3人のサポートギタリストに支えられてハンブレッダーズは現在活動している。この春まで一緒にバンドをしていた吉野。大阪でライトフライトというバンドのギターボーカルをしているうきくん。そして元The Floor、現Coupleというグループのギターの永田さんの3人だ。ライブをしていても三者三様のプレイスタイルがあるのが面白く、お客さんにもガチャガチャのような感覚で楽しんでもらえたらいいなと思っている。

永田さんと初めて一緒にライブをしたのは8月だった。緊張感と高揚感が入り混じった心斎橋JANUSの楽屋の端に、見知らぬTシャツが置いてあるのがわかった。よく見るとそれは、アメリカのロックバンド、ガンズアンドローゼスのロゴTシャツだった。

_var_mobile_Media_DCIM_105APPLE_IMG_5208.JPG

僕は永田さんに尋ねた。「これ永田さんのTシャツですか?」「そうそう!今日着るかわかんないけど」永田さんはかなり音楽に関する造詣が深く、知識量も多い。ガンズのことを好きなのは意外だったが、何らおかしい話ではなかった。「知らなかったっす、ガンズ好きなんですね。」と聞いた。永田さんは少し困ったような顔になった。

「いや〜実はそんなに今までめっちゃくちゃガンズ聴いてきたワケじゃないんだけど…オシャレだから気に入ってんだよね…笑」少しばつのわるそうな顔をした永田さんがなんだか可笑しくて、僕は笑ってしまった。ミュージシャンがステージ上でバンドのTシャツを着るのであれば、お客さんに『あの人、あのバンド好きなんだ!』って思われても不思議じゃない。でも永田さんはただ単に「オシャレ」という理由でガンズアンドローゼスのTシャツをバンドマンの聖域たるライブハウスに持ち込んでいたのだ。

ふと僕は思った。本当にガンズアンドローゼスが好きな、いわゆる"ガンズガチ勢"のバンドマンと対バンして、変な空気になったりしないんだろうか。例えば僕はエレファントカシマシがすごく好きだけど、対バンしたバンドマンがエレカシのTシャツを着ていたら親近感が湧く。打ち上げで会話の糸口として「エレカシ好きなんですか?」と話しかけるかも知れない。そこで「いや、オシャレとして着てて…」と返されても、こちらとしても反応に困ってしまう。

「本当にガンズ好きな人に怒られることないんですか?」と聞くと、「たまにあるよ」あるんかーい!まーあるだろうな!ガンズなんて好きな人多いだろうし。「でしょうね!」「でもオシャレなんだよ〜」面白くて2人でずっとゲラゲラ笑っていたけれど、永田さんは何か思うところがあったのか、ガンズアンドローゼスのTシャツは楽屋に干したまま、違うTシャツを着てステージへ上がっていた。

終演後、楽屋で再び永田さんと2人になる時間があった。壁にかかったガンズTシャツがチラチラと視界に入るたびに、僕は笑いそうになる気持ちを堪えた。暫くすると、楽屋をノックする音がした。

「おつかれ〜!!!!ライブめっちゃ良かった〜!!!!」声の主は、もう1人のサポートギタリスト、うきくんだった。うきくんはテンションが高い時と低い時の落差がかなりあり、その日は僕らのライブを楽しんでくれたためか、レッドブルを5本一気にキメたのか?ってくらいテンションが高かった。ちなみに低い時はよくツイッターにいる。

「ありがと〜!あ、こちら、永田さん」僕はうきくんと永田さんの2人の間に入ってお互いのことを紹介した。彼らはこの日、初めて顔を合わせたのだ。うきくんは永田さんにあらゆる言葉で賛辞を送り、永田さんも照れくさそうにそれを喜んでいた。すごくいいムードの楽屋を見回して、うきくんの目にあるものが留まった。

「永田さん…もしかして……ガンズ好きなんですか!?!!!??!???俺もめちゃくちゃ好きで!!!!!ツアーも行って!!!!!…」

あまりにも嬉しそうなうきくんを見て、僕は両手を叩いて大笑いしてしまった。言わんこっちゃない!あまりにも綺麗な伏線の回収だった。永田さんも何か吹っ切れたのか大笑いしている。

自分以外が爆笑しているという謎の時間に戸惑っているうきくんに、一部始終を説明する。さっきまでキラキラしていた瞳が、徐々にギラギラと鋭く光を放ち始めた。「なるほど…なるほどね…?」さながら血の匂いを嗅いだ人喰いザメのような、ジョーカーになる為に化粧をしているアーサーような表情だ。口元は笑っているのに、目は1ミリも笑っていないのだ。


後日、大阪でうきくんと一緒にライブすることがあった。リハーサルを終え、本番が近づき、彼がおもむろにカバンから取り出した衣装がこれだ。

_var_mobile_Media_DCIM_104APPLE_IMG_4800.HEIC


めっちゃ根に持ってる〜〜〜〜!!!!

「俺はちゃんと、ツアーで買ったやつよ」

めっちゃ根に持ってる〜〜〜〜〜!!!!!


愉快なサポートギタリスト達のおかげで、ハンブレッダーズは今日もライブができています。

僕らみたいな下っ端バンドのレコーディングにも、ディレクターという仕事の人が携わってくれる。曲の構成から録音に至るまで協力してもらい、一緒に作品を作ってゆく人だ。

今作には初めて、秦さんという女性が携わってくれている。秦さんは3歳の息子の母親で、育児と仕事を同時にこなすスーパーママさんだ。彼女は元々バンドマンという遍歴からか、僕らに対する気遣いがぬかりない。そしてグレムリンのTシャツ(可愛らしい外見のギズモではなく、水をかぶって凶暴化したグレムリン)をよく着ている。

レコーディングが始まった8月初頭、秦さんとこんな会話をした。「いまからコンビニ行ってくるけど、ムツ君は好きな食べ物ある?」僕は頭の中で瞬時に色々なものを思い浮かべた。ラーメン、カレー、シチューなんかが特に好きだが、レコーディング中は食べられるタイミングも限られてくる。冷めきったラーメン、冷めきったカレー、冷めきったシチューを口に入れる自分を想像して苦い気持ちになる。冷めても美味しい好物は何かないかと考えた時に、おかかむすびが好きな事を思い出した。「おかかむすび…ですかね」「わかった!」秦さんは明朗快活な返事をくれて、すぐさまコンビニでおむすびを4つ買ってきてくれた。その中におかかむすびが含まれていて、僕は迷わずソレを手にして頬張った。美味しい。おかかむすびはいつだって美味しいのだ。

翌日、昼12時にレコーディングスタジオに向かうと、ブースに昼食としてコンビニ袋が置いてある。ひとつひとつ中身を確認すると、ちゃんとおかかむすびが買ってある。(ありがたいな〜、昨日食べたけど)なんて思いつつ、その日はなんとなく隣のツナマヨネーズを手に取った。ツナマヨネーズもおかかに並ぶくらい好きだし、おかかを食べたいメンバーが僕の他にも居るんじゃないか?と思ったのだ。サクサクとレコーディングは進み、あっという間に夜22時に。ブースに残ったおにぎりを確認すると、誰にも手に取ってもらえずにいるおかかむすびが、しょんぼりと佇んでいた。可哀想に…俺が食べてやるからな。うん、食べたら食べたでちゃんと美味しい。おかかむすびはいつだって美味しいんだ。昨日ほどの感動はないけれど。

翌日、12時にまたスタジオに行く。ブースにはおにぎりが兵隊のように整然と列をなして並んでいて、僕は恐る恐るその味を確認する。…ある。あるのだ。おかか味がある。2度見してしまった。これは由々しき問題だ。あれほど好きだったおかかむすびに対して、今は食指が反応しない。秦さんは良かれと思って用意してくれているし、僕が好きだと言ったのがそもそもの発端だ。強く言いづらいところはあるが、今日こそは言おう。その日の作業が終わってもやはりおかかむすびはテーブルに存在していて、僕は秦さんに告げた。「おかか好きなんですけど、あの、こんな毎日じゃなくても〜(笑)」よし、出来るだけ明るく言えたぞ。秦さんは「いやいや、遠慮しなくていいよ!持って帰りなよ!」と答えてくれる。断じて、断じて遠慮ではない。この気持ちは遠慮ではないんだ。しかしそう言われると何も言えず「…明日の朝ごはんにしようかな〜」とカバンにおかかむすびを運んでいる自分がいた。

翌日、起き抜けに昨日のおかかむすびをこの上なく事務的に食べてからスタジオに向かうと、コンビニへ行こうとする秦さんとバッタリ出くわした。しめた!これはチャンスだ!コンビニまで一緒に行って、その場でおかかむすびを買う所を阻止すれば、僕は今日おかかを口に含まずに済む!僕は秦さんに同行してコンビニへ向かうことにした。

「遠慮せずなんでも取ってね〜」と言ってくれる秦さん。店内を徘徊し、おにぎりコーナーの前で足を止める。ここが勝負所だ。案の定おかかおむすびに手を伸ばす秦さんの手を、僕はゴール前を守るバスケットボール選手のような速さで静止する。「今日は大丈夫ですよ!焼きそばにします」「わかったわかった〜」よし!やった!これで今日はおかかむすびを食べずに済むんだ!僕の勝ちだ!かつて付き合っていた恋人のように、いざもう会わなくなると寂しいといったような顔をするおかかむすびのパッケージに、名残惜しくも踵を返した。

それから各自、お菓子や飲み物を選んでカゴに放り込み、会計をしてスタジオへ。買ってきたものをブースのテーブルに並べる秦さん。僕は念願の焼きそばを食べつつ、その並びに目をやった。

ある。あるのだ。その場にあってはいけないはずの、おかかむすびが。僕は自分の目を疑った。しかしある。圧倒的な存在感を放ちながらおかかむすびが鎮座しているのだ。毎日こいつと会わなきゃいけない平行世界に来てしまったのだろうか?呆然とする僕におかかむすびは「きちゃった…///」と頬を赤らめているような気がした。秦さんは僕の目を盗んで、カゴにおかかむすびを放り込んでいたのだ。なんと抜け目ない…。

かくして僕はおかかむすびを、レコーディング中ずっと食べることになった。ちなみにプリングルスのサワークリームオニオン味、アーモンドチョコレートも毎日ブースに新品が置かれていた。舌が味を覚えている。一生分食べたので。

ちなみに秦さんはレコーディングに関しては超スゴ腕で、音源に関してはかなり最高のモノが録れています。安心して待っていてください。

何度足を運んでも慣れない東京に今日から一週間滞在する。遠征前はいつも当日の朝早く起きて準備するようにしているんだけど、さすがに今回は大荷物。昨夜のうちにスーツケースと格闘し「これ以上はもう…」とでも言いたげなその口を半ば強引に閉じたが、出発した今も何かを忘れたような気がしてならない。

レコーディング自体は諸々の都合で晩夏まで続く。銀河高速という曲を発表した手前、次はそれ以上のものにしなければいけないな〜という緩い強迫観念と、並んだ曲からしてどう間違えても最高傑作になるだろ〜という謎の自信が混在している。4月以降、3人でスタジオに入るようになってからはアレンジやリードギターという"調味料"に頼らず、メロディと歌詞という"天然素材"の良さだけでどこまで美味に仕上がるか、に今まで以上にこだわるようになった気がする。(料理に関して無知なので、『いい感じの比喩!』くらいのテンションで受け取ってください)要は順調ということ。

今年の春までの3年間はメンバーの大半がサラリーマンだった。まとめて休みを取れる盆休みは大体レコーディング漬け。盆休みという世間一般的に普及している概念をすっかり忘れていた僕は「今年はゆっくりできるかな?」なんて無邪気に思いカレンダーアプリを開く。なんと今年はレコーディングに加えて自主企画3本と夏フェスとの文字が。(※頭が悪いため先先の予定を覚えられず、でらしによく怒られる。)先週のミーティングで「来年の夏は絶対に盆休みを作る」という法案を提出すると2/3以上の賛成を得て無事に可決された。

そうそう、今年はROCK IN JAPAN FESに出演する。2年前の夏、RO JACKというオーディションにエントリーしたことがあった。優勝すればROCK IN JAPAN FESへの出演権と賞金100万円が手に入るというもの。デモテープ審査から始まって、決勝戦まで勝ち抜いた僕らは、渋谷のとあるライブハウスのフロアで結果発表を待った。しかし最後までハンブレッダーズの名前が呼ばれることはなく、僕もメンバーも悔しすぎて何一つ言葉が絞り出せず立ち尽くしていた。(でらしと先週話している時、思い出したように「あれが3年間で1番悔しかったですね」と呟いていた。)スタッフの鴨井さんがボロボロ泣きながら駆け寄ってくるのを見て「いつか絶対に出場します」と言ったのを覚えている。2年かかってしまったけれど、約束を果たせるのが嬉しい。続けていて良かったと思えることの一つ。もう来週だっけか。新しいグッズ(超オシャカワSPECIALチョベリグこだわりインスタ映え確定案件)もその日から発売します。

敬愛する先輩との自主企画ツーマンライブが3本、ラッシュボールはATMCのクロージングアクト、あと9月になるけどスピッツの企画にも出演する。野外イベントや大きなステージにはまだ慣れない僕らだけど、忘れられない夏になることは既に決定している。よかったら一緒に遊んでください。熱中症にだけは気をつけて。

ノイズキャンセリングしたヘッドホンからは田我流。誰かがゆれるための曲を書こうぜ。

↑このページのトップへ