アメリカの大学院に戻らなくてはいけないとフライトを調べ始めた頃だった。
最初読んだときは意味がわからなかった。
外国籍の日本に住んでる人が日本に帰国する時の感染リスクと、日本国籍の人が帰国する時のリスクは同じはずだ。そういえばアメリカから帰国した際も、私以外ほとんど日本人の飛行機で全く同じ経路で帰国したのに、私や他の外国籍保持者(在住権もちろんアリ)だけ別室に連れて行かれて「感染多発国には行っていません」という念書を書かされた。
「これは私が中国籍だからでしょうか?」と聞いたが関係ないと言われた。
別室に日本国籍の人は一人もいなかった。
「パスポートの出入国記録を見れば当該国に行っていないのはわかるのではないですか?」
と聞いた
「記録に残らない方法もあるので」
と言われた。私はその方法を知らないが、あるのかもしれない。
「では、日本国籍の人もそのリスクは同じではないですか?皆さん念書を書かれた方がいいのでは?」
そのあとはもう「決まりなので」以外の返答をもらえなかった。
明らかにイライラしているようだったので、怖くなって聞くのをやめた。
まあこのくらいは別によかった。慣れているし。何か私の知らない制度があるのかもしれないし。
ただ家に帰ることができてホッとした。
当時アメリカ政府も、オンラインクラスだけをとっている場合はビザ停止、つまり秋の学期が終わったら再入国できるかわからなかったり、i20を取り直さなければならなくなるかも知らず、そうするともう一学期多く取らないといけないかもしれない、という留学生に対しての激怖政策をしいていて
私は国を出ても地獄、出なくても地獄という狭間にいた。
(その後その政策は撤回された。ハーバードやうちの学校が訴訟を起こしたりして、政府が引いたのだ。)
そもそも時差が大きすぎてオンライン授業を受けるのは大変だった。生活リズムがいつも以上にぐちゃぐちゃになった。
夜中の二時から2時間授業をして、朝の六時からまた2時間
お昼に寝るために日本の仕事の連絡は一切反応できず、という日々だった。
だからこそ、バカ高い学費を貯金を切り崩して払っているし
まだニューヨークの家の家賃も払っているし、
無駄にしないためにもニューヨークに行って大学院に通いたいと思っていた。
そうしたら「出国したらお前は日本国籍じゃないから上陸させません」だ。
コロナの時期そういった渡航制限が出ることはわかる、でも日本国籍だけで区切る理由がわからなかった。
そこで改めて、多くの人が全く意識もせず、戦うこともなく得ている「条件なしに保護してくれる祖国」というものを、私は持たないのだとあらためて認識した。アメリカに出て改めて日本の良いところや好きなところに気づき、更には自分の中の日本で生まれ育ったが故の考え方や慣習に気づき、自分のルーツは日本なんだなと改めて思った矢先だったので、よりショックだった。
「今は日本以外もみんなそうだよ」という人もいたがそうではない。
6月G7の中でこのような措置をとっているのは日本のみだという。
そして日本はオリンピックのための入国緩和やビジネスの入国緩和を考慮し始めている
日本に基盤のある外国籍の人たち、日本の大学に留学にきた優秀な人材たちのことは話題にすら上がらない。
「帰化をすればいい」というのもよくわからない。
永住権や滞在権は何のために存在するのか。国籍だけで人権を無碍にする国でいいのか。あと、私は日本育ち日本生まれだからすぐ帰化できると思われることが多いが、そんなことはない。そもそも国籍選択権(片方の親が日本国籍だと与えられることがあるらしい)はなかったし、20を超えて初めて帰化手続きが可能になった。
そしてまたこの手続きが大変で、まあ頑張ればできるけれど1年2年はかかる。ただ、引き続き5年以上日本に住所を有することが条件で、この引き続きというのがトリッキーなのだ。
これは日本に住所を有していても、長期海外にいくことがある場合(確か連続3ヶ月以上、連続でなくても1年間で150日ある場合)はそこで在留期間の計算がゼロに戻るからだ。なので私みたいに国外で長期の個展がちょいちょいあったり、今みたいに留学をしていると手続きができない。
実は一度帰化の手続き相談に行っだのだが、諦めたのはそれが大きい理由だった。