僕がクマリデパートに通い始めて半年が過ぎた。

「へんちゃん、昨日HELLO HELLOやったで」

同じマナちゃん推しのゴウダさんは喫茶店の席に座るなり僕にそう言った。

クマリデパートは2021/8/8(日)の大阪から新曲「限界無限大ケン%」をひっさげて、全国ツアーをスタートしていた。

その翌日。

🐻20218/9 名古屋 Electric Lady Land

1部の入場開始まで時間があった僕とゴウダさんは会場となるElectric Lady Land近くの喫茶店に入った。名古屋から参戦だった僕と違ってゴウダさんは前日のツアー初日の大阪に行っていた。

「HELLO HELLO」というのは僕の推しである「マナちゃん」のソロ曲だ。

クマリデパートは現在レーベルから発売されている2枚のアルバム、と6月に発売されたシングル「限界無限大ケン%」でほぼ全ての音源を網羅出来るのだが「それとは別に」ソロ曲を集めたCDが存在する。

マナちゃんのソロ曲である「HELLO HELLO」は2021年2月に発売した「セカデパ」リリース時に発表されたソロ曲集に収録されているのだが未だに僕は「それ」をライブでは聴いたことが無い。

他のアイドルグループ同様、クマリのソロ曲は個性が出ていてとても楽しい。以前インタビューでマナちゃんが加入当初のレコーディングで「もっとアイドルぽく歌って」と運営さんに指摘された、と読んだ。

なるほど。

僕は今までアイドルを「高音が出るようになった」「ビブラートが上手くなった」、技術的な面で見ていたけれど「アイドルらしく歌う」そういう「歌い方」そのものに視点をフォーカスした事は無かったので目からウロコだった。

7月の下旬。フウカちゃんがタスクの熊澤風花とニジマスの森みはると組んだアトジャムのユニット、FMFの「we pop」リリイベを見に池袋のタワレコに行った。ちょっと気になったのでフウカちゃんに聞いてみた。

「クマリと歌い方変えてる?」

「うん、変えてるよ」

あらためて本ブログを書く前に「we pop」のフウカちゃんソロバージョンとクマリの「世界の終わりの物語」のフウカちゃんの歌声を聴き比べたら「we pop」のフウカちゃんのボーカルはドライに、感情よりもスピード感を心がけているように思えた。一方「世界の終わりの物語」のフウカちゃん(と、他メンバー)の歌声はただひたすら、優しい。

なるほど。

クマリデパートにはクマリデパートの世界観たる「歌い方」があるのだろう。

話を「HELLO HELLO」に戻すと、ここでのマナちゃんの歌声はクマリでの歌と違い、ドライに聴こえた。僕の第一印象は「大黒摩季」のようだな、と思った。どちらが良いかはそれぞれとして「HELLO HELLO」は素の「七瀬マナ」の歌声な気がする。マナちゃんのボーカルの良さは「ドライブ感」だと個人的に思っている。一声一声にメリハリがあり立ち上がりが鋭い。「HELLO HELLO」はそのドライブ感が活かされたマナちゃんならではの曲だと思う。


以前ブログに書いたのでエピソードとして重複するが6月のLINE CUBEでの7thワンマンの翌日のアフターイベントの1部で「HELLO HELLO」をやったのだが、僕は残念ながら2部の参戦だった。僕が特典会に行くと運営のチカちゃんがマナちゃんに「歌って!」と言うとマナちゃんが目の前で「HELL HELLO」のAメロをアカペラで歌ってくれた。「またいつか聴けるよ」とマナちゃんは慰めてくれた。その「いつか」がどうやらツアー初日の大阪のようだった。冷静に考えれば推しメンに目の前でアカペラで歌ってもらう方が遥かに「レア」な気もするが何度かステージで披露されているのに聴けていないのがもどかしい。

ゴウダさんに聞くと大阪では何曲かレア曲をやったらしかった。

「昨日HELLO HELLOやったから今日は無いで」

結局名古屋で聴けた「レア曲」は、「めびうす」(アルバム未収録初期曲)「さおてゃんだよ~」(さおてゃんソロ曲)「ちゅるちゅる革命」(メイちゃんソロ曲)そして名古屋用に歌詞を変更したフウカちゃんソロ曲の「時々ドキッと栃木」であった。

フウカちゃんの「時々ドキッと栃木」を聴いたのは初めてだった。初めてだったので歌詞違い、と始めは気付かなかったけど「名古屋にまつわる単語」が盛り込まれてたから何となく察した。途中のMCでフウカちゃんが「マネージャーさんが大阪から来る途中に考えてくれました」と言っていた。相変わらずクマリ運営の有能さ、とそれを瞬時に物にするフウカちゃんの器用さに舌を巻く。

特典会になった。運営のサナダさんがメンバーとヲタクの間の飛沫防止シートに何やら取り付けている。メンバーの声が聞き取り安いようにメンバーの声を拾うスピーカーを取り付けているようだった。ゴウダさんに聞くと大阪からやっていたようだったが全メンバー対応になったのは名古屋からのようだった。どの現場でも飛沫防止シートの導入で「メンバーの声が聞き取りづらい」問題を良く聞くのでこれは有難かった。

暫くマナちゃん列を回しているとゴウダさんが「次の2S、どうしようかなぁ」と言ってきたので「名古屋だからメダルかじるポーズして貰ったらどうすか?」と言うと「それいいな!」と早速マナちゃんに言っていた。マナちゃんは「ねぇ、そういうのアイドルにやらせないで」と怒っていた。笑った。

僕の周りのクマリ仲間は名古屋で集結する予定だったのだが、何人かが来れなくなってしまった。そこは残念だったもののクマリデパート、初めてのツアー参戦で高揚した僕は結局仲間達と新幹線の最終近くまで特典会を回した。せめて帰りの新幹線で名古屋らしい駅弁を買いたかったが非常事態宣言下の駅構内はどこも閉まっていた。仕方なくみんなでセブンイレブンで東京でも買える弁当を買った。

座席はバラバラだったので新幹線ホームでみんなと別れ、席に付いてジミ・ヘンドリックスの「Electric lady land」を聴き、弁当をつまみながら帰路へ付いた。

8月の僕はその後クマリについては、やなミュー主催のキネマ倶楽部、怪盗!YesどんぐりRPGとのイベント、優雨ナコ&小田ちゃんの生誕祭に行った。

ukkaに関しては8月頭に「柚希の部屋」フェスに行く予定だったのだがワクチンで体調不良で行けず、空ちゃんとりじゅちゃんの写真展に行った位だった。もっともukkaは現在新メンオーディションの真っ最中であり、そちらに注力しているせいか他に現場は無かった。

そして8月最後にはアットジャムが開催された。僕は毎年8月と言えば決まってTIFに行くのが恒例で、その後エビ中のファミえん、で夏を満喫し終えていたので実は夏のアトジャムに行った事は無かった。今年はエビ中のファミえんも無くなり「唯一の」夏の大型イベントはアトジャムだけになってしまった。

もっともエビ中、ukka、クマリと自分の3大推しグループが集結したアトジャムについて書くとそれだけで膨大な量になりそうなので今日は書かない。

気が付くとやたら雨が降り、コロナ感染者数は増え続け、小山田圭吾が炎上し、名古屋市長はメダルをかじり、幾つかの美談を生んだ東京オリンピックがいつの間にか終わり、結局僕は「ケン%」のクラップと東西南北左右上下の振付が憶えられないまんま2021年の夏が終わろうとしていた。去年に引き続き「暑さ」以外に季節を実感出来ない夏であった。


🌞🌴🌺✨

9月になった。

大阪、名古屋、に続く9月初っ端のクマリデパートのツアー場所は仙台であった。仙台はキャパに対し応募数がかなり多かったらしく当初から「チケット難民」に溢れていたのだが、僕は運よく両部とも初っ端で「当選」していた。が、運悪くワクチン2回目とぶつかってしまった。更にクマリ仙台の前日にukkaのファンクラブイベントも発表されていた。ワクチン接種をずらす事も考えたものの日程調整に振り回されそうなのでukkaのイベントもクマリ仙台も諦め、僕はその2日間自宅で副作用の倦怠感に苛まれながらベッドに転がりtwitterのタイムラインをぼーっと眺めて過ごした。

仙台のセットリストを見ると「HELLO HELLO」が入っていた。

また聴き逃した…。

面白いように「HELLO HELLO」は僕の手のひらをするりと避ける。まるで気分はルパンを追う銭形のようだった。

名古屋で「時々ドキッと栃木」を聴いてしまった僕には残る聴いてないクマリ曲は「HELLO HELLO」とフウカちゃん小田ちゃんの「明太子ラブストーリー」位だった。

9/10 福岡に着いた。

9/11のIDOL by、9/12のツアー福岡を見る為に前日から僕は福岡に前乗りした。ワクチン接種をずらしたくなかったのは福岡だけはどうしても行きたかったからだ。

福岡は今回のツアーの2公演にフェスであるIDOL by2公演の2日間で合計4回のステージが見られる。

それが一番の理由ではあるのだが、福岡に住むukka友達とご飯を食べる事も大事な理由のひとつだった。よっこらしょクマリ界隈は、まぁ…別に...どこにでも居るし…。

残念ながらこのご時世で福岡も東京と違わず20時を過ぎたら店は空いてないのだがukka友達は機転を利かせてくれ近所の「イカの刺身」が有名な店から色々テイクアウトして部屋呑みしよう、と提案してきてくれた。博多駅から歩いて15分程度の友達の家まで久しぶりにukkaを聴きながら向かった。

友達が用意してくれたイカやもつ鍋を摘まみながらエビ中やukkaの動画を見ながらワイワイ話した。以前はヲタ友と集まって映像を流しながら呑んだりしていたが最近ではめっきりやらなくなってしまった。久しぶりに友達と映像見ながらやいのやいの語るのが何とも懐かしく心地よい。自然と話はクマリデパートになった。「明日明後日どこでやるんすか?」「明日はエスパシオでフェスに出て明後日はツアーでDRUMなんちゃら」「あー、ちょっと気になるなあ」。友達は何度かフェスでクマリを見てくれている。福岡に来たクマリにちょっと興味があるようだった。「え、来なよー」軽く誘ってみた。僕自身が自分が「これ!」と決めたアイドル以外の現場に行くことが滅多に無い為強くは誘わない。僕はアンパサダーとしては限りなく無能だ。気付くと23時近くなり僕は友達に別れを告げ、ホテルへと向かった。

🐻2021/9/12 福岡 エスパシオ

翌日IDOL by会場の「エスパシオ」に向かった。当然の事ながら初めての会場だった。会場でゴウダさんと合流した。他にもよっこらしょ界隈が来るはずなのだがまだ会場には来ていないようだった。開場すると僕とゴウダさんは2列目の座席に座った。会場はライブハウス、ではなくイベントホールだった。

暫くライブを見てクマリデパートが出る直前の転換時に急に1列目に居たどうやら「二丁目の魁カミングアウト」のファンらしき女の子二人が僕とゴウダさんに「どうぞ」と1列目を譲ってくれた。ステージが低い為、メンバーが出てくると、思った以上に近い。その距離わずか2メートルあるかないか。近いのは嬉しいが、近すぎると逆に照れる。もうこれをレスと呼んでいいのか分からないけれど、何度もメンバーと目が合った。そして僕は恥ずかしくてたまに視線をずらした。マスクをしている事に感謝した。多分僕は相当ニヤニヤしていた。

IDLO byは一部と二部とで若干演者は変わったがクマリデパートは両部出演であった。2部の途中で軽く抜けた後会場に戻ると見たかった「二丁目の魁カミングアウト」のステージが始まっていた。僕は慌てて席に戻ろうとホール内の後方から「ぐるり」と回って自分の席に小走りに走って行った。向かっているときは気付かなかったがPA卓前を過ぎようとした時クマリのメンバーがステージを見ている事に気付いた。どうやら僕に気付いたらしきさおてゃんがニコリかニヤリか暗闇では判別しかねる「ちいかわ」みたいな笑みを浮かべた。

「二丁目の魁カミングアウト」は前身の「二丁ハロ」時代から何度か見ている。初めて見たのは2014年のエビ中の「ファミえん」の屋外ステージであった。BISの「nerve」をカバーしていてエビ中目的のヲタを沸かせていたのが懐かしい。「二丁ハロ」時代はもうちょっとポップな曲調だった気もするが改名した今の「二丁目の魁カミングアウト」はビジュアルバンドみたいな曲調になっていたものの相変わらずパフォーマンスレベルが高い。ビジュアルとか楽曲関係無く「魅せる」パフォーマンスでは掛け値なしに「二丁魁」がアイドル界随一だと思う。ステージが終わると僕は心からの拍手を送った。

クマリのステージが始まった。この日の2部ではちょっとしたステージトラブルがあったらしく(音が出ないとかのようだったが僕には分からなかった)、機転を利かしたメンバーが急遽トークで場を繋いだ。

クマリの次にトリのDevil anthemが素晴らしいパフォーマンスを見せIDOL byは幕を閉じた。

クマリの特典会が始まり、僕はマナちゃん列に並んだ。マナちゃんに「仙台でもHELLO HELLOやったんだね」と言うと僕が未だにHELLO HELLOを聴けてない事を知っているマナちゃんは

「でもさ、これからのツアーでも1部2部がワンマンの時はやると思うよ!」

と慰めてくれた。あと残るツアーは宇都宮、札幌、新潟…。宇都宮の1部はクロスノエシス対バン、新潟1部はRyutist対バン…札幌は行く予定が無かったので対バンを把握していなかったがツアーで再び「HELLO HELLO」を聴くことが困難な予感がした。

🐻2021/9/13 福岡 DRUM BE1

翌日はクマリデパートのツアー本番であった。前日の夜から入った小田ちゃん推しのウエダくんが真後ろに場所を取った。暫く来れなかったウエダくんと会うのは1カ月ぶりだった。

「今日明太子ラブストーリーやりますよ」

ウエダくんが自信たっぷりに教えてくれた。

明太子ラブストーリーはフウカちゃんと小田ちゃんの同期コンビのユニット曲だ。この曲は去年のフウカちゃん生誕祭に1度やっただけ、とウエダくんが教えてくれた。そしてウエダくんの予想通り1部で「明太子ラブストーリー」が始まった。

その瞬間神の啓示を受けたが如く突然隣にいたゴウダさんが

「へんちゃん、この流れ、HELLO HELLO来るで!」

と教えてくれた。

流石マナちゃん推しの先輩。僕はゴウダさんの嗅覚の鋭さに感心した。

が、やらなかった。

ゴウダさんの嗅覚は特に鋭くなかった。

「明太子ラブストーリー」は音源では散々聴いていたがやはり「ライブ」で見るとまた新鮮だ。この曲は所々に小芝居が入って楽しい。途中で小田ちゃんがフウカちゃんに何かを頬っぺたに押し当てていたのだが客席からは良く見えない。最後の方で2人で大きなラブポーズをする所は「仲良し」感があってほっこりする。

曲後のMCで僕らの気持ちを察したのか優雨ナコが「あれはなにを持ってたの?」と聞かれると「明太子!」と明太子キーホルダーみたいなのを小田ちゃんが客席に見せてたが優雨ナコに「小さっ!」と突っ込まれていた。

1部が終わり帰りの飛行機の時間を確認した。取った時点で2部の特典会は厳しいかな、と思っていたが案の定2部の特典会は行けそうにない。同じ便のウエダくんは「ワンチャンないすかね?」と何度も確認してきた。「自分は無理したくないから先行くけどウエダくんはチャレンジするのは良いと思うよ」と言うと「乗り遅れたらそれはそれで美味しいな。そっちの方が面白いから俺はやりますよ」と若さゆえの無謀さを選んだようだった。僕には失ってしまった「安定」より「面白さ」を求めるウエダくんの姿は何とも潔く、カッコよく、羨ましかった。

2部はクロスノエシスとDevil anthemとの対バンライブだった。2部には初日に宅呑みした福岡のukka友達が来てくれることになった。整理番号が良かった僕はさっさと最前に陣取ってしまったがキョロキョロと場内を見渡すと4列目位の上手側に手を振る友達の姿が見えた。今までデカいステージだけしか見てなかった友達がライブハウスで見る初クマリ、にどんな感想を持ってくれるだろうか?若干の不安と期待が入り交じって気持ちがホクホクした。

友達の感想を色々聞いてみたかったのだが残念ながら2部が終わって即飛行場に向かってしまったのでその後聞く事は出来なかった。ただ、その後のツイートで満足そうにマナちゃん、さおてゃん、フウカちゃんと撮っていたので楽しかったであろう事は伝わってきた。単なる1ヲタクではあるのだが、自分の推しているグループを他の人に楽しんでもらえると何となくホッとする。今度は代わりに僕がukkaを見てみようと思った。

会場を出てウエダくんに「どうすんの?」と聞くと「やっぱ帰ります!」と言い始めた。若さゆえの無謀さは捨て堅実さを選んだようだった。人はこうしてつまらない大人になっていくんだな、と実感した。

会場から天神駅に足早に向かい福岡空港に向かった。Googleマップ先生の適切なご指導ご鞭撻のおかげで搭乗開始時間には余裕で到着できた。腹が減ってきたので押し寿司とビールを買ってウエダくんとシェアして食べた。空港で2人だけの感想会になった。

「やっぱヲタ仲間はいいすね。学生時代の友達とはまた違って」。8月は余り参戦出来なかったせいかウエダくんは心底上機嫌であった。

「福島行ったとき皆で風呂入ったの良かったよね。あんな事学生以来だったよ」

別に単に福岡遠征が終わっただけなのだが、楽しかった「非日常から日常へ」戻ろうとしている瞬間の寂しさがこみあげてきてちょっと感傷的になってしまった。考えたら今年の4月のukkaの福岡遠征は水春脱退から一週間後、ステージ自体は素晴らしかったものの「ukkaはこれからどうなってしまうんだろう」という不安がどこか頭の片隅によぎりながらの遠征であった。それと比較すると今回は「ラーメン美味しい」「イカ美味しい」「女の子可愛い」と中学生気分で楽しめた遠征であった。

と、ここまで書いていたら札幌ツアーに参加しているゴウダさんからLINEが来た。

「へんちゃん、今日HELLO HELLOやったで」

マジか…。

おしまい





メタフィクション、という手法がある。ドラマや映画で突然キャラクターが画面のこちら側に向かって喋りかけるそんな手法である。作品という物は元来「嘘」を信じさせる事で成立するのだがメタフィクションはキャラクターが突然物語中ありえない行動を取る事で視聴者に「これは嘘ですよ」と伝える手法である。
 
■戦場
2021/8/3()
東北産のワンマンに来た。会場は渋谷O-EAST。今日は一部が誰でも入れるワンマン、二部は「初めて東北産のワンマンを見る人」ご新規様用の一見産ライブであった。僕はエビ中秋田分校で東北産は見たことがあるもののちゃんと東北産を見るのは初であった。
 
一見産ライブの入場チケットはたった千円。コロナ禍でどこも会場制限を行っている為コロナ前よりチケット代が値上がりしてる所が多い現状で破格の「安さ」だ。まぁ新規向けだしサクッと30分位の短いステージなんだろうな。取り立てて期待する訳でもなく「暇つぶし」程度で取ったチケットだった。

場内に入ると座席の上に紙エプロンが置いてあった。1部ではサイン付きがあったらしいが僕のには特にサインが入っていなかった。キョロキョロと周りを見渡した。特にサインが当たっている人はいなさそうだった。僕は紙エプロンの使い道がわからずカバンにしまった。
 
僕の座席は7列目。もっともどうやら一列目は無い為実際は6列目。ukkaもクマリもそれなりに女ヲタがいるけれど、この日は客席の半分かそれ以上は女子。え?東北産ってこんなに女子人気あるの?ちょっとビックリすると同時に周りが女子だらけでまるでジャニーズのライブに来たような気まずさを感じた。いつもはオッサンばかりに囲まれて「オッサンきらーい」と思っているのだが女子に囲まれるとそれはそれでオッサンが恋しくなってくる。次の現場でオッサンに会ったら僕は喜びの余り抱きしめてしまうかもしれない。

今日のライブは完売した筈なのだが所々に空席があった。安いからとりあえずチケット買った人が多かったのだろうか?とりあえず空席やら周りが女子ばかりだった為6列目、といえども視界に遮るものが無くめちゃめちゃステージかが見えた。女子特有の文化なのだろうか?「レスください」みたいな紙を持っている女子を何人か見かけた。僕は半分ひやかし、面白ければ儲けもん、第一僕には七瀬マナ(※クマリデパート)という世界一愛している推しメンがいるので軽率にアイドルを見て好きになる事は無い。スタート前にワクワクしているであろう客席を僕は若干冷ややかな視点で眺めていた。

↓世界一可愛い僕の推しメンのマナちゃん

やがて場内のBGMのボリュームがあがり照明が暗くなった。良く分からない日本のパンクぽい曲が流れていた。これが東北産の出囃子なんだろうか???そんな事を考えているとメンバーがステージに現れて客席に笑顔いっぱいに手を振りまくってきた。
 
「ぎゃぁぁぁ可愛いぃぃぃぃ」 
「好きぃぃぃぃぃ」

さっきまでの冷静さはメンバーを見た瞬間一気に吹き飛んだ。マナちゃんごめん😢
 
それまで写真や動画で東北産メンバーをそれなりに知っていたのだが生で見ると想像以上に可愛かった。
レバーとアイドルの生は危険過ぎる…。
僕は9人時代のエビ中を除けば6人以下のグループを推す事が大半で9人の東北産は自分の「可愛い限界量」を超えていた。まるでそれは「可愛いの絨毯爆撃」だった。花怜くんの「今日はレス祭りですよ〜」、そんなセリフに合わせてメンバーが客席にレスをこれでもかと送る

ukkaは空ちゃんが「ランボー/怒りの脱出」のラストシーン並みにレスを客席に無差別に撃ちまくる以外はそこまでレスはしてこない。そんな現場になれている僕にとってこの日の東北産現場は「プライベートライアン」のノルマンディー上陸シーンばりに無法地帯だった。

ここはアイドル現場なんかじゃない。
戦場だ。

目の前に来たひなもんが至る所に投げキッスを投げ僕にも流れキスが飛んできた。僕は逃げ場も無くひなもんの投げキッスを食らった。無事死亡した。

↓(参考)茜空の爆レス攻撃

 
■ライブスタート
一曲目は「いただきランチャー」でスタート。この曲は聴いたことある。もっとも僕は聴いたことある、だけで何をどうしたら良いか分からない。周りを見ても殆どのお客さんがなんとなくソワソワした感じだった。
 
そんな客席の温度感を察したのか、わかりんが「皆さん緊張してますよね?でも安心してください、私たちも緊張しています。だから一緒に楽しんで行きましょう!」と言った。
なんでも無い一言なのにグッときて思わず泣きそうになってしまった。僕はこの子たちのバックボーンを殆ど知らない。それでも自分たちが緊張している事をサッと打ち明けるその姿勢に心を打たれたし何よりかっこよかった。メンバーはステージの上だったが気持ちは僕たち客席に降りてきているようだった。
 
如何せん曲が分からないのでどの曲でどうだったか憶えていないが、この日のライブは全編通じてメンバーが「この曲は最新アルバムに入ってます。でもまだサブスク解禁されてません」とか曲紹介をしてくれたり振りコピだったりクラップを教えてくれたりした。しかもそれが余所行きなよそよそしい物ではなくあくまでも「仲間」に対しての「優しい気遣い」に僕には感じ取れた。新規向けのイベントを体験するのは初めてだったが、東北産はありとあらゆる視点から完璧な新規向けライブに仕上げていた。
 
2曲目は「BUBBLE POPPIN’」。大好きな曲。MVは繰り返し見たしライブ動画も何回も見た。生で「どーんだーけー」を見れて凄く幸せ。この曲もメンバーが振りコピを教えてくれた。しかし、東北産はかっこいい、と可愛いへの切り替えるスピードが凄まじく早い。他のアイドルだと曲単位で切り替えるのが普通だと思うのだが東北産の場合、曲中に一気に可愛いからカッコいいに切り替わる。なんか特別な修行でもしているのだろうか?
 
3曲目は「青春修学旅行」。曲を聴いてもピンと来なかったがメンバーが「いつもは枕投げをしているのですが、今日は大縄跳びをします」と説明してくれて思い出した。これエビ中の秋田分校で聴いた曲だ。大繩を持った男性スタッフが2名現れステージ中央で大繩を回し始めた。メンバーが順々に大繩に入っていく。ひなもんだけジャンプがぎこちない。ハラハラしながら見ていると無事9人入って30回近く飛んだがやはりひなもんが体制を崩しそこで止まってしまった。「成功したらおいしいご飯が食べれる」みたいな事を言っていた気がするが果たして成功なんだろうか?心配しているとどうやら「成功」らしかった。何となくこの辺りから客席の一体感が強まってきたような気がする。大縄跳びという単純にわかりやすい盛り上げ演出を入れた采配に感心した。これは演出家とか付いているのだろうか?メンバー発案なんだろうか?良く分からないが観客の感情への導線がやたら上手い。
 
確かこの辺りで再びMC。メンバーが話し始めるが何となく音声に違和感を感じる。よく見るとメンバーが誰も喋っていない。音声が録音だと気づいた。え、何この演出…。するとメンバーが突然「声が遅れてくるよ」、といっこく堂のパロディみたいな事をやり始めた。ふざけてんなぁ笑。すると急に後方のスタッフさんらしき人が大声で「今日は予算が無くてマイクと照明が使えないので消します」と言われる。メンバーが「そういう事情なのでごめんね」と謝る。んな、アホな笑

そしてマイクと照明が本当に消され暗闇の中で生声でトークが始まる。
「皆さん私たちの事をどこで知りましたか?」
なんかやるのかな?と様子を伺っているとすかさず後方から

「アイカツプラネット!」

と大声で答えた人が居た。メンバーが慌てて「すいません、今声出しはNGなんすよ!」と笑いながら注意した。9人それぞれが僕の後方に居た声の主の方に向かってペコペコ頭を下げる。注意、と書いたが生で見ているとそれは客席を不穏にするものではなく、寧ろ彼女たちの対応力、と嫌味にならない朴訥とした個性で客席は笑いに包まれた。メンバーの完璧な対応過ぎてもしかしたらこれも演出?と疑ってしまった。
 
そこからメンバーは再び客席に「ネットで知った人?」と質問を始めた。「他のアイドルとの対バンで知った人」。数人が手を挙げた。すかさずひなもんが「誰よ!その女!」と挙手した人に詰め寄った。案外tik tok経由で知った人も居たのが今らしいなぁ、と思った。考えられうる出会い方を聞き終えて「もう他にないかな?」とメンバーが言うと美海ちゃんが「tindertinder!」と叫びひなもんも「タップル!」と続いた。んな、アホな笑
 
4曲目以降はちょっと知らない曲が続いた。が、どの曲も僕は楽しく見れた。数多のアイドルを見てきているが初見で曲を知らない状態で「楽しい」アイドルは稀である。正直東北産の楽曲自体は僕の趣味かと言われるとちょっと違う。僕はどちらかというと分かりやすいポップスが好きである。それでも目が離せないのはやはり東北産メンバーのポテンシャルが高いからだろう。中でも「re;star」は前半では最も刺さった。曲はやたらカッコイイのだが途中に急に変顔をする。な、なんだこの曲は?(;´Д`)

終演後に分かったのだが、この曲自体はMVを一度見ていた。ただその時は全く僕には刺さっていない。やはりアイドルはビジュアルもだけれどもステージを見ないと評価は出来ない。エビ中マネージャーの藤井さんが以前「大漁恵比寿節」について「曲聴いたときはイマイチだと思ったが振り付けが入って変わった」と言っていた事を思い出した。確かに。
もっとも僕はそれでも「大漁恵比寿節」は好きにはなれないが。。。
 
7曲目は代表曲?「天下一品」が終わるとメンバー数人がステージからはけた。残された5人だったかな?でやった曲は単純に僕が一番好きなタイプの曲だった。終わるとメンバーが「この曲は年下チームの東北ちゃんの曲です」と説明してくれた。なるほど。曲名は「未成年」だった。僕は忘れないようにタイトルを記憶した。
 
この辺りでもMCを挟んでいた気がする。タイミングはどこか憶えてないがメンバーが「椅子の上に紙エプロンあったでしょ?東北産ライブではみんなあれを付けるんだよ。知らないの?」と小馬鹿にして客席を一望した。僕は慌ててカバンから紙エプロンを付けた。
で、でもこれ本当なんすか???
僕が慌てて紙エプロンを付けているとメンバーが1列目に空席を見つけ「あー!!!席が空いてるうううう!」と叫んだ。後ろからだったので良く見えなかったが隣の席の人が慌てて紙エプロンを隠したらしくメンバーが「あ、嘘嘘冗談だよ。気使わないで!」と謝っていた。うん、東北産のステージはあんまり真に受けちゃいけないんだな、少しづつ楽しみ方が分かってきた。
 
僕は手ぶらで見ていたがそこそこのお客さんがペンライトや団扇などのグッズを持っていてメンバーはびっくりしていた。ひなもん推しと思われる女子がペンライトを振るとひなもんは嬉しそうに「お姉さん!今晩暇!?」と嬉しそうに誘って他メンバーに止められていた。僕の隣の席の女子はわかりん推しらしく、しきりとわかりんに向かって手を振っていた。ある瞬間気付いたわかりんは僕の隣の女子にキメ顔で指ハートを送った。隣の女子は喜びの余り思わずのけぞっていた。汚いオッサンの俺もわかりんのイケメンぷりに乙女になりそうだった。
 
そこからの数曲もまた違った東北産の魅力が詰まったいいステージだった。前半は可愛い、かっこいい、面白いを見せられたが後半は彼女たちの表現力の豊かさに感動した。
12曲目の「伊達サンバ」で再びメンバーからクラップ講座。確かこれは真珠ちゃんだったかな?間違ってたらごめんなさい。やたら拍手の仕方が可愛い。ハーメルンの笛吹きに導かれるように僕はクラップをした。この曲はひたすら伊達かあやの歌唱力に驚いた。スタプラで歌が上手いメンバーは何人もいるがかその中でもあやの歌はもっとも「ソウルフル」に思えた。R&B辺りを歌わせたらもしかしたら彼女が一番上手いんじゃないだろうか?同時にひなもんの上手さにも聴き惚れた。ひなもんは民謡とか歌わせたら上手そう。なんかそういうのやってたのだろうか?
 
13曲目は当初は何と言っているのかさっぱり分からなかったが後で調べたら「うぢらとおめだづ」という曲だった。どおりで自分と客席を交互に指差していた訳だ。わちゃわちゃしたパーティーソングで楽しいのだがサビの「心は死んだりしないから、心は死んではいないから」という一説にグッと惹かれてしまった。一見楽しげではあるが、東北産だけが持つ力強さを根底に感じた。うろ覚えだが確か花怜くんは東北大震災の被災者みたいな話を聞いた事がある。そういうのも彼女達の逞しさ、の源なんだろうか?理由は良く分からないけれど。不思議とこの曲を聴いていたら元気づけられた。
 
14曲目は自己紹介ソングだった。この曲は良くやるんだろうか???書き忘れたが途中で長めの自己紹介があった。名前、年齢、出身地、を言った後に自分のキャッチフレーズだったり好きな物だったり。真珠ちゃんは漫画が好きで今週のジャンプ読んだ人居ますか?今週のヒロアカ良かったですよね?と客席に聞いていた。美海ちゃんは「私は歌う事も踊る事も大嫌いです」と言ったのには驚かされた。え、そんなアイドルいるの???「でも東北産は大好きです」。またグッと来た。一々感情の掴み方が上手い。
 
ラスト15曲目「ワンダフル東北」をやってステージは終わった。ラストはなぜかチャゲアスの「YAH YAH YAH」が流れ始めた。え、え、え、なんで???
キョトンとしているとメンバーが「手を振って」と客席を煽った。楽しそうに「YAH YAH YAH」を歌う東北産。客席が一体となり手を振る。僕は今なんのライブに来ているんだろう。。。

最後のMCで「皆さん今日で皆産になってくれましたかー?」と質問した。僕は大きく手を挙げた。少なくとも今日見た人は全員東北産を好きになったんじゃないだろうか?ひなもんがステージ下手の僕の目の前に走ってきて全方向に届けようと必死に手を振った。「今日来た人、全員顔憶えとくからな!絶対次も来いよ!」。文字にすると怖そうだけどひなもんが言うと妙なおかしさがある。下手側にメンバーが少ないことに気付いたひなもんがセンター寄りに居た美海ちゃんの所に駆け寄り、美海ちゃんを連れて再び下手に戻って来た。上手いなぁ。この今日来ている会場の全員を満足させよう、東北産メンバーの本気を至る所に感じた。僕は席がステージと近かったけれど例え2階席でも今日はステージの近さを感じたんじゃないだろうか?
「新規を釣る」というより「みんなに楽しんで欲しい」そんな純粋さを東北産のステージから感じた。ふざけながらも東北産ならではの朴訥とした魅力に僕はやられた。
 
少し前エビ中を見に「やついフェス」に行った時。「プレイリスト」からの選曲の多さに正直僕は若干不満だった。「フェスは新規とか離れたヲタク向けに分かりやすいセトリにすべき」。そんな事を話したら友達から「でも逆に新規ってどれが代表曲かわからないから現状の最高を見せるべきなんじゃ」とたしなめられた。
 
少なくとも僕は東北産の代表曲だったり人気曲がどれか分からなかった。それでも今日のステージは間違いなく最高だった。友達の言葉を思い出し「確かに」と一人納得した。時計を見ると20時になっていた。1時間半。え、そんなやったの?今日1000円のライブよ…。90分が体感30分位だった。割と飽きっぽい僕は推しのグループでも途中でダレル事もある。そんな僕が初見でド頭からラストまで興奮しっぱなしで見れたのは奇跡に近かった。

満足感にちょっとしたデジャブを感じた。そうだ、20135月のチームしゃちほこの初ZEPP TOKYO。名古屋公演を前に「リハーサル」という演出で現実と非現実の狭間を見せたメタフィクションを織り交ぜた最高のライブだった。
今日の東北産も所々でメタフィクションの要素を盛り込んで本気だったり冗談だったりあっちに行きこっちに来て、その度にハラハラしたり笑ったり感情のジェットコースターだった。冷静に考えると鬼瓦のようにしてベロを出す東北産ポーズも人を食っているようでメタフィクションの要素に思えなくもない。アイドルライブ、というより良質のお芝居を見た満足感だった。

サブスクでいぎなり東北産を聴きながら帰路に付いた。また行きたいな。そうだ、立川でワンマンやるって行ってたぞ。その内ご当地仙台でも見たいなぁ。その時ふと気付いた。

いや、ちょっと待て、今日の1000円って意外と高くついたんじゃないの?

上手いよなぁ。

おしまい
 

「ブログ書かないの?」
飛沫防止越しにマナちゃんが天真爛漫な笑みで聞いてきた。前回酔っこら処について書いてから暫く空いていた。
「今日でリリイベ最終日…そうだ!リリイベについて書いてよ!」
マナちゃんはふとした思いつきがえらく気に入ったようで自信たっぷりに提案してきた。

■アリオ橋本
2021/7/10(土)
今年は梅雨が7月になっても続いていた。涼しいのは嬉しいが毎日雨でボクシングジムには殆ど行けてない。

クマリデパートの新曲「限界無限大ケン%」のリリイベ最終日のアリオ橋本。この日は久しぶりに天気が良かった。誰かがクマリデパートは晴れ女の集まりと言っていた。確かにクマリ現場では曇り予報でも晴れる。今はどうか知らないが上り坂の頃のももクロがまさにそれだった。クマリは何か(運を)持っているようだ。

6月下旬から始まったリリイベ。クマリ運営はリアルリリイベとオンライン特典会と現場に行ける人行けない人平日忙しい人、あらゆるニーズに答えているようだった(オンライン特典会で外国に住む外国人が何人も参加しているのにとても驚いた)。僕はクマリヲタになって初めての新曲だったので全通しようかな?と思っていたのだが生憎7月上旬は仕事が忙しく結局僕が行けたリアルリリイベは6/21と7/5の渋谷のタワレコ地下と最終日のアリオ橋本だけ、オンラインに関しては7/1と最終日の7/11のみになってしまった。
アリオ橋本のイベント会場は子供たちの遊ぶスペースが並列されていた。子供たちが暑さを凌ごうと噴水の水を浴びてキャッキャと楽しんでいる。後先考えずに水浸しになって喜んでいる子供たちが羨ましい。ステージの裏は青空が広がっていた。「おいでよクマリデパート」に合わせてメンバーが出てきた瞬間、9年前の後楽園のラクーア前で初めて見たエビ中を思い出した。

■出会い
Perfume、JPNツアーのさいたまスーパーアリーナが終わった。当時はももクロに行き始めては居たが初めての武道館以降Perfumeのライブに必ず参戦していた。Perfume友達が赤羽で店を予約してくれていた。

「へんちゃん、この人、ももクロ好きだよ」女友達がその日初めて会った男を紹介してくれた。その頃の僕はぼっちで現場に行っていたからPerfume好きでももクロ好きの知り合いが増える事は有難かった。その紹介された男は「しょうちゃん」と名乗った。

しょうちゃんは僕なんかより遥かにアイドルに精通していた。「ももクロの特典会余ってるから行かない?」。まだその頃はアイドルの情報にイマイチ無頓着でももクロの次のシングルで特典会がある事を把握していなかった。確か1部の店舗での予約特典だった特典会の参加券を惜しげも無く融通してくれた会ったばかりのしょうちゃんに好感を持った。

秋葉原でのももクロの特典会が終わり会場を出てしょうちゃんと合流した。しょうちゃんは僕を見るなり「エビ中の特典会余ってるから行かない?」と誘ってきた。私立恵比寿中学の名前はももクロのDVDで見て知っていた。タワレコで「オーマイゴースト」を1度視聴したが「バカバカしい曲」としか思えなかった。
「今度"仮契約のシンデレラ"って曲を出すんだよ」しょうちゃんは教えてくれた。だが僕には全くエビ中は興味が持てそうになかったので特典会の申し出を断った。仮契約のシンデレラ、タイトルだけでもバカバカしかった。中学生に行くなんてよっぽどのロリコンしかいないんだろう。僕はももクロさえあれば充分だ。

それから半年後の2012/8/26。僕はラクーアで初めてのエビ中リリイベに並んでいた。

しょうちゃんをきっかけに初めてアイドル現場で色んな友達が出来た。よっこらしょに行き始めたのもこの頃である。ももクロ友達から借りて渋々聴いた「仮契約のシンデレラ」にドハマリしていた。丁度テレビでやっていた「永遠に中学生(仮)」を渋々見始めてドハマリしていた。

当時のエビ中はまだ無銭含めて200人いるかいないかのお客さんしか居なかった。ライブが終わり特典会になった。全握が終わり2S撮影会になった。まだメンバーの名前すらよく分かってなかった僕は友達とひたすら特典会の様子を眺めていた。当時はメンバーはステージ裏に控えて名前を呼ばれると出てくる方式だった。人気の真山、ぁぃぁぃは出ずっぱりであった(この日はひなたは体調不良で撮影会不参加だった)。一方その後僕の推しとなる安本さんはたまにしか呼ばれない。たまに出てくる安本さんは恥ずかしそうに俯いて何だかとても物静かに見えた。

「松野」
マネージャーがステージ裏に声をかけた。安本さん以上に呼ばれなかった女の子がステージ裏から現れた。しかし、恥ずかしそうだった安本さんとは違い、その女の子はズドンズドンズドン…まるでゴジラのようにどうどうとした歩きっぷりで現れた。顔には自信たっぷりの笑顔。寧ろこの子がエビ中の真打なんじゃないか、と思わせた。

ヲタク達がメンバーと2Sを撮る
周りを子供たちがキャッキャと走り回る。
空には遠くまで青い空が続いていた。

それが僕が初めて見た松野莉奈、通称りななんとの初めての出会いだった。

■エビ中ファミリー
ラクーアでの初めてのエビ中以降僕のスケジュール帳は日に日にエビ中の予定で埋まって行った。当初は「ももクロのライブの合間だけ」のつもりだった。ももクロは出来たばかりのファンクラブに入ったもののチケットが全く取れず僕はいつの間にかエビ中のヲタクになっていった。とはいえエビ中の特典会には何度も足を運んでいるのだが正直話した内容は殆ど憶えていない。りななんとのやり取りを思い出したくても「今日のライブ良かった」「ありがとう」位の会話しか思い出せない。アイドルなんかただの趣味、時間が合えば行くし合わなければ行かない。今にして思うとあの頃の僕はそれなりに淡白にアイドルを見ていた。

僕がエビ中に通い始めて徐々にももクロ友達との連絡が途絶えていった。しょうちゃんとも自然と距離ができた。風の噂でしょうちゃんが結婚して地方に転勤した事を知った。僕のしょうちゃんとの思い出はそこで途絶えた。

このブログは当然ukkaとクマリを僕が見た記録を1番の目的としているのだが、もう1つにはいつしか僕の人生から消えてしまった友達や今居る友達の記録も目的としている。ブログを書きながらたまにふと「しょうちゃん」達「あの頃」出会った友達の事を思い出しながら書いている。

■2016
エビ中に通い始めて4年が経った。僕はエビ中に飽き始めていた。新曲の「スーパーヒーロー」も「まっすぐ」も余り良いとは思えなかった。豪雨の中参加したファミえんで引いた席は最後列だった。空いてるから良いかな、と思ったけれど周りの様子がおかしい。後で友達に聞くとそこは「出禁食らったヲタが集められたスペース」だったらしい(事実かどうかは知らないが)。周りの若いヲタクたちがモッシュをしながら騒ぎ始めた。僕はイライラした。「あ、もうエビ中のヲタ辞めよう」。決心した。

イライラしながらステージを待っているとエビ中の妹分として結成された桜エビ〜ずの桜井美里というメンバーが出てきてインタビューを始めた。桜エビ〜ずに全く興味の無い僕のイライラは増幅した。僕は桜井美里から目を背けて友達と話し込んだ。だからこの日の桜井美里の事は全く記憶に無い。

■別れ
ファミえんから暫く経った2016年の秋頃(だったと思う)、エビ中がNegiccoと初めての対バンが発表された。そして2017/2月にエビ中初めての海外、台湾でのライブが発表された。僕はNegiccoにも暫く通っていた。エビ中とNegiccoの対バン、初めての海外遠征。僕の長いドルヲタとして最後の現場になるには丁度良かった。よし、Negicco対バンと台湾を最後にエビ中、そしてアイドルヲタクを終えよう。

Negiccoとの対バンが終わり台湾まであと2週間に控えた2017/1月下旬。新宿、福家書店でのエビ中の特典会に参加した。もうこれでエビ中との特典会も最後のつもりだった。エビ中メンバーに「台湾行くよ」と伝えた。列の最後はりななんだった。台湾に行く事を伝えるとりななんはビックリして一瞬後ずさりして
「え、ほんと?」
「うん」
「え、凄い楽しみだからほんとに嬉しい。絶対行こうね!約束だよ!」

今にも泣き出しちゃうんじゃないか、と言うくらい喜んでくれた。
何度もりななんの特典会に参加したけれど殆どはよくあるやり取りだった僕にはりななんのオーバーリアクションにちょっとビックリしてしまった。勢いで取ったエビ中台湾だったがりななんを見て一気に楽しみになってきた。そしてそれが僕にとって最後のエビ中になる事が若干申し訳なく思えてきた。

しかし、エビ中台湾が行われる事は無かった。

■再びアリオ橋本
アリオ橋本では僕は座席4列目に座っていた。初めてのエビ中のラクーアでも僕は4列目だった。マナちゃんを見ていたらちょっとだけりななんの事を思い出した。マナちゃんも初めて見た時は「なんかでかい子」と思った。もっともマナちゃんは163cmなので特に大きい訳では無いのだが。

「極LOVE浄土」が始まるとすぐに音が「ぎゅぃぃぃぃん」とテープが伸びた様な変な音に変わってしまった。どうやら暑さのせいで機械がおかしくなってしまったらしい。さおてゃんがすぐに「じゃあ暫くトークにしよう」と切り替えてメンバートークになった。

ステージでの後ろでは運営のサナダさんが一生懸命機材を扇いでいる。5分待ったか待たないか位で再びライブが始まった。

大した事無いけれど僕はこういうトラブルが大好きだ。いやメンバーや運営からしたらたまったもんじゃ無いのだろうがヲタクからするとこういう瞬間が1番記憶に残る。僕はこの日見たアリオ橋本の光景はいつまでも忘れないだろう。エビ中のラクーア前と同じように。

気付くとクマリデパートに通い始めて5ヶ月が経っていた。ごうださんがマナちゃんがオンライン特典会の時に新規のヲタに告げた一言をやたら感心していた。
「初めてが1つずつ無くなってくね」
僕はそのシーンを見ていないので言葉は正確では無いかもしれないけど素敵な言い回しだな、と思った。

気付くと僕の「初めて」もどんどん無くなった。
初めての特典会
初めてのワンマン
初めての最前
初めての遠征
初めての新曲…

もう僕がクマリでやってない事と言えば出禁位しか残っていない。

アリオ橋本の特典会は20時近くまで続いた。終わったメンバーが挨拶をしてヲタクの拍手を先導して「ぱんぱぱん」と締めさせる。最後に終わったさおてゃんを見送って「ケン%」のリリイベ最終日は無事に終わった。

橋本駅まで向かう道中空がゴロゴロとなり始めた。
「これまた雨降るな…」
僕は電車に乗っていたのだがSNSではゲリラ豪雨による阿鼻叫喚の書き込みが流れてきた。

クマリはやっぱり持っている。
■再会
2021/7/16。
りななんの誕生日になった。

前日にエビ中公式から半年近く病気で休んでいた安本さんが復帰した映像「THE FIRST TAKE」が22時に発表される事が伝えられた。

何となく僕は1人で見る気になれず「行きつけ」の店に行った。顔見知りが何人か居て和気あいあいと話していた。その時、店の扉が空き1人の男が入ってきて僕の隣に座った。

「俺、君の事知ってる」
僕は一瞬ポカーンとなった。
僕はあまり人の顔を憶えるのが得意では無い。アイドルってどうしてあんなにヲタクを憶えられるんだろう?
僕は男の顔を見て必死で記憶を探った。

「あ、しょうちゃん!」

そこに居たのはもう8年か9年ぶりのしょうちゃんだった。話を聞くと彼には彼なりの色々があったらしい。四方山話に花を咲かせた。

22時になった。「あ、エビ中始まる!」「え、なんかエビ中あるの?」「今日病気療養中だった安本さんが復帰したんだよ」「へー」。
9年前に僕に「仮契約の特典会チケットを譲ろうとしていた」しょうちゃんに今は僕がエビ中を教えていた。

「りななん幾つになったの?」
「23歳だよ」

FIRST TAKEの「なないろ」を聴きながら僕は天国のりななんにおめでとうと祝った。
おしまい

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