月別アーカイブ / 2016年09月


 


 少し濡れたね

 これから土砂降りになりそう

 強く握りしめた傘を

 差さないで飛び込んできたけれど

 帰りは差さなきゃ

 きみがどこの誰かは知らない

 たまたま僕がいたカフェに

 きみは飛び込んできた

 ただそれだけのことだもの


 でも  解る

 きみはすぐそこの地下鉄の出口で

 人待ち顏だった

 少し表情を歪めて

 待たされていたんだね

 過去にもあっただろう

 遅れてきた彼と短い口喧嘩をした

 どうしたの 前にもあったわね

 そのきみの詰問に

 彼は黙っていた

 もう会わないわ  サヨナラ

 きみは背中を向けて

 走ってここへ飛び込んだ

 きみはこの街の子じゃないだろ

 本当にサヨナラするつもりなら

 エスカレーターを降りて

 改札に向かう

 本当に振ったのなら

 背筋を伸ばし背中に

 決然としたものを滲ませて

 未練を断ち切るように

 降りていく


 きみの今の表情は

 悲しそうだもの

 好きなんだね 彼のこと

 濡れた髪が乱れてる

 雨の日は心にもないことを発し

 すぐに悔やんで

 悶々と悩みがちなんだ

 彼が遅れた事情は

 きみに言いたくないんだと思う

 きみが心配するから

 
 出がけにお母さんに

 何か言われたのかな

 きみのことで


 きみには死角になってるけど

 今 街路樹の陰に彼が現れ

 きみのほうを見てるよ

 傘を持たずに髪や肩は

 ずぶ濡れだよ

 早く気づいて迎えに出なきゃ

 無言のお節介は

 もうやめるから

  ゆっくり話しあいなよ


 

 

    
   


   朝方まで踊りたい人には

 悪法だけれど

 若いときから

 24:就寝 06:00起床が

 基本的パターンだった僕には

  良法かなあ

 
 以前 それでも入口の明かりを消して
 
 フロアではたくさんの人影が揺れている

 クラブに何度か行ったことがある

 朝方近くまで踊って帰っても

 そのまま起き続けて仕事をして

 その夜は早めに寝る
 
 そのほうが体のリズムは崩れない


 ゴーゴーホールと呼ばれた時代から

 あちこち行ったぞ

 新宿の夢幻MUGENなんか懐かしいなあ

 それがディスコティック クラブになって

 マハラジャが全盛のころは

 借り切って100冊出版記念パーティー

 をやった

 大箱が全盛になって

 トゥーリアに何度か通って

 明日も行こうなんて思って

 その次の日の夜に

 高い天井から大シャンデリアが落下して

 7,8人の死傷者が出たんだよね

 その夜は編集者と痛飲して

 踊りに行くのがめんどくさくなったんだ


 大箱全盛時代の牽引車は

 ジュリアナだろうね

 お立ち台に男が上がると

 店のスタッフに引きずりおろされたけど

 なぜか僕だけは許された

 ある夜

 ボディコン嬢に囲まれて

 お立ち台でセンスを振って

 踊っていると

 「パパ!」

 と声をかけられた

 まだ高校生の次男だった

 「きみか。こんなとこで何やってんだ?」

 叫んだら叫び返された

 「パパこそ何やってんだよ!」


 ジュリアナがなくなってからかなあ

 大箱が廃れて

 こじんまりしたクラブが多くなった

 踊りながらケータイ画面に

 見入ってる連中が目立った

 クラブで踊るときぐらい

 ケータイはしまえよな

 と言いたかった


 その頃を最後に

 クラブには行かなくなった


 でも ここ2,3年大箱のクラブが目立ちだした

 それで 久々に僕もELE TOKYOを覗いて

 踊ったよ

 去年のことだった

 今年は冬に新木場ageHaに行ったかなあ

 でも ゴルラップのライブ出演のためだった

 午前3時過ぎが出番だったけど

  風営法に関係ないライブイベントだろ

 終わってそのまま

 新宿の図書館の講演に駆けつけて

 事務所に戻り

 原稿書きや ブログの更新をして

 その夜は早めに寝た


 時代は変わったなあ

 ジュリアナでばったりの次男は市会議員だし

 今の若い人たちは朝まで踊れる

 青春を謳歌してくれ

 踊りまくったんだから

 まっいいか

 って悔やむことがないようにさ

 だけど

 スマホはしまえよな

 そんなものが世の中にあるのを

 忘れるぐらい

 無我夢中になれ

 それが青春だ

 

 

 

 


 R子さんは女子大生

 高校時代に味わった苦しみから

 ようやく解き放された

 と話した


 高2のとき

 3代続いた家業が破綻した

 室内装飾業を兼ねた家具屋さんだった

 JR沿線の駅前商店街にあったが

 幹線道路に量販店が進出し

 徐々に売れ行き不振に陥った

 お父さんは高級家具を仕入れての

 外商による起死回生策をとった


 しかし それが裏目に出て

 万事休した


 取引銀行から融資を断られ

 民間の金融業から融資を受けたので

 その取り立ては厳しく

 朝から2,3人で連日押しかけてきた

 彼らは自分たちにとっての正論を

 冷静に粘り強く繰り返した

 その執拗さにたまりかねて

 応対していたお父さんとお母さんは

 悲鳴のように怒鳴った


 受験勉強をしていた

 R子さんも玄関に飛び出し

 「貴方方は私たち一家の人権を侵すんですか!」
 
 と 叫んだ


 女子高生の出現に

 彼らは当惑し姿を消した

 しかし 翌日もR子さんが登校してほどなく

 姿を現した

 R子さんが学校から帰ると

 そそくさと姿を消した

 
 そんな日の連続で

 両親は憔悴しきった

 R子さんもストレスで偏頭痛が起き

 目がかすみ視界がぼんやりしたという

 「両親は根負けしたんですね
  あの人たちの言う通りに資産を処分して
  全額を返済したんです」


 しかし まともな債権者たちがいたわけで

 債権者会議によって

 債権額の5分の1程度の回収で

 収まりがついた

 「あのとき 向こうの手の内に乗って
  キャアキャアわあわあ騒ぎ立てず
  向こうより冷静にのらりくらりと応対していたら
  債権者会議がイニシアティブを握れた
  かもしれません」

 自宅も手放さなければならなかったが

 債権者の多くは長い取引先で

 R子さん一家が路頭に迷うことがないよう

 手を打ってくれたという


 R子さんの言にもあったように

 相手の手の内に乗らず

 のらりくらりとかわせたら最善だった

 地獄の苦しみを舐めずにですんだ

 
 苦しみを迎え撃っては駄目なのである

 苦しみは台風のようなもので

 いちばん烈しいときに迎え撃たなければ

 しだいに収まる

 烈しいときに迎え撃てば

 待ってましたとばかりに

 心になだれ込んできて荒れ狂うう


 激しいときはまともに襲われないようかわす

 R子さん一家を例にとって言えば

 取り立て側以上に冷静に

 我慢強く頭を下げ続ければいい

 向こうはそうされると打つ手がない

 一言半句でも脅しの言葉を発すれば

 今は警察が手ぐすね引いて

 それを待っている


 人生にはいろいろな苦しみがあるが

 いちばんきつい状態のときに

 どうにでもなれと開き直ると

 かわすことになる

 
 心が苦しむのではなく

 苦しみの素が飛び込んできて

 心を苦しめるのである

 苦しみは心の敵

 迎え撃たず

 かわして

 心を甚大な被害から

 守ることである
  

 

 

 

 

 

 

  

↑このページのトップへ