次の作品はTOY'S FACTORYからリリースする。ハンブレッダーズは来年、所謂メジャーデビューをすることになる。メジャーデビューが決まり、1番最初に頭に思い浮かんだ言葉は、「みんな喜んでくれるといいな〜」だった。自分の嬉しい気持ちとか、現実的なアレコレなんかは後からジワジワとやってきた。これはきっとキジマもでらしも同じなんじゃないかな。今日の夜に発表をして、ツイッターでたくさんの「おめでとう」という言葉を見て嬉しかったです。ありがとう。

メジャーデビューは結果ではなく、手段だ。「おめでとう」と言ってくれる人に対してはありがとうと素直に思うけれど、僕はこれを誇るつもりも驕るつもりもない。「さあメジャーに行けたから安心だ」なんて気持ちは微塵もないし、そもそも音楽に対して"売れたもん勝ち"なんて価値観は非常に傲慢だと常々思っている。僕ら3人は、ハンブレッダーズがこれから音楽活動をする理由や意味を考え、メジャーデビューという1つの道を選んだに過ぎない。

ビニールの袋からCDを取り出して再生する時のドキドキや、ライブハウスで好きな曲のイントロが流れて自然と体が踊り出すときの気持ちや、いつの間にか鼓膜にこびり付いて離れないメロディ。名前も顔も知らない僕らが音楽を通じ、孤独なままで感動を共有できる一瞬の永遠にこそ用がある。決して一筋縄ではいかず、ラベルの付けられない価値や勝ちがあると信じているから音楽をやっているんだ。

そしてそれらの感動はもれなく、貧乏にも金持ちにも、古参にも新参にも、善人にも悪人にも、きっと平等に訪れるハズだ。ここがブレたらハンブレッダーズは終わりだと思っている。

そして変わらないことが大事とはいえ、時代や年齢と共に変化してきた自分の心には寛容でいたい。変わらない信念を保ちつつ、変わり続け、遊び続けていたい。自分の中の正しさや価値基準を常に疑い続けなければ、素晴らしい作品は生まれないと思っている。

今までよりもたくさんの人に知ってもらう機会が今後増えるハズだけど(じゃなきゃ困る。)要は、僕ら3人は以前とそんなに変わんないと思うので安心してください、という話でした。



ここからは余談。初めてハンブレッダーズがライブをしたのが2009年の10月31日。ちょうど今月末で丸10年になる。

俺は人生の大半をバンドに費やし、随分と内面が変化したと感じている。それこそ高校生の時は「いつか絶対メジャーデビューしてやる!」なんて息巻いてた時期だってあったし、世の中に対してメッセージなんかなく何も考えず音楽をしていたし、思い出したくないような恥ずかしい曲やライブだって沢山。かつての自分は、自分さえ良ければ良い卑屈な人間だったのだと思う。

だけど、でたらめでも続けているうちに「いい曲だね」と言ってもらえることが少しずつ増えてきた。曲を書く時に聴いてくれる人をイメージするようになったり、ライブハウスで自分達を見てくれる人の表情に、逆に感動させられたりした。いつの間にか曲を作ることが、作詞することが、バンドで歌うということが自分ひとりだけのものじゃなくなった。本当の意味での生き甲斐になっていった。

泣き崩れてしまった文化祭の初ライブ。マクドナルドで考えたバンド名。なるべくデカい音でアンプを鳴らした放課後。夢にまで見た自分たちのCD。友達のバンドを見て涙が出るほど悔しくなったライブハウス。飲めないのに無理したアルコール。グダグダのライブをかましたオープニングアクト。打ち上げの後そのまま出勤したバイト。震える手から受け取ったファンレター。歌詞が書けなくて眠れなかった夜。自分たちで考えた不細工なサイン。結局ひとつも優勝できなかったオーディション。そのバンド達とじゃなきゃダメだった企画イベント。全国各地のショップに並んだCDのジャケット。撮影に緊張したミュージックビデオ。最初は武器だと思っていたけれど次第に要らなくなっていった偏見。全国で待ってくれている人たち。ラジオから流れた自分の歌。ワンマンライブでのアンコールの声。

忘れられない瞬間にはいつも誰かが関わってくれていて、みんなが居たからこそ僕は変われたと思っています。今なら胸を張って言える、ハンブレッダーズは俺が生きてきたすべてだ。出会ってくれてありがとう。



とは言え、これまでの10年はこれからの旅路のイントロダクションになる。感動する心さえ捨てなければ、大人になったって青春は続くんだってことを、俺たちはこれから証明しに行かなくちゃいけない。

まずは来年のアルバムでお会いしましょう。僕らの名前はハンブレッダーズって言います。よろしく!