月別アーカイブ / 2018年10月



 怒りや

 喜びは長く持続しないことが多い

 あの野郎やっぱり許せねえ

 なんて怒りを甦らせたりしても

 あのときの感激が戻ったよ

 なんて喜びを新たにしても

 ずっと怒り喜び続けたわけじゃない

 
 悲しみはそうじゃない

 心に溜めて気がつくと

 悲しみを新たにしている

 湛えて常時浸れるようにしちゃってる

 5年ぶりに会った人が

 前と同じ悲しみに彩られた

 表情を見せる

 そういう人っているだろ

 悲しみはエネルギー濃度の

 高い感情だから

 心に湛えてしまえば

 いつまでも

 その悲しみに浸れる

 だからこそ

 悲しみを乗り越えるために

 その濃度を使っていきたい

 強い意志が必要だけど

 歯を食いしばって乗り越えれば

 気づいたときには

 大きく前へ乗り出している

 悲しみは克己心に変化している

 いくつもの深い悲しみを

 乗り越えてきた人が

 人の気持ちに通暁し

 優しく寛容で人間性が豊かなのは

 克己心を大きく養ってきたからだ

 悲しみを湛えるな

 乗り越える克己心を培え

 そのために悲しめ


 

 


 見透かされる見栄は張るな

 例えば武士は食わねど高楊枝的な見栄だ

 楊枝を使うのは食後だ

 食事するカネもなく

 たらふく食べたふりをして

 高楊枝をくわえて歩いても

 腹がぐうぐう鳴っている

 これは舐められて小馬鹿にされる見栄だ

 百害あっても一利もなしだ


 3歳の女児が重い心臓病で

 ほっとけば1年後にはなくなる

 アメリカで最高水準の手術を受ければ

 命ながらえるが

 それには莫大な費用がかかる

 両親は蓄えもなく

 借金する当てもない

 そのことが新聞記事になった

 それを見た人が同情を深く催し

 粗末な家屋敷を抵当に入れて

 1000万円を作って

 ポンと寄付した

 そのことが美談として報じられた

 その人のことを知る人たちは

 質素な暮らしぶりなので

 貧乏だと思ったのに

  実はお金持ちで

 ああいうことには

 ポンと大金を出すんだ

 と感じ入った

 その人は力ある人に見込まれ

 その後 成功した

 こういう見栄は

 精一杯 気張ってやれば

 当の本人が思いもしない

 清潔な見返りがある

 実になる見栄を張れ

 

 


ありがとうの一言は

 口にするのも簡単で

 いろんなケースで使われる

 しかし

 それを発するときは

 状況によって

 かなりの温度差がある

 
 言われる側はどう受け取るか

 謝礼のあることが解っていて

 何かを手伝って終える

 
  ありがとう


 儀礼の響きがする

 でも

 感謝の心がこもっているときもある

 期待されていた以上の

 仕上がりになったのかな

 と気分がよくなる


 たまたま居合わせて

 何かを手伝い終えて

 
   ありがとう


 強い感謝の念がこもってる

 感動されたんだな

 と察せられることもある

 
 道を歩いていたら

 高齢者の男性がほどけた

 靴の紐を結ぼうとしていた

 右手の指や 甲に

 湿布薬を貼っている

 手指を痛めているようだ

 見るに見かねて

 しっかり結んでやったら


   ありがとう


  何度も何度も頭を下げられた

 深い喜びと

 恐縮した思いが

 ビンビン伝わってくる


 ありがとうを言う場合は

 いつも

 言われて自分が

 いちばん感動した

 ときのことを思い起こして

 いうことだ

 そのとき

 そのありがとうは

 鬼に金棒になって

 強く強く相手に伝わる

 その一言がいつか考えもしない

 かたちで返ってきて

 歓喜することもある

 
 小学校の分校時代
 
 帰途の通学路で
 
 天気がいい日には

 その家の門の外で
 
 いつも椅子にかけて

 ひなたぼっこをしている

 おばあちゃんがいた

 僕を見るとニコニコするので

  僕もニコニコして応えた

 ある日

 これ読みな

 と ジュニア版の小公子を渡してくれた

 帰ってすぐに読みすぐに引き込まれ

 読み終えたときは深い感動を覚えた

 その本を返したとき

 ありがとう と言ったが

 その声が上ずっていることを自覚した

 おばあちゃんの

 ひなたぼっこ姿が見られなくなった

 それからしばらくして

 そのうちの前で

 まだ若いおじさんがぼくを待っていた

 おじさんはおばあちゃんの息子で

 おばあちゃんが亡くなったことを告げた

 そして 紐で縛った小公子と

 その名作シリーズ6、7冊を僕に手渡した。

 
 〜子供の頃 

 おばあちゃんに買ってもらったものだけど

 読んでくれたらおばあちゃんも喜ぶから〜


 本当に感激したなあ

 

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