月別アーカイブ / 2019年10月

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しっかりと
1人1人のポーズと
視線を定めて配置している

凄まじいほどの様式美に圧倒される
しばらく眺めている間に
これはかたちではないな
と 深いため息が出た

顔に絵の具を入れ
ド派手な衣装で登場し
大見栄を切り終えたときに感じる
歌舞伎の様式美は
つまり かたちが行き着いた末の
凄みだろう

同じ土俵で比較できないことながら
ヨシダナギさんの写真に
横溢する様式美は
生を謳歌している
姿の一瞬を捉えている
いのちの輝きと叫びが
鑑賞するものの心を打つ

そして
背景には彼らの生活の
喜怒哀楽が広がっている

こんな様式美を
まだ年若い彼女がなぜ会得できたのか

これまで多くの先住民や
未開部族の写真を観てきた

その生活に立ち入り
人間関係を築いて撮る
伝統の風俗習慣の中で垣間見られる
生活の1コマや
人となりの素顔を捉える

そんな写真が多かった
それで観る者も満足した

でも
被写体側から言わせれば
お客様に撮らせてあげた写真なのだ

ヨシダナギに見られる様式美は
お客様では絶対に撮り得ない

部族に同化し
その喜怒哀楽を共有しなければ
あのようも自在に演出された
様式美は撮れるものではない

彼女は裸族であれば
自分も裸になって同化した
その本気が充分伝わった
だからこその
生命力に溢れた様式美が
写真の限界を超えて
誕生できたのである

ヨシダナギという人の情動の激しさ
飽くなき吸収力が可能にした
写真の新しい価値の創出に
惜しみなく拍手する

其れに
この人はまだみずからの
方向性が定まっていない
写真に限らず
創出のマグマを溜めている

今後
目を離せない
真摯で魔性の魅力に富んでいる




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僕が小説志望に
活路を見出そうとしたのは
28歳のときだ
初応募は29歳

小説誌や 
文芸誌に掲載されている
受賞作を読むたびに
えっ こんなんでいいの
と 拍子抜けするほどだった

こんなんならいつでも書けるな
と 思い込んだからだ

つまりは傲慢極まる思い込みだ
でも
傑作秀作を書くには
この傲慢さがないと叶わない

誤解されないよう付言すれば
この傲慢さは
人間性とは無縁のものなのだ

心の深部で眠っている才能が
刺激を受けて覚醒しかける
ときに見せる
傲慢さなのだ

すべての人それぞれに
持って生まれた資質が備わっている
それが才能というものだ
ただ その才能は
外からの刺激に反応して
勘違いして目覚めることがある

小説の編集者が
落選した応募者の作品を読み直し
受賞作品と比べた
「私の作品のほうが受賞者より
 遥かに優れている」
という指摘が当の本人からあったためだ

結果は月とスッポン以上に差があった
応募先品は下読みの人が読めば
10枚も読み進めないうちに
Cの籠「問題なく落選」に投げ込まれる
レベルのものに過ぎなかった

こういう人が
かなりの数で応募してくるのが
懸賞小説の常である
そして
この人達が懸賞小説の闇を作る
何度応募して落ちても
自分の才能を認められない人が
世の主流を形成している
と思い込み
自分の応募作品を
画期的な作品と信じて疑わない

僕も初応募のときは
この作品は世に衝撃を与えるだろう
と 頑なに信じていた

結果は2時予選通過で終わった
愕然としたが
それなら受賞できる
力量をつけていこう
と 修正 その努力に務めた

受賞まで7年かかったが
その間の努力が
僕を懸賞小説の闇に
ドップリ浸すのを防いでくれた

創作の世界においては
心の深部での傲慢は必要である
才能を引っ張る傲慢さがなければ
世に認められる作品は生まれない

そして
この傲慢さを維持できる人は
自分の作品を客観視できる
能力を秘めている

傲慢にして傲慢にあらず
言い換えれば
もっとも傲慢な状態が
創作活動には欠かせない

心の深部は厄介な矛盾に満ちている

この領域で傲慢な人ほど
実生活では謙虚な人が多い









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ねえきみ
きみもそう思うだろ?

そ-〜かなあ
人形の僕でも?

きみという人形は僕
理解できるはずだよ
人は喜怒哀楽の
感情の川に流されていくだけなんだよ
竿を挿して止めようとしても
周りを乱すだけで止めようがない

それならば
流れの任せようということ?

そうだよ
憤怒が虚しい哀しみに変わり
やがて 
それが楽しくなる

そして
喜びに行き着くっていうの?

シンプルに捉えればね

川は流れていくね
誰がなんと言おうとも

誰も竿を挿すことができないから
人の川には

僕は人形でよかった

でも
僕という人形だ
自我が生まれかけているよ

まさか!!!

本当さ
その自我が感情の川を作る

僕ので
つまり きみの?

きみので
すなわち 僕のだ

怖すぎる
僕は人形のきみでいたい
それで幸せだから

人形が言うか

無   我








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