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物心がついたときには
わが家に犬がいた
虚弱児で
やや難聴でもあった僕の夏休みは
いつも犬が一緒だった
僕に何か吠えても
聞き返す必要がなかった
僕は 解った とうなずけばよかった

近所の子供達は
毎日 川へ泳ぎにいった
僕はそのときの飼い犬で
僕の無二の遊び相手を連れて
雑木林へ行った

川へ行っても泳げない
みんなと一緒でもよく聞こえない
雑木林でセミや
カブトムシをとった
木陰で本を読んだ

わが家の庭に訪れるメスの野良猫と
僕は仲よくなった
父は猫が大嫌いだった
メスと解ったのは
飼い犬の仔犬時代の犬小屋が
縁の下に押し込んであって
カノジョはその中に仔を5匹産んだからである

さあ
父はまだ目も開いていない赤ん坊の仔猫達を
捨てにいこうとした
僕は泣いて止めた
1ヶ月以内に仔猫の貰い先を決めるという条件を
僕は呑んだ。
母にも協力して貰い
4匹は貰われていった
母猫は残った1匹の育児放棄をして
姿を消した

1ヶ月経った
僕はその1匹を捨てにいった
母猫のように野生で生きられる
と固く信じていた

遊び仲間の飼い犬がついてきた
僕がその1匹を藪に入って捨て道に戻ると
カレは捨てた1匹と
僕を見比べた

こんなところへ置いてどうするの

と 訊かれたような気がした
僕はわが家へ向かって駆けだした
カレはすぐに僕を追い越して
大分先で止まり
僕を振り返った

犬の放し飼いが当たり前の時代だった


※ 写真撮影はペットの写真家として知られる
 村田三二さんです。