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 余ノ悪筆ヲ笑フ者ノ所ニハ化ケテ出ルゾ

                 ヒュードロドロ

 

 これは実在する遺書の末尾の文章です。

 誰の遺書だと思いますか?

 と訊くまでもないでしょう。

 この遺書が所載されている

 本の写真を出していますから。

 2.26事件で銃殺刑に処された

 青年将校の1人

 丹生誠忠(にぶまさただ)の遺書です。

 昭和11年7月12日没 27歳でした。

 この書は20年以上も前

 執筆中の小説の資料の1冊として

 購入しました。

 おそらく厳粛な顔をして

 読み進んだと思いますが、

 唯一 この人の遺書の末尾にきて

 声をあげて笑うはめになりました。

 
 時ニ利非ズ、遂ニ獄ニ投ゼラレル


 他の青年将校の多くもそうでしたが

 この人も無念の思いは強かったのですが

 従容として刑場の露になりました。

 末尾の子供のような

 茶目っ気に満ちた文章に

 潔さと

 救国の企てだったという

 自負が覗けて涙を誘われます。

何気なくこの書を抜きとり

 無造作に開いたページが

 この人の遺書のページでした。

 前年に華燭の典を挙げたばかりでしたが

 この人の妻は22歳で未亡人になり

 再婚はしませんでした。

 存命なら100歳を1つ2つ超えています。

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罪って言っても

 それは犯罪じゃないだろ。

 いや

 正しくは犯罪だね。

 クラスの女子がとても大事にしていた

 黒い毛皮の手袋を

 きみはこっそり切り裂いたんだから

 商社マンのお父さんが

 カナダの駐在先で

 お土産に買ってきてくれた

 ものだってね。

 黒いリスの毛皮の手袋で

 とても珍しいものらしいじゃないか。

 その子は泣いて泣いて

 次の日から

 何日も学校を休んだ。

 深い傷を負ったんだね。

 きみは反省もせず

 ザマアミロと思ったんだ。

 よほど

 その子の境遇に嫉妬していたのかな。

 
 それから20年近く経って

 結婚して

 きみも3歳の女児の

 お父さんになった。

 可愛い盛りだろ。

 今になって

 クラスの女の子に意地悪したことの

罪深さを思い知ったということだね。

いいんだよ

 もう呵責は関係ない。

 その代わり

 そのことを一生忘れなさんな。

 自分のやっていることが

 誰かを苦しめていないか

 と思ったときに

 その子の深い悲しみを想おうよ。

 きっと きみは

 情に熱い人間だと言われるようになる。

 

 


 みんな解ってるんだよ

 でも

 気がついたら否定している

 だけどね

 それでいいんだよ

 自分を否定したいところなんて

 誰にもいくらでもある

 否定してはいけないなんて

 先入観があるから

 否定しては悔やんでいる

 それでまた

 自分は駄目だ駄目だって否定する

 それなんだよ いけないのは

 どんどん否定すりゃいいいの

 たいしていいもの持ってないやつが

 偉そうに俺っていいだろ

 って自慢してる

 馬鹿みたいだろ

 そんなんより否定だよ

 自分を否定して否定して否定して

 これでもかって否定して否定して

 否定の否の

 万分の1も出なくなってごらん

 サバサバして

 とても清々しいぞ

 後は認めるっしかないじゃないか






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