俺は夢を見た。

ーーーーー

車が行き交うなか、その歩道を一人で歩いていた。

ふと、前をみると…そこには踞った一人のお婆さんが。

その人は踞ったまま、立ち上がろうとしない。

俺は気になって声をかけた…

「あの…大丈夫ですか?」

その声に振り向いたお婆さんはこう言った。


「歩道橋を登りたいんだが、足を挫いてしまってね…」と。


「それは、病院に行った方が良いんじゃないですか?タクシー止めましょうか」

歩くよりは病院に…そう思った。

「あぁ…でも行かないといけないんだよ…」

病院よりも優先するものがあるという。

「なら、俺おぶって向こうまで行きますよ。そしたら、向こうで考えましょ」

だから、そう提案した。その言葉に、

「そうかい?悪いね…甘えても良いかい?」

お婆さんは少し嬉しそうに…でも申し訳なさそうに口にした。

「もちろんです。なら…どうぞ」

俺は背中を向け、お婆さんを誘導した。

「乗りましたね?じゃあ行きますよ」


そう言ったが、最初に見えていた場所よりも遠くに見える歩道橋…

更には…見た目よりズシリと重いお婆さん…

こんなに小さく見えるのに…

なんでこんなに重いんだ?


「重いかい?」


数歩、歩いた俺にそう尋ねる。

「大丈夫です」

その重さは、歩く度に増す。

なんで?

不思議だが、落とすわけには行かない。

手が段々と痺れ、そろそろ限界か?

そう思ったとき…


「僕が今度はおんぶしてあげる」


突然現れた、まお。なんで?どこから?

「お前…どこから…」

それに答えることなく、

「はい、交代!」

そう言って、受け取り

あの細い体でお婆さんを背負い始めた。

「まお、お前には無理だよ」

否定をした訳じゃなく、

まおの体が心配でそう言った。


「大ちゃん、それはやってみないとわかんないじゃん!おばあちゃん、ごめんね…どうしてもだめだったらまた、変わってもらうから…でも、僕だって男だよ!やる時はやるんだ!だからね…よいしょっ!」

よいしょと気合いを入れ、まおはお婆さんを背負った。


「重いだろ?」


同じように口にするお婆さん。

「重いけど、大丈夫!あ、ごめんね…女性に重いって言っちゃダメだね」

俺はほぼ会話出来る余裕はなかった…

ただ、早く渡らないと…そう思ったから。

でも、まおは違った…

その時間すらも、そのお婆さんと向き合っていた。

「あんたは、優しい子だね…。人は『疑い』『不安』になり『憎しみ』を持つ生き物だ。それを腹の底に渦巻かせ…」

確かに、悪いことを一つ思ってしまえば、坂を転がるように渦を巻く。

「でもそれって普通じゃない?

それでも、人は歩くんだよ

それでも人は思いやれる

そうやって苦しんでる人を慰めたり

反対に苦しんでる時に慰めてもらったり

だからね、重いおばあちゃんだって

交代しながらおんぶしてあげる」

そう、まおは答えた。

お前はそう言うやつだな…

すると、

色んなピンクのハートを型どった紙吹雪を背中から飛ばし始めたお婆さん。


『ああ、まだ捨てたもんじゃないね…』


と、一言置いて

姿を消した。

空に舞う紙吹雪が、まるで桜の花びらのように…

ーーーーー

そこで目が覚めた俺。

この夢に何か意味があるのか?


一人では背負えないもの。

でも、手を伸ばしてくれる人もいる。

そして、それが当たり前のことだと…

今は苦しみの時かもしれない…

でも、それはみんなも同じ。

それを支えられるか…

そして、支えてもらえるか…

それが実を結べば…乗り越えられる。

お婆さんは、俺たちを試している神だったのかも知れない…

でも、まおの言葉で重圧を花びらに変えた…


『ああ、まだ捨てたもんじゃないね…』


そう、明日への希望を口にして…。



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