
「仕事もので月一の連載の話がきている」
と、担当編集から話を聞いたのは今からおそらく2年近く前のことで、
それからほどなくして、プレジデントネクストという雑誌の創刊とともに
『ダムの日』の連載は始まりました。

(↑最新14話が掲載されているプレジデントネクストがこちら)
それから1年半の連載期間を経て、
先日、
最終回(第15話)を入稿して、僕にとって初めての、月刊連載マンガは終わりました。
(掲載は5/14発売号です)
モーニングに掲載された『ケシゴムライフ』も5週連続掲載だったのですが、
もうすでに原稿が4話まで完成している状態での、連載開始だったので、
締め切りが迫ってきているのに、何を描くか思いついていない、みたいな状態は起こりませんでした。
でも『ダムの日』は違います。
毎回毎回、どんなエピソードを描くかぼんやりとしか思いつかずに時間が迫り、
気持ちがどんどん焦るという経験をしました。
このままただの真っ白の紙を、 世の中に送り出してしまうんじゃないかという恐怖心が、天使の輪っかみたいに頭の上に浮かんでいました。
こんな気持ちと常に向き合いながら、すべてのマンガ家は、よりタイトでハードな週刊連載をこなしているんだ、ということを初めて実感できたことは、
『ダムの日』を通して得た大きな経験だと思っています。
これは何となく分かったことなのですが、
好きなだけ時間をかけていいよ、という状態で絵を描いているよりも、
差し迫った状況の中でシャキシャキ描いていく、という方が、
絵にキレみたいなものが生まれ、上達は早くなる気がします。
僕もダムの1話と最後では、絵がずいぶん違うのが自分でも分かって
間違いなく今の方が、絵を描く事が楽しくなってきた気がします。
そして何より
『ダムの日』を描いてよかったなと思うのは、
土木屋の人たちに出会えたことです。
マンガのリアリティーを支えるために、本当にたくさんの土木屋の人たちが『ダムの日』に協力をしてくれました。
サラリーマン経験のない僕にとって、
50代60代の人たちの「仕事への思い」を直接聞いたり、一緒にお酒を酌み交わせたりしたことは、
本当に貴重な経験になりました。
マンガと土木で業種は違いますが、自分にとっての「生き様の上司」といえるような人たちは
こうしたテーマを扱わなければ出会えなかったなと思います。
まだまだその「出会い」を
マンガの中に落とし込む技術が足りていないなと感じているので、
それはまた次のマンガへと課題を受け継いでいきたいと思っています。
羽賀翔一