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懸賞小説の
闇に浸った人間は
けして凶暴でも凶悪でもないよ

受賞作品を本気で
自分の作品をパクったと思い込むか
受賞作品より
自分の作品のほうが遥かに優れている
と 思い込んでいる

やることと言えば
受賞作の悪口や
受賞者に対する誹謗中傷

過激に出ても
出っくわしたときに
胸ぐらを掴んでくる程度だ

時が経てば
自分の作品のレベルが
だいたい把握できるようになる

闇に浸っている自分に気づいて
静かに懸賞小説の世界から去るか
改めて地道に文学修行に取り組むだろう

この事件の容疑者は
懸賞小説の闇に浸る
なんて生易しいもんじゃない

小説を盗まれたから火をつけた
なんて言い訳に近い

この容疑者が浸っている闇は
現代社会が抱える
奥深く根深く底知れない闇だよ

だから
平気で多くの犠牲者と
負傷者が出るのが充分予測されたのに
いや
それを期待して火をつけた

おそらく
自分は助かるつもりだったんだろう
火の回りが想像を超えて速く
自らも瀕死の火傷を負い
ようやく その淵から這い上がった

この容疑者を
犯行に走らせた闇とは何か
堅実に暮らしている人には
たぶん見えない闇だ

容疑者は
何をやってもうまくいかなかったのだろう
希望を失い
絶望したこともあったと思う

そうして
自らが痛切に思い知らされたのは
現代社会での生きづらさだった

そのときに
彼の前には闇が現れる

生きづらさを世の中に責任転嫁し
周りの人たちのせいにして
そねみ恨み
無意識のうちに
犯行に駆り立てられる

心の牙を磨いてしまう

自分と向き合うことを避け
世の中と 周りの人に
甘え依存し
それも叶わぬとなると
自己中的恨みを抱く

おれは世の中に潰された
周りの連中に嵌められた

どうしてくれる

おれの小説を盗んだ
は ただの大義名分に近い

滅ぼせ こんな世の中
くたばれ  糞人間ども

現代社会の深淵の闇に浸った彼は
妄執の虜になって
大量の犠牲者 負傷者を出す
邪道を駆け抜いて
犯行に及んだのである

大量の犠牲者を道連れにして
自殺する人間にも
この闇に浸った者は多いはずだ

現代社会の真の病根
とも言えるこの闇は
このままでは根深さを増すばかりだろう