10年余りで
 20種以上の転職を繰り返してきたから
 異色の会社に入って
 目を見開かされた思いになったことも
 戸惑いうろたえたこともあった。

 一応は普通の物販会社で
 泥棒会社でも詐欺会社でもないのに
 社員のみんなが平気で嘘をつくので
 入って面食らったことがある。

 アイデア製品を主に新製品を仕入れて販売していたが
 そういう製品のメーカーには
 すでに潰れているところもあって
 在庫が少なく
 故障しても修理できないことも多かった。
 飛び込み営業で成り立っていた会社で
 製品の取り換えや
 修理を依頼する電話がかかると
 
 お買い上げいただいたのは最後の在庫でした

 とまず答える。

 ただいま そのメーカーは制作を中止し
 欠陥を是正し画期的な製品にするべく
 研究試作をくりかえしております
 めでたく発売になったときには
 お買い上げいただいた製品と
 無条件で交換させていただきます
 それまでお待ちください

 と。

 画期的な改良新製品の発売時期を尋ねられると

 5年後です

 メーカーは潰れているので
 すべて嘘っぱちである。

 やや押しが弱い客からのクレームには

 その販売社員は3日前に辞めました
 そうですか
 そんなことを言いましたか

 などととぼける。
 確かに社員お出入りの多い会社だったが
 そばで当の社員がいて舌をペロッと出して笑った。

 電話でなくてクレーマーが乗り込んでくると
 社長が応対した。

 応接セットへ案内し社員注視のなか弁舌巧みに応対した
 社員がついている嘘の言い訳は
 この社長を見習ってのことだったか
 と納得した。

 1週間で辞めたが
 ずっといたら僕も嘘の言い訳を
 平然とするようになったかもしれない。
 トップが嘘をつけば
 その下の人達も嘘をつくようになる。
 いやな人は辞めていく。

 だから
 社員みんなが嘘をついて平気になる。

 いまどき
 こんな会社があるだろうか。

 下の者が平気で嘘をつくところは
 トップが平気で嘘をつくからである。
 これが真実。


 ちなみに
 風の便りで知ったことだが
 その会社はそれから1年も経たないうちに潰れた。