R子さんは女子大生

 高校時代に味わった苦しみから

 ようやく解き放された

 と話した


 高2のとき

 3代続いた家業が破綻した

 室内装飾業を兼ねた家具屋さんだった

 JR沿線の駅前商店街にあったが

 幹線道路に量販店が進出し

 徐々に売れ行き不振に陥った

 お父さんは高級家具を仕入れての

 外商による起死回生策をとった


 しかし それが裏目に出て

 万事休した


 取引銀行から融資を断られ

 民間の金融業から融資を受けたので

 その取り立ては厳しく

 朝から2,3人で連日押しかけてきた

 彼らは自分たちにとっての正論を

 冷静に粘り強く繰り返した

 その執拗さにたまりかねて

 応対していたお父さんとお母さんは

 悲鳴のように怒鳴った


 受験勉強をしていた

 R子さんも玄関に飛び出し

 「貴方方は私たち一家の人権を侵すんですか!」
 
 と 叫んだ


 女子高生の出現に

 彼らは当惑し姿を消した

 しかし 翌日もR子さんが登校してほどなく

 姿を現した

 R子さんが学校から帰ると

 そそくさと姿を消した

 
 そんな日の連続で

 両親は憔悴しきった

 R子さんもストレスで偏頭痛が起き

 目がかすみ視界がぼんやりしたという

 「両親は根負けしたんですね
  あの人たちの言う通りに資産を処分して
  全額を返済したんです」


 しかし まともな債権者たちがいたわけで

 債権者会議によって

 債権額の5分の1程度の回収で

 収まりがついた

 「あのとき 向こうの手の内に乗って
  キャアキャアわあわあ騒ぎ立てず
  向こうより冷静にのらりくらりと応対していたら
  債権者会議がイニシアティブを握れた
  かもしれません」

 自宅も手放さなければならなかったが

 債権者の多くは長い取引先で

 R子さん一家が路頭に迷うことがないよう

 手を打ってくれたという


 R子さんの言にもあったように

 相手の手の内に乗らず

 のらりくらりとかわせたら最善だった

 地獄の苦しみを舐めずにですんだ

 
 苦しみを迎え撃っては駄目なのである

 苦しみは台風のようなもので

 いちばん烈しいときに迎え撃たなければ

 しだいに収まる

 烈しいときに迎え撃てば

 待ってましたとばかりに

 心になだれ込んできて荒れ狂うう


 激しいときはまともに襲われないようかわす

 R子さん一家を例にとって言えば

 取り立て側以上に冷静に

 我慢強く頭を下げ続ければいい

 向こうはそうされると打つ手がない

 一言半句でも脅しの言葉を発すれば

 今は警察が手ぐすね引いて

 それを待っている


 人生にはいろいろな苦しみがあるが

 いちばんきつい状態のときに

 どうにでもなれと開き直ると

 かわすことになる

 
 心が苦しむのではなく

 苦しみの素が飛び込んできて

 心を苦しめるのである

 苦しみは心の敵

 迎え撃たず

 かわして

 心を甚大な被害から

 守ることである