東京に来てもう4カ月が過ぎた。アルバム製作が無事終わって、ツアーと練習とキャンペーンを並行して行なっている。暮らしていれば自然と心は揺れてメロディと言葉が湧いてくるので、更に新しい曲も作ったりしている。

さて、11月24日にフルアルバム『ギター』を発売する。気付けば『ユースレスマシン』発売からかなりの時間が経過していた。ご存知の通り、なかなか順調とは言えない1年9ヶ月だった。

去年の春頃。ライブが無くなり、毎週入っていたスタジオが営業停止になり、バンドを始めてからほぼ毎日書いていた歌詞を書く手が止まり、生活から音楽が完全に消えた日があった。朝からランニングをして、配信で映画を観て、友達とZOOMで電話して、たいして疲れてもいない身体のままベッドに入る。誰とも会わず、メンバーともマネージャーとも連絡を取らない。そんな日がしばらく続いた。12年間で初めて、ハンブレッダーズのことを考えない期間だった。悲しいことに大した問題はなく時間は過ぎて、「そっか、音楽を作らなくてもぜんぜん生きていけるんだな」と理解してしまった。心は静かで、涙も出なかった。

就職活動をしていた時期に、大学教授に「生活必需品に関わる仕事をしなさい。不況になっても仕事が失くならないから。」と言われたことがあった。毎晩電気を消して天井を見ると、その言葉がフラッシュバックした。自分の仕事は世の中に必要とされていないのだろうか?そんなハズはないと言い聞かせても、決まっていたライブがひとつひとつ消えていく度に、その仮説は徐々に説得力を持っていった。

2週間ほど経ったある日。関連動画でたどり着いた漫才師の動画をYouTubeで見ていた。久しぶりに声を出して、ひとりで笑った。ほんの少しだけ躍動した心臓に、なんとなく歌詞とメロディを添えてみる。思えばこういう時に思い浮かぶ曲は、いつもエイトビートの速い曲だった。頭の中で独り言を言いながら、半日でフルコーラスが完成して、ギターも歌もヨレヨレな音源をメンバーに送る。『BGMになるなよ』というタイトルは、きっと自分に一番言いたかった言葉だった。

それからはどんどん曲が出来ていった。夏頃に『君は絶対』という曲が書けて、アルバムの方向性が固まった。ライブを制限付きで少しずつやれるようになったり、自分の歌がアニメ主題歌になったりした。全国で待ってくれている人の顔を見る度に心が震えた。でらしもキジマも同じだと思う。

俺は卑屈で、何でも斜に構えて見る癖がある。だけど本当はすごく寂しがり屋で、誰かと繋がりたくて、無機質なインターネット越しじゃなくて、たしかな手触りで誰かの名前を呼びたくて、誰かに名前を呼んで欲しくて、だからバンドをやっているんだと思う。コロナ禍に俺が経験した孤独みたいなものは、きっといつだって誰にだって訪れる。そういう負の感情をブチ破るためのアルバムを作りたいと、ずっと思っていた1年9ヶ月だった。

大学教授に「生活必需品に関わる仕事をしなさい。」と言われたことがあった。俺はそんな仕事に就いている。そう胸を張って言えるアルバムができた。『ギター』今月24日発売です。聴いてください。