ジャニーズ系で、

本当の意味で国民的アイドルグループになったのは、

SMAPを置いて他にないと思う。

SMAPが「世界に一つだけの花」を歌ったときに、

それを聴いた人たちが高まる情感を抑えて、

あるいはしんみりと声を合わせて口ずさむ。

そのとき、老若男女を問わない一体感が生まれる。

僕はそんな光景を2、3度目撃した。

す~っと耳に入ってきて心の琴線に触れるんだろう。

それで声を合わせて口ずさみたくなる。

高度の技術を要する合唱グループが

「世界に一つだけの花」を歌ったら普通に感動を呼ぶだろう。

しかし、

SMAPがこの楽曲を歌っているときのような、

何かとても貴いものを共有しているという

甘美な意識に充たされることはないと思う。

それで知らず声を合わせて口ずさむように歌う。

それがSMAPの他にない力であって、

SMAPのすべてだったろう。


SMAPから稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が離れて

「新しい地図」を立ち上げてだいぶ年月を重ねた。

新しい地図の3人は荒野に道を拓くような苦労を味わった。

でも、映画や、舞台や、イベントに活路を見出し、

荒野に新規の道を延ばしていった。

その3人の背中を押す結果になったのは、

公正取引委員会がジャニーズ事務所に対し

独占禁止法違反の疑いがあると注意を行ったことだった。

以来、徐々に3人は地上波テレビに復帰し、

今ではドラマに、バラエティーに、CMに登場、

共演することもよくあるようになった。

満を持してのことだったのか、

バラエティー番組の司会では安定した人気を誇る中居正広が独立し、

唯一残った木村拓哉もテレビの連ドラや、

映画で気を吐き続けている。

要するに元SMAPは、

いや、元とか旧とかはSMAPには似合わない。

SMAPは目には見えなくても、

超デッカい一枚岩として存在している。

目には映らなくても、

今でもとうとうと流れている大河と言っていい。

この大河の流れの中で、

存在をひときわ大きくしているのは草なぎ剛だろう。

大河「青天を衝け」ではまったく新しい徳川慶喜像を作り上げた。

戦争シリーズ3作目のカンテレ・フジ系「罠の戦争」では、

好演、快演、怪演、猛演、冷酷演などをほしいままにしている。

SMAPに衝撃的な波紋を起こすキーマンになるかもしれない。


もう1度言う。


SMAPという大河は今もとうとうと流れている。




(敬称略)