やることがハンパなくて謙虚だよ
1千万円の寄付に加えて
必要がなくなった
マスクを寄付だもの

これで背中を押される人は
はかり知れねえぜ


1990年代半ばかな

1か月に1回90分ぶっ通しの授業という約束で

某フリースクールの特別講師をやった


教えたのは20人近くのクラスだったよ


最初の授業で

1人心を開かないやつがいて

ずっとうつむくか

そっぽを向いていた


翌月

教室がある階段を上がっていたら

そいつが2段ずつで上がってきて

僕を追い抜いていった


素敵なピアスをしていたのよ

本物のプラチナだったかはともかく

三連星で渦紋が施されていてさ


「かっこいいな、そのピアス」

声を掛けたら

彼は一瞬振り向いて

口の端だけで笑った


少し心を開いてくれたか

と思ったけれど甘かったぜ


彼はうつむくか

そっぽを向いて

窓の外を見るだけだった


凍ったような表情でな


更にその翌月の授業は

情操教育ということで

カラオケの大部屋を借り切っての

カラオケだった


密室 密集 密着もいいところよ


みんな

これで授業かって顔してやがんの


ブルーハーツでも歌って盛り上げるか

と思ったけれど

心を開かねえ奴が

初めて僕を真っ直ぐ見てたんだよ


「おい、きみからやるか、GLAY でもどうだ?」

その年

人気急上昇中だったGLAY の名を出したら

奴は目を光らせたんだよ

すっげえ反応だった


そうして

彼は「RAIN」を歌いだした


♪ 歌だけを心に抱きしめて


謡いだしは目を閉じてな

表情がみるみるうちに緩んでいった


英語の歌詞に入ると

目を開けてさ

恍惚そのものになったぜ


青っ白い顔色が

ズンズン紅潮していった


「よかったよ」

「もう1曲いっていいっすか?」


マイクを離さねえんだ


結局

「真夏の扉」「Freeze My Love」って歌って

もう1曲何か歌ったかなあ


彼が心を開いたのはそれからだよ


1年間という約束だったから

翌年の夏で

僕の授業は終わったけど

心を開いた彼の話で

彼が不登校になった経緯を知った


彼は両親が教育者

成績もよくて両親の期待が大きかった

高校に入って

進路のことで両親と衝突した


学校でいじめを受けて不登校になった

お父さんは初めて彼を殴った


彼は逆切れしてお父さんに暴行を働いて

家庭内暴力が始まった


そんな彼が引きこもった自室内で

GLAY と出会った


しだいに

彼の心を潮が引くように

GLAY の楽曲が穏やかにしていった


家庭内暴力をやめ自分の意志で

フリースクールに入学した


「絶望ってあんなんかな。昼間だってただ闇なんだよ。

 明るい闇なんだ。そんなとき、GLAY と出会えたんだよ」


曲も歌詞もそうだろうが

GLAY というロックバンドにかかると

分厚い闇の中に閉じ込められた感じでも


出てきなよ

ゆっくりでいいからさ

出てくりゃ解るよ


と 少しずつ引き出されていく

働きが生まれるんじゃないか


本質的に温かいんだよ

仲間なんだよ