末っ子の僕に

 母は1歳の時から読み聞かせを行ったという

 理解できなくても

 母の愛情を感じて安心したのだろう

 途中から すやすや眠ったそうだ

 母は夕食の支度に台所へ向かう

 でも すぐに僕は目覚めて泣き出したという

 それからはすやすや眠りだしても

 読み終えるまで

 ときには2冊目も読み終えて台所へ立った

 1時間2時間と

 僕は目覚めなかったという

 3歳頃のことはよく覚えている

 「3びきのこぶた」は繰り返し聞いた

 僕がこれ読んでといつもせがんだからだという

 「あかいくつ」は怖かった

 足を切断される場面が特に


 小学生になったら

 我が家から絵本が消えた

 あれは3年か4年だったかなあ

 学校から帰ると誰もいないことが多かった

 母は夕食の買物

 姉達はお勤めや 学校

 僕は押し入れの上段を隠れ家にした

 ある日

 他の部屋の押し入れ上段に初めて上がった

 奥に真田ひもで結束された絵本の束を見つけた

 僕は奇怪な歓声をあげていた

 消えた絵本だった

 懐かしさのあまり

 僕は時間を忘れて読みふけった

 母に発見されたときは

 茶の間のちゃぶ台に

 家族がそろったあとだった


 絵本が僕の視界から消えたわけは

 小学生に絵本はいらない

 という理由からだった