月別アーカイブ / 2017年05月


奇跡

という言葉には

まやかしのイメージがこもる

うさんくさい人が偽りの奇跡を演じ

多くの人の心を迷わし

占いや

宗教の装いをして

己の欲を満たす手段にしている

こういうまやかしの奇跡はどうでもいい


僕にとって奇跡は

誠心からの願いの帰結

という究極の希望を表している

18歳のとき

結核や

肺がんという疾患とは違う

肺疾患にかかった

このままでは

20歳までは持たないだろう

と主治医は両親に言った

僕には患部を除去する

肺切除術をすすめた

その手術により

予後がどうなるか

18歳の僕を納得させる

明確な説明は得られなかった

両肺に広がる患部を切除すれば

肺機能は2分の1になる

それでどれだけ自在な人生を送れるのか

主治医にその視点はなかった

僕ははっきり拒絶した

医療も自分の意思で断った

痰を日にどんぶり2杯も吐く僕に

両親は僕の死を覚悟した


僕は別の覚悟を行った

どうせ20歳までなら

精一杯体をいじめてやろう

高校2年から始めていた

喫煙の量を増やし

縄のれんで合成酒を飲みまくり

自動車部品工場で

20キロ30キロの部品が入った

油くさい木箱を手で運ぶという

重労働のアルバイトを行った

自棄的になっていたのではない

人間の体はいじめることで出てくる

真の生命力があるのではないか

という思いがあったのである

それは切なる願いであった

それと1つ

僕には不確実ながら

自分の体が持っている

未知の力に対する根拠があった


僕はおくてで虚弱体質で

高校1年で154センチしかなかった

ところが

高校2年の2学期からぐんぐん伸び始めて

肺疾患を指摘された18歳時は

浪人中だったが

168センチだった

この生命力に僕は賭けた

奇跡を信じたのだ

翌年 大学に入ってからも

背は伸び続けて

大学3年時には178センチになっていた

僕にとって奇跡は起きて

肺疾患は病勢を衰えさせ

症状は固定してしまった


オランダの15歳の少女は

重症の脳腫瘍で

少女の意思で薬物等の治療も断った

つまり

従容として死を迎える覚悟を決めた

ということである

少女はお見舞いのカードをもらえたら

とメディアを通して訴えた

オランダ全土から海外から

3万3000通を超える

お見舞いのメッセージカードが届き

それは現在も続々と届いているという

少女は切なる願いを込めて

訴えたに違いない

18歳時の僕が罹った疾病より

はるかに重い疾病である

でも

少女は覚悟の意思を揺らがせることなく

数万通の励ましに奇跡を信じている

と僕は確信する


その奇跡は起きるべくして起きてほしい






























今日は駄目でした

明日頑張ります

 
 過去に いろんな人から

 そんな言い方を何度も聞いたなあ

 自分もそんな言い方を

 何度かしたかもしれない

 
 飛び込みの

 訪問販売の仕事でね

 何か裏目裏目に出てるときは

 駄目だな 今日は

 と勝手に仕事終いにして

 明日頑張ろう

 と自分に言い訳して

 帰社時間まで

 喫茶店や 

 パチンコ屋で時間を潰した

 翌日も駄目なんだよな

 翌々日も駄目だったさ

 裏目が続いても

 腐っちゃ駄目なんだ

 腐ったら明日はないんだよ

 成果が出なくても腐らずやろう

 本番で自分を鍛錬しているんだ

 お客様の胸を借りて

 販売術を磨いているんだ

 今日は今日できちっと終わろう

 それが明日につながるんだ

 いい意味で開き直ったのかな

 ここで今日は終えよう

 と決めて飛び込んだところで

 契約が取れた

 翌日は格段の好成績だった

 
 明日のために今日を投げない

 これだな

 人生にも言えるぞ

 
 今でもやることなすことが

 うまくいかない日は

 上の3行を呪文のように唱えている

 


 


 1945年8月

 終戦日の15日を過ぎて

 約1週間後

 15歳年長の兄が旧満州で戦死した

 終戦を知らずして

 荒野でソ連軍と遭遇して

 戦車砲の餌食になったという


 きょうだいでは一回りと9ヶ月年長の長姉と

 8歳年長の次姉と

 末っ子の僕が残された

 1950年冬

 長姉が嫁いだ

 都下小金井町の旧国鉄官舎で

 戦死した兄が勉強部屋にしていた

 3畳間は官舎の道に面して窓があって

 その窓には木の格子がはめられていて

 小学5年の僕はその格子越しに

 角かくしの花嫁姿になった長姉が

 約6キロ離れた

 天満宮の式場に向かうため

 黒塗りの車に乗り込むところを

 1人見送っていた

 
 その数ヶ月前

 3畳間にいた僕は

 窓の外から格子越しに

 僕の名を呼ぶ声を聞いて

 顔を向けた

 長姉の婚約者だった

 格子越しに文庫本が差し入れられた

 手に取ると

 ジュニア版のガリバー旅行記だった

 絵本のガリバー旅行記が大好きだった

 僕はジュニア版のそれを繰り返し読んだ

 小人国だけじゃなく

 巨人国に漂流したガリバーの冒険に

 胸を躍らせた

 絵本にはないお話だった

 3畳間の格子越しに

 僕は自分もいつか子供ではなくなるんだ

 ということを思い知らされた


 長姉は家事で忙しい母に代わって

 僕をおんぶして子守をした

 あるとき

長姉は 僕を取り落とし

 僕は頭を石畳にぶつけた

 そのせいで変な子になった

 と生涯気にしていたらしい


 姉ちゃん

 変な子でも

 ちゃんとやっていけてるよ

 安心して休んでね


 

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