大きな箱で賑わっている
居酒屋に顔を出せなくなって
1年半以上になる

関節リウマチで
車椅子ユーザーになったためだ

関節リウマチは
抗リウマチ剤や
生物学的製剤を
使っても使わなくても
免疫が落ちる病気である

コロナ禍にならなくても
各種の感染症にかかりやすいので
人混みへの外出は要注意で
マスクが不可欠だ

以前は
真夏でマスクをかけている人を見ると
あの人はなぜマスクをしているのか
と 訝った

だが
今ならすぐに解る
関節リウマチの人も含めて
多分
膠原病の人が多いだろう と

もっとも
今は国民総マスク社会で
見分けもクソもなくなった

1昨年のことかな
若い人と居酒屋に入ったら
ああ 懐かしや
イッキ イッキ の掛け声と
手拍子が聞こえるではないか

見ると
開放型の座敷の間で
50歳前後の中年男達が
一気飲みで盛り上がっている

年齢がほぼ揃っていて
体格もがっちりが多かったので
どこかの大学の体育系部活の
同窓会だったのだろう

テーブル席の客達は
あっけにとられて見ている
若い女性グループもいたし
今にも自分達で始めたそうな
高年齢の男性グループもいたが
多くは眉をひそめて見ていた

延々と続けられたら困る
と 思ったのか
店主らしき人が止めに行き
一気飲みは収まった

僕は連れのそろそろ
30歳に手が届きそうな彼に
「今の、どう思う?」
と 訪ねた
「心の底でぐずっていたものを
 痛快に吐き出していましたね」
僕は大きく頷いた

もの書き志望だけに
観察力は確かだ
と 感心したのだ
「彼らは感情の層が厚い。
その層をかいくぐらせて発散させた。
 感情を迸らせていたんだ」
よくも悪くも
彼らは最後期の昭和の申し子達だ
成り行きを抑えられず
一気飲みを始めた
そして
感情を迸らせた
あの陶酔感は
今の若い人達にはなかなか味わえない

「他のお客様方にご迷惑がかかるので
 やめてください、という店の人の一言で
 ピタッとやめただろう」
「1人も異をう唱えなかったですね」
「あれが昭和の倫理観だよ」

彼のような若い人達は
昭和の人達のテンポの遅さに
違和感を持つことが多い

ネットによる調べでは
物足りなくなった彼の仲間が
図書館へ行った
前の人が館員にあれこれ訊いて
本を選んで貰っていた
数冊借りるのに
20分もかけていた
と 憤って彼に語った
その彼の仲間はネットで
その図書館にあって
借り出したい本の書名を
調べていたので
メモを渡すだけですんだ
5冊の本があっという間に
カウンターに積み上げられたという

昭和を知らない世代は
生まれながらにネットに馴染み
縦横に駆使している
ネットは生身の人間の感情を伝えない
その人間の体温を感じとれない

ただ
自分の感情はネット相手に出している
表情をあまり変えずに
喜怒哀楽を出している
そのテンポが早いので
感情の緩衝層が醸成されずに
薄くなっている

瞬間湯沸かし的に
喜怒哀楽を見せるのに
はたから見ると定かに見てとれない

ちょっとしたことに傷つくのである
深く傷つくのに
周りからはそんなに深刻には見えない

腹もすぐに立てて
誹謗中傷もササッとやってしまう
大事に至っても
自分だと解らなければいい
と 我が心の倫理観の薄さに気づかない

しかし
この感情と倫理観の薄さでは
本当にキレたときの暴走が怖い
キレやすいということである

それもこれも
今の時代の背景が
過ぎ去った時代と大きく異なる
という問題があるので
一概に
いいとか悪いとかでは片付けられない

次代を担う人達が
新しい感情の出し方
新しい倫理観を
どのように養っていくか

そのことに尽きるだろう