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あの強烈な打球に
何がこもっているのだろう
対戦相手は見送るしかない

黒い体が跳躍し
豊かな後ろ髪をなびかせ
ラケットが風を切り裂いて球を捉える

その打球は低空を滑る
火球の子のようだ

そのときの
大坂なおみの瞳を見たか

爛々と獲物を狙う
肉食獣の瞳ではないぞ

深い瞳の底から
沸きあがる不条理なことへの
怒りや 悲しみを抑えて
彼女が持つ
本来の優しさがキラキラと躍っている

妥協しない優しさだ

おそらく
打球にこもるものも
その優しさだ

2018年秋
彼女は全米オープンで
準決勝を制し
子供のときから目標として
敬愛してやまない
全米オープンの女王
セリーナ・ウイリアムズと
決勝で相見えることになった

その抱負を訊かれての言葉
「私はセリーナを愛している」

この言葉を知ったときから
当時78歳の僕は
彼女に恋い焦がれるようになった

あの打球には
愛の素粒子が詰まっている
いつか
僕のハートで
あの打球を受け止めてみたい

彼女が数々の大会で発する
短いスピーチには
含蓄が束になってこもっている
ここでいちいち紹介している
余裕はないが
興味ある人は探して読んでほしい

今のアメリカは
人種差罰の波に揺れている

その波をさらに波浪にする
事件が起きた

大坂選手は出場中の
ウエスタン・アンド・サザン・オープンの
準決勝をボイコットした

関係者の説得で撤回したが
ボイコットを決意したときの
言葉が凄い

「私はアスリートである前に、
  1人の女性の黒人です」

何と勇気ある言葉だろう
何と1人の人間として
愛に充ちた言葉だろう

このような日本人アスリートが
存在することに
恋い焦がれている感情を脇に置いて
1日本人として大いに誇りたい