なぜ殺意を抱いたのかは
関係ないよ
いったん帰宅して
どうにも収まりがつかなくて
やってやるって飛び出したというんだ
交通事故の現場に遭遇して
救急車なんかがきて
小さな戦場みたいになって
見ているうちに
殺意が萎えたというんだよ
でも
あいつに対する悔しさと
憎しみが消えたわけじゃない
あえて あいつに背を向けて
まっすぐ見たら何もない
街はあったよ
やってやろうというものは
見えなかった
それで
ならば何も見えないほうで
あいつをやるんじゃなくて
自分の力を出して
やってやろうと
あいつの鼻を明かすために
それから20年
80人の従業員を抱えて
頑張っている
あいつはどこで何をしてるか
あのとき
交通事故を目撃しなかったら
殺人犯だったかなあ。
そういう人もいるんだよ