「待ち得て今ぞ時に逢う 待ち得て今ぞ時に逢う 関路を指して急がん」
皆様ご存知の「積恋雪関扉」通称「関の扉」の置き浄瑠璃。
三味線の伴奏がなく、浄瑠璃だけが独りでお囃子さんと共に歌い始めます。歌い始めの音をガイドなしに歌うところ、我々浄瑠璃語りが心を砕く部分でもあります。

江戸時代、天明四年(1784年)の初演に「重重人重小町桜」という長い長いお芝居の切幕に上演された「積恋雪関扉」のオープニングにぴったりの「大変長らくお待たせしました」とでも言いたげな作詞がお客様のハートをつかむのですが、実は語っております私のハートも鷲掴みにされております。
「積恋雪関扉」は常磐津の中でも一番の大曲。数多くいらっしゃる常磐津の太夫さんたちの中でも、一生のうちに全段を歌舞伎で語る機会を得られる人はほんの僅か。私なんぞにそのチャンスを頂けたことに心から感謝を込めて語らせていただいております。

公演もあと4回を残すのみになりました。
この置き浄瑠璃、今度は何年後に上演されるでしょうか。その時、それはもう私のお役目ではないかもしれません。心して残りの舞台を勤めたいと思います。