月別アーカイブ / 2018年08月


ものにならないアイデアは

抱えてちゃ駄目なんだよ

 未練があったら

 新しい斬新なアイデアは浮かばない

 どんどん水に流すことだ

 つまり

 なかったことにする

 するとね

 頭の中の流れの上流から

 ドンブラコと

 いいアイデアが流れてくる

 アイデアはそういうものなんだよ

 アイデアが入れる部分の

 頭脳の容量は意外に小さい

 アイデアの宝庫と言われている人は

 ものにならないアイデアを

 どんどん捨てて

 アイデアが入れる頭脳の部分を空けている

 優れたアイデアが欲しかったら

 ものにならないアイデアを

 未練なく捨てることだ


 昔なあ


 まだ復員兵が


 働き盛り盛りの頃のことだ


 バイト先にね


 仏のおっさんと異名をとる四十男がいてね


 バイトの世話係だった 


 話せる人で面倒見がよくて


 俺たちバイトを可愛がってくれてね


 それで仏のおっさんと言われたんだが


 のちに独立して大をなした


 俺がまだいるときに


 独立のためにやめるんで


 バイトの有志数人で


 送別会をやった


 仏のおっさんは


 気持ちだけもらうよ


 と涙ぐんで言って


 その頃のおれたちにとっちゃ


 高嶺の花もいいところの


 魚料理の店へ連れていってくれた


 初めて話すことだけど


 と前置きして戦争体験を話してくれた


 仏のおっさんがいた部隊は


 南方のジャングルで敗走を続け


 生き残ったのは10分の1以下だったそうだ


 仏のおっさんが所属していた小隊に限れば


 生き残ったのは仏のおっさんを入れて


 たった2人だった


 殆どが戦病死で


 そのうちの半ばは飢餓死だったってよ


 仏のおっさんは行き倒れた看護兵から


 包帯を託されたそうだ


 薬はもう何もないからってね


 敗走中に負傷した戦友は


 力尽きてバタバタ倒れていく


 仏のおっさんは


 もう助からないと思っても


 包帯を巻いてやったんだな


 そのとき


 ダラダラ流れる血を


 舌でぺろぺろ舐めてやった


 それから包帯を巻いた


 仏のおっさんは


 お父さんから


 スッポンの生き血や


 コイの生き血は精が付くぞ


 と聞かされていたんだよ


 戦友の生き血を舐めることで


 餓死を免れたんだそうだ


「おまえら 人生では飢狼になんなきや

 生き残れないときもあるぞ

 俺のように生き血を吸えとは言わないが

 何が何でも生き残れ

 でも 人間性を失くすなよ

 流れる血をぺろぺろ舐めたのは

 死んだ戦友の肉を食らうのとは

 違うだろうが」


 そのときの仏のおっさんが


 俺には鬼に見えたね。

 




 


 



 

 物心ついてこのかた

 素直に生きてこれたのかな

 と振り返ったら

 78年のうち

 70年は素直でなかった

 後の8年のうち半分の4年は

どうにか素直でやれたかなあ

 と

 残りの4年は

 生まれてから物心がつくまでだから

 とても素直だったと思うよ

 素直に生きるのは

 とてつもなく難しいなあ

 だから

 素直がいちばんなんだ

 今日もこれまでは素直でなかった

 せめて 

 これから寝るまでは素直に過ごしたい


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