デモテープのMINAMIの歌声は、それまで聴いた事のない、例えようのない圧倒的な存在感で僕の全心に訴えかけてきました。

「この子をバンドの形でデビューさせたいんだけど、メンバープロデューサーとして一緒に組まないか?」

三たび声をかけてくれた社長の優しさと、最高の歌声に出会えた興奮とで、内心ぐちゃぐちゃな感情のまま即答します。

「ぜひやらせてください」

「じゃあ明日ハンコ持って事務所に来い」

こうしてその日にお店を辞め、次の日に契約します。

22歳の冬でした。

つづく

次で最後です。

まさか再会出来るとは思ってもいなかったT社長のお店で働く事になった僕は、その日から社長が来る時だけロイヤル担当となりました。

華やかなお客様達に粛々とお酒を作り続けます。

この時代のこの形態のお店は夕方〜朝方の営業時間は当たり前で、たまに閉店後にパーティー等が入ると、終わるのは昼過ぎだったりする事がザラです。

要は自宅にほとんど寝に帰る毎日です。

2ヶ月ほど経ち、この生活が続くと創作の時間が全く取れない事にもどかしさを感じ始めます。

このお店は辞めて昼間のバイトに変えよう。

そう決めて、お世話になったT社長にその旨を告げると、一本のデモテープを聴かせてくれます。

後のD-LOOP、MINAMIの歌声でした。

つづく

ある日コニタンから「クラブ立ち上げに参加するけど一緒にやらない?」と声をかけられたので、一緒にお店の立ち上げを手伝う事になります。

かなり大きな箱のクラブだったのでフロア担当、VIP担当、ロイヤル担当など配置が分かれていましたが、僕はVIP担当になりました。

ロイヤルというのはオーナーの方が使う超VIPルームみたいなものです。

内装や発注も終わり、お店はオープンします。

オープン初日、オーナー様が団体で来店するという事で、ロイヤルを手伝う事になっていた僕は、オーナー様をニコニコ笑顔で出迎えます。

「お前こんなとこで何やってんだ笑」

T社長でした。

つづく

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