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長いものには卷かれろ

は日本人の意識に染みついた処世術だ


昔から島国の日本人には

そういう意識が醸成されていた

専制君主のような権力者に逆らったら

逃げようにも逃げ場がない


ヨーロッパではどんな時代も

どこかで大乱が起これば

国境を越えて逃げることができた

国境を幾つも越えた地で

亡命王室(政権)のようなかたちで

本国では打倒された王室を存続させることも可能だった


島国の日本では

いつの時代もそういうものはできなかった

豊臣秀頼が中国に逃れて

亡命政権を作るようなことは

島国意識の日本人には想像すらできなかった


せいぜい

中央政権の支配が及ばない

地の支配者に庇護を求めるぐらいだった


源義経が奥州の藤原秀衡の庇護を受けたのは

その典型的ケースだ

秀衡の死後

後継の泰衡は秀衡の遺言に背いて

鎌倉の源頼朝の恫喝に屈し

義経を討って その首を鎌倉に送った


そのお礼は鎌倉政権が総力を挙げての奥州征伐で

藤原氏は泰衡の代で滅んだ


島国日本人は長いものには巻かれる

我慢を自らに強いたので判官贔屓である


判官贔屓は悪役を兄頼朝に仕立てることで成立する

弟の弱者である義経は平氏を倒した立役者で

正しいのに兄頼朝にいじめ抜かれる


こういう例は古代からあった

苛められる側は

本来

権力を掌握した側にとって邪魔な異分子で

権力の基盤を強くするために排除されるに過ぎない


でも

傍観者で長いものに巻かれるしかない庶民は

せめてものストレスの解消に

弱者に正義を与えて贔屓にするのである


そこに島国の日本独特の勧善懲悪思想が涵養される

正義の弱者は悪の強者に追い詰められながらも

いつかは悪の強者に打ち勝つ


悪は必ず滅びるという前提に立って

勧善懲悪思想は成立する


しかし

権力の歴史はいつの時代も

勝てば官軍だった


泰衡に討たれた正義の義経を

判官贔屓の人々は受け入れられなかった

討たれたのは影武者で本物の義経は北へ逃れた


北海道を経て大陸に渡り

モンゴル高原で水を得た魚のように大活躍して

多くの部族に分かれて覇を競っていた

モンゴル民族をまとめあげて

強力な国を樹立する


義経=チンギスハーン説で

ここまでくると日本史上最大の貴種流離譚

というしかない


少し道草を食った

「鬼滅の刃」には

一貫して勧善懲悪思想が流れており

どんなに鬼殺隊が上弦の鬼達に攻め込まれても

けして滅ぶことはない


読者はそのことが解っているので

ハラハラしながらも

最後は炭治郎が 鬼殺隊が勝つ

という前提が頭にあるので

最終巻で味わうカタルシスを楽しみに読み進める


さて

ただ今現在の社会で長いもの

つまり 鬼は何だろう?


新型コロナウイルスにつきる

このウイルスの凶暴さ理不尽さ鬱陶しさについては

改めてこここには書かない


感染しなくても日常性価値が圧迫されて

誰もがその被害者であり

読者は鬼殺隊にコロナ退治を重ねて読んでいる



「鬼滅の刃」では

柱でも上弦の鬼でも

その死に際に自分が生まれ育った家庭を

環境を回顧させている

なぜ鬼狩りの道を選んだのか

また 鬼にならなければならなかったのか

そのことは避けられぬ宿命でもあったが

どれもこれもお涙頂戴もので泣かせるのである


血を分けたきょうだいで

鬼狩りと鬼に分かれるケースも複数あって

読者の心の琴線を強く弾く


語るも涙聞くも涙で

判官贔屓の涙腺を緩ませる仕組みになっている

だから

読者は討たれた鬼の生い立ちに同情さえして

涙を誘われる

この時点にきて鬼さえ赦しているのである



更に

このシリーズでは

炭治郎を含む柱と上弦の鬼との

闘い最中の会話が聞きどころになっていることが多い


鬼ださえ含蓄のあることを言うのだ

ネタバレになるのでセリフは言えないが

柱のセリフには読者を啓発させるものが少なくない



以上の述べた理由から

このシリーズは勧善懲悪に徹し

判官贔屓の日本人が好む要素をたっぷり内包して

コロな禍というTPOを得て

大当たりして当たり前の作品と断定できる