合いが薄いと、
やがて飽きられて解散も含め消えていくしかないのよ。
そういう強烈な個性は本人が秘めようとしても、
どんどん輝きとして発揮されてしまうのよ。
 SMAPがそうだったな。
1992年だったか、
「桜っ子クラブ」というテレビ番組でSMAPの人たちと初めて共演した。
衣装がそれぞれに違うとか同じとかは関係なく、
1人1人ただいるだけでも個性そのものだった。
後にオートレーサーになった森且行さんも含めてな。
それでいて6人を貫く鋼のような絆を感じたよ。
それから10年経ずしてSMAPは、
国民的人気を得ただろ。
嵐だってそうだ。
おお、分かりやすいな、
と初めて見たときに思った。
個々の個性が身長差に関係なく屹立していた。
赤ん坊の時代からこういう個性は、
はっきりしていたんじゃないか。
そう思うほどにな。
それでいて、
個性が集まって1つの大個性になるまとまりを持っていた。
それぞれに形状がが違った歯車だけど、
合わせるとピタッと噛み合うのよ。
国民的人気を得るまであっという間だった。
その可能性を、
俺はトラジャにも感じている。
同じ衣装をすると個性が際立つんだ。
大筋のラインを決めて個々が違うファッションをすると、
これがまた似合うのよ。バランスが良い。
それぞれが自分にはない他の6人の個性を認めている。
私服で1人1人バラけても、
みんな良いファッションセンスを持っているよな。
自分の個性をよく知ってるぜ。
松倉海斗くんは懐が深そうだ。
一筋縄ではいかないお坊ちゃん的なところがある。
吉澤閑也くんは優しい神経を持っている。
でも、本当の大胆さを出したらトラジャで比肩できる者はいないぞ。
そんな気配を時々感じさせる。
川島如恵留くんは、
異なる星からフラリとやってきたような感じがあるな。どこか捉えどころがない。
七五三掛龍也くんは、
ダンス以外の運動神経も抜群だってな。一途で素直っぽい人間性ではないか。
宮近海斗くんは人一倍こだわりが強そうだ。
そういうところを見たわけではないが、
人の言うことをよく聞いてもしっかり自分を失わない。
末っ子か、1人っ子に多いタイプのような気がする。
中村海人くんは、
なんとなく男女問わず年上に気に入られそうだ。
松田元太くんは色っぽいな。
レインボー髪がよく似合うと思うぜ。
でも、心の芯にダサイタマのゴツさを感じさせる。
ジャニーズ系でジャパンが入っているのは、
トラジャだけだぜ。
ジャニーズ系で初めて配信CD「JAST DANCE」を世界配信したものな。
着々と世界へ地歩を進めている。
みんな待とうぜ、
世界のトラジャを。






勝てば官軍負ければ賊軍という言葉があるが、
まさしくそういう扱いだな。
強豪ドイツ代表に逆転勝ちを演じて、
メディアはこぞって森安采配を絶賛した。
堂安律も浅野琢磨も救世主のような扱いだった。
ネットでもサポーターたちのコメントを見れば、絶賛また絶賛、
まるで日本代表を神の国から遣わされた代表のように崇めていた。
それがコスタリカ戦で1対0で惜敗するや、
評価を一変させた。
オイラから見れば惜敗だぜ惜敗! 
よく健闘したと思う。
完敗だなんて言うなよ。
最後の最後まで森安監督も、
選手たちもゲームを投げていなかった 。
果敢に闘魂を表し引き分けを狙っていた。
監督や、
選手たちの表情が無念のものになったのは、
最後の1秒が過ぎてからだったぞ。
そういう細かいところも観察しておけよ。
日本代表のサポーターなんだろ。
森安監督は慎重に己の信念を貫いていた。
先発の選手の顔ぶれを見てもわかる。
途中の選手交代で投入した選手たちを見てもわかる。
システムを3バックに変更したことも、
無論、防御の固いコスタリカ代表の乱れを呼ぶためだったはずだ。
勝負の世界は厳しいのよ。
あんなんでカウンターを決められて、などとおとしめた言い方はサポーターなら口にするなよ。
カウンターを決めたコスタリカの勇敢さを称えてやれ。
それがスポーツマンシップというものだろ。
本物のサポーターなら、
負ければ手のひら返しはしないだろ。
森安監督の作戦や、選手起用は、
根幹の部分では対ドイツ戦も対コスタリカ戦も変わっていないぞ。
コスタリカ戦終了後のコメントでも、
「失点したが、無失点で抑えて攻撃のチャンスを作り得点していく。そういう展開になった。力及ばずだった」
と、謙虚に語っている。
勝敗は時の運なのよ。
こういう場合は日本代表の健闘を讃え、
コスタリカ代表の強さを称えるべきなんだ。
それこそスポーツマンシップの心を持つサポーターじゃないのか。
きっと、サポーターの大部分はそう思い、
スペイン戦での勝利を祈っていると思う。
たまたま悔し紛れのサポーターたちが、
ネットに鬱憤を吐き出したんだろう。
でもな、心ないコメントを氾濫させたサポーターの人たちに言っておこう。
人生で手のひら返しはないぜ。
人間としてこれほど卑怯な振る舞いはないのよ。勝てば官軍負ければ賊軍的な言動も決してフェアではない。
よほど悔しかったんだな。
それはわかる。わかるよ。
その悔しさはもう捨てようじゃないか。
そして、スペイン戦では森安監督や、
選手たちを信じて最後まで心からの応援をしようじゃないか。
さすがはスペイン、
と言っていいプレーがあったら、
内心でいいから褒め称えてやろうじゃないか。
きっと、勝負の女神は、
日本代表に微笑みを見せてくれると思うぞ。


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