月別アーカイブ / 2017年03月


 昔なあ


 まだ復員兵が


 働き盛り盛りの頃のことだ


 バイト先によ


 仏のおっさんと異名をとる四十男がいてね


 バイトの世話係だった 


 話せる人で面倒見がよくて


 俺たちバイトを可愛がってくれてね


 それで仏のおっさんと言われたんだが


 のちに独立して大をなした


 俺がまだいるときに


 独立のためにやめるんで


 バイトの有志数人で


 送別会をやった


 仏のおっさんは


 気持ちだけもらうよ


 と涙ぐんで言って


 その頃の俺たちにとっちゃ


 高嶺の花もいいところの


 魚料理の店へ連れていってくれた


 初めて話すことだけど


 と前置きして戦争体験を話してくれた


 仏のおっさんがいた部隊は


 南方のジャングルで敗走を続け


 生き残ったのは10分の1以下だったそうだ


 仏のおっさんが所属していた小隊に限れば


 生き残ったのは仏のおっさんを入れて


 たった2人だった


 殆どが戦病死で


 そのうちの半ばは飢餓死だったってよ


 仏のおっさんは行き倒れた看護兵から


 包帯を託されたそうだ


 薬はもう何もないからってね


 敗走中に負傷した戦友は


 力尽きてバタバタ倒れていく


 仏のおっさんは


 もう助からないと思っても


 包帯を巻いてやったんだな


 そのとき


 ダラダラ流れる血を


 舌でぺろぺろ舐めてやった


 それから包帯を巻いた


 仏のおっさんはよ


 お父さんから


 スッポンの生き血や


 コイの生き血は精が付くぞ


 と聞かされていたんだよ


 戦友の生き血を舐めることで


 餓死を免れたんだそうだ


「おまえら 人生では飢狼になんなきや

 生き残れないときもあるぞ

 俺のように生き血を吸えとは言わないが

 何が何でも生き残れ

 でも 人間性を失くすなよ

 流れる血をぺろぺろ舐めたのは

 死んだ戦友の肉を食らうのとは

 違うだろうが」


 そのときの仏のおっさんが


 俺には鬼に見えたね。

 




 


 


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我が家の裏庭の桜は
もう10日も前に咲いた
 6、7年前に友人に貰った苗を植えたら
 幹は僕の二の腕ほどの太さになり
 おととしあたりから咲きはじめ
 しっかりサクランボも実らせた

 真っ白い桜はだが
 なんという種類なのか
 1週間前の朝
 1人で花見を行った
 ハチが飛んできて
 僕の周りを2回飛び
 おれの桜だぞ
 と威嚇を行った
 僕は1歩下がり
 彼に敬意を表した
 桜を見るだけの僕
 生きるために
 桜と接するハチ
 意気込みが違うんだよな


 男だろ

 女だろ

 人間だろ

 限度があるんだ 人間にゃな

 ここで黙っていたら舐められる

 そんなときゃ開き直れ

 ケツをまくるんだよ

 人間だろ

 忍耐ってのはね

 舐められない状況だったらいいんだ

 でも ここで黙ってたら

 おしまいだってことがある

 そのときゃ

 ケツをまくれ

 本気で怒れ

 あいつは下手するとヤバイ

 それを植えつけろ

 怖れさせて信頼させる

 手応えある人生になるぞ

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