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どっこいしょ

意外に明るい声なんだよ

楕円形のものは
グニョグニョした感触で
進む方向へ
その身をくねらすんだ

どっこいしょ

タラコのような色かなあ
前へ進むたびに
段差のある軌跡を作る

その軌跡の末端までは
10メートルあまりかな

ということは
いきなり 
そのものは
そこで出現したことになる

どっこいしょ

声が更に明るいものになっている

どっこいしょ

色がピンクに近いものになっている

どっこいしょ

爽やかな声で
聞いていて心地がいい

どっこいしょ

艶やかなピンク色になってきて
掌に乗せてみたいほどだ

どっこいしょっと

不思議な生きものは
嬉しそうに言って止まった

屈んでいる僕越しに
後ろからの人影が落ちた

振り向くと
春先なのに海水パンツ姿の青年が立って
真っ白い歯を見せて笑っていた
赤銅色に日焼けして
好漢という表現がぴったりだった

青年は不思議な生きものを
右掌に乗せて
左掌で蓋をした

それから
シェーカーを振るような仕草をした

青年は左右の掌を離した
不思議な生きものは消えていた

「私の心です。いろんなものを
 抱えさせてしまったので
 解放させてやりました」

青年は海へ向かった
ズンズン海へ入っていって
途中で泳ぎだした

やがて
青年の泳ぐ姿は
僕の視界から消えた

僕の心が騒ぎだした
いつもの騒ぎ方と違い
今にも外へ飛びだしそうだった

悪いものを見せてしまった